【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第33回
巣鴨『ラーメンいいかお』が亀有移転で食材一新、もっと美味しいラーメンで新天地も“いいかお”に!
2024年12月17日、『ラーメン いいかお』が巣鴨から亀有に移転した。店主の早川文雄さんは、博多豚骨ラーメンの一大チェーン店『一風堂』出身で、10年前に惜しまれつつ閉店した秋葉原『福の神食堂』創設メンバーのひとり。新天地は地元だという早川店主が、潔い真っ白な店内で丹精込めて作りあげるラーメン。その丼顔には新たなラーメンへの想いがあふれていた。
『一風堂』から始まったラーメン人生が巣鴨から亀有へと繋ぐ
早川文雄さんは、学校を卒業してから様々な職に就きながら、子供の頃からラーメン屋になりたいという想いを心に秘めていた。ラーメン人生の第一歩は『一風堂』だ。32歳の時に『一風堂』の上野店で3年ほど経験を積み、その後『つけめんTETSU』に移り1年ほど経った頃に転機が訪れた。
「『一風堂』の店長だった辻さんから、独立するから一緒にやらないかって声かけてもらったんです。それで、もう一人一緒に働いていた斉藤さんと3人で『福の神食堂』を始めました。それが2011年2月、東日本大震災の年です」と早川さん。
震災後は外食を控える人も多く、2011年オープンの『福の神食堂』も苦境を強いられていた。「正直、お客さんが全然来なくて、本当に大変でした。そこを何とか生き延びた感じです」。『福の神食堂』が4年7カ月で閉業した後、早川さんは独立に向けて動き出す。タクシー運転手で資金を貯め続けて4年、再び転機が訪れた。『一風堂』で一緒に働いていた『昭和歌謡ショー』の杉山店主から、「地元の栃木に帰るから店の跡地でやる?って話をもらって。杉山さん、私が店を出したいって知ってたんですよね。ありがたかったです」。それが2020年6月13日、『ラーメンいいかお』はコロナ真っ只中、巣鴨の庚申塚で独立開業。またしても逆境の時代に早川さんは立ち向かっていった。
福の神時代からのお客様をはじめ多くの方で店は賑わったが、独立して初めてのレシピ作りに苦労したという。「調理はできるんですが、0から1を作ることに毎日頭を抱えてました。自分はラーメンわかってないなと思いましたね」。味を見直しながら、バランス系のまろやかな味わいのラーメンが徐々に出来上がっていったという。
そんな巣鴨での4年3カ月を経て、地元の葛飾区に移転を決意した。2024年12月17日、移転リニューアルした『ラーメンいいかお』がこちらだ。
席数5席の手狭な店舗から、そろそろ大きなところに移ろうと探していたところ、ちょうど地元で見つかった。駐輪場だった場所に新しく建った店舗は、「すべて0からという機会はそうそうないので、自分たちが使いやすく作りやすいように地元の業者さんにお願いして作ってもらいました」。以前よりも広く席数も