【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第32回

金町『オカモトモノガタリ』多種多彩な煮干し使いで、煮干しが苦手な人も絶賛の一杯!

2024年11月29日 12時00分更新

 東京・金町で話題の新店『オカモトモノガタリ』店主の岡本優斗さんは、井荻の人気店『麺壁九年』出身。大工、お笑い芸人…と渡り歩いてたどり着いたのがラーメンの道。看板に自身の名を刻み、2023年3月18日にオープンした。店主が生まれ育った金町で、これまでの人生の物語が詰まったラーメンを紡ぐ。

大工、お笑い芸人…紆余曲折を経て、地元金町でラーメン店開業

 岡本優斗さんは、高校卒業後、大工の見習いとして仕事の第一歩を踏み出した。父が大工、母方の先祖も宮大工という家系で自然な流れで大工になった。しかし、20歳の時に大工を辞め、子供の頃からの夢だったお笑い芸人の道へ進む。「お笑いではまったく稼げないので、その時にアルバイトしていたのがラーメン店だったんです」と岡本さん。

 23歳で結婚し、アルバイトもしながらお笑いをがんばってきたが、お笑いの道を諦めて27歳でラーメンチェーン店に入社。そこで2年ほど勤めた頃、身体を壊して仕事を辞め、しばらく家で養生することになってしまった。路頭に迷っていた時、以前アルバイトしていたラーメン店の先輩が、店をオープンするから手伝ってほしいと誘ってくれた。それが『麺壁九年』だ。

『オカモトモノガタリ』店主の岡本優斗さん。笑顔の接客で店はあたたかい雰囲気

 『麺壁九年』では、オープニングスタッフから始まり、2号店の『麟子鳳雛』と店を支えてきた岡本さん。今まではアルバイトやチェーン店での業務的な仕事だったが、ここでは能動的に接客を楽しむという意識が芽生えた。そして、3年の修業期間を経て独立しようと決意。「自分が自分らしくいるために独立しただけなんで、そんなにかっこいいものでもないんですよ」と照れくさそうに語った。2023年3月18日、岡本さんの地元、金町に『オカモトモノガタリ』を立ち上げた。偶然にも店は、以前祖父がおでん屋を営んでいた場所のすぐ近くだった。

店は、金町駅南口から徒歩5分。ラーメン店が並ぶ水戸街道沿い

 『オカモトモノガタリ』という、すごく変わった店名は、「店を立ち上げるまで、大工やって、お笑いやって、お笑い辞めて、いろいろな紆余曲折があって、自分に合った店舗が地元で見つかった。そんなことを独立の相談がてらラーメン屋の友人に話したら、『岡本の物語やなあ』と言われて、じゃあそのまま店名でいいねって決めたんです」と、その由来を教えてくれた。

カウンター6席。元大工の経験を活かし、地元の友人たちの力を借りて改装した店内

多種多彩な煮干しの旨味あふれるいりこそばvs鴨鶏魚の醤油際立つらぁ麺

 ラーメンは、修業を積んだ『麺壁九年』の作り方をベースに、岡本さん自身のエッセンスを加えた「いりこそば」と「醤油らぁ麺」を二枚看板に構成。「いりこそば」の要のスープに使う煮干しは、6〜8種類をそのときによって変えて炊く。ちょうどこれから仕込みをするということで、煮干しの一部を間近に見ることができた。

「いりこそば」に使う煮干しの一部。いりこだけでなくマイワシ、サバなどバランスよくブレンド

アジの煮干しはたっぷり投入

 美味しさが伝わってくる素材を前に、岡本さんから想定外の言葉が。「実は僕、煮干しラーメン苦手なんですよ。『麺壁九年』にいた時にも”いりこそば”という煮干しラーメンがあって、それを食べて美味しいと思ったのがきっかけ。僕も”いりこそば”をやろうと思って、いろんな煮干しラーメン店に食べにいって研究して、煮干しに苦手意識ある人にも食べやすいようにやさしめに炊いてます」。なんとも気になる話に、早速、いりこそばをお願いした。

多種の煮干しをブレンドしたスープを温め始めると、よい香りが漂う

 スープ、タレ、香油、麺、具と、手際よく完成した一杯がこちら。スープを一口いただくと、様々な煮干しの旨味があふれる。雑味なく、確かに煮干しが苦手でも食べやすい仕上がり。かと言って物足りないわけでもなく、上手に多種の煮干しの旨味が活きた味わい深いスープだ。これは煮干しが苦手な人だけでなく、煮干し好きな筆者も美味しい!

「味玉いりこそば」1150円。具は真っ赤卵の味玉、大判チャーシュー、穂先メンマ、刻みネギ、カイワレ

 券売機を見ると二枚看板のもうひとつ、醤油らぁ麺のほうが上にある。「どっちがおすすめ?って聞かれることがあるんですけど、どっちもおすすめです。単純に醤油らぁ麺を食べる人のほうが多いのと、煮干し専門店というほどでもないから。もちろん、醤油もいりこも自信をもって作ってますし、同じ熱量で作ってます」。リピーターはいりこそば、初訪では醤油らぁ麺が多いようだが、これも好みによりそうだ。

「特製醤油らぁ麺」1300円。味玉、ワンタン、チャーシューも追加されてボリューム満点

 いりこそばは煮干しオンリーだが、醤油らぁ麺は鴨ガラ、丸鶏など動物系出汁の旨味をプラス。味の決め手の醤油ダレは、「醤油が立つようにいろんな醤油を配合してます」と、岡本さんが一から配合し、修業先とは違ったオリジナリティある味に仕上げている。

菅野製麺所のやや平たい細麺は、しなやかでスープによく絡む

平打ちの太手もみ麵は、茹でる前にしっかり押しつぶし揉んで縮れを作る

 スープに合わせる麺は、修業先と同じ菅野製麺所。「菅野さんの麺が美味しいんですよ。『麺壁九年』の2号店『麟子鳳雛』で手もみ麺の味噌ラーメンを出していて、その頃から手もみ麺もいいなと思っていました。ここをオープンするとき細麺だけでいく予定だったのが、試しに手もみのいりこそばを試作で作ったら美味しかったんです」。煮干系には硬めパツン系の細麺が定番だが、手もみ麺を合わせて岡本さんならではの個性を出している。2種のラーメンそれぞれ細麺・手もみ麺が選べるので、その日の気分で変えてみてもいい。

どんどん増えて和え玉10種類!? 地元に根付いた安心できる店を目指して

 和え玉には、専用の細麺を使う。ラーメン用の細麺、手もみ麺と合わせて、常時3種類の麺を常備。ラーメンで手もみ麺を選んだら、和え玉は細麺と、2種類の麺が味わえる。

「烏賊和え玉」250円

 通常の和え玉(鶏油・煮干し)200円もあるが、烏賊和え玉には、烏賊煮干しの香油がたっぷり絡む。ちらっと香油を見せていただくと…

烏賊煮干しの旨味たっぷりの油が絡んだ和え玉は、ラーメンに必須

 なんと烏賊がたっぷり! 烏賊煮干しの風味をそのまま替え玉で味わってもよし。ラーメンのスープに浸せば、スープの出汁とのハーモニーが楽しめる。他にも山椒和え玉、トマにぼ和え玉など、計5種類の和え玉がラインナップ。最初は、鶏油と煮干しの和え玉しかなかったが、限定で山椒のラーメンと和え玉をやり、烏賊をやり、和え玉も限定だけのつもりがレギュラーに。「美味しいねって気に入ってくれる人がいて、なくなったら残念な顔するかなって、その人の顔が思い浮かんだらやめられない。最近は、自分でも面白くなってきて、和え玉をもっと増やして10種類くらいいけたらいいなと思っています」。食べる人の笑顔のためのメニュー作りに思わずほっこり。今後、どんな和え玉が登場するのか楽しみだ。

「山椒和え玉」250円。青山椒の爽やかな風味で、スープがより美味しく味変!

 生まれも育ちも金町ということもあり、開業にあたって携わってくれた地元の人がたくさんいるという。「壁やカウンターの木目は内装屋の友達が貼ってくれて、外のテントも元のラーメン店の看板そのままだったのを解体屋の友達が撤去してくれて、付け直すのも看板屋の友達と3人くらいで作業してたら、たまたま通りがかった地元の後輩が手伝ってくれたり。電気屋の後輩が電気と配線をやってくれたり、最初ボロボロだった店を、業者を入れずに全部友達と一緒に作りました」。

 さらに、金町で2023年にオープンしたラーメン店の店主たちとの交流もある。隣の『麺屋 神工』、駅反対側の『ramen club トトノエ』、『つけ麺一滴』と、4店が同じ学年の隣のクラスみたいな感覚で仲がいいという。

 そして、岡本さんが目指すのは、「近所の子供連れファミリーからご夫婦、カップル、おじいちゃんおばあちゃんまで、安心して来てもらえるような地元に根差した店。自分が子供の頃に通っていた町中華のような安心感があって、気持ちよく食べて気持ちよく帰ってもらえたら嬉しいです」。次々と出てくるエピソードのすべてが、オカモトモノガタリなのだ。地元とラーメン仲間との繋がりを大事に、ラーメンに真摯に向き合う岡本さんが作るラーメンは、また食べたいなと、心の片隅に残る味だ。

岡本店主のラーメンモノガタリは、少しずつ旨味を重ねながらまだまだ続く

オカモトモノガタリ

東京都葛飾区金町5丁目24-16
昼11:00〜14:30 夜18:00〜20:30
不定休

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式X(https://x.com/okamoto_monogat)をご確認ください。

大熊美智代 Michiyo Okuma

ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。

本人X @kuma_48_kuma

Instagram @kuma_48anna

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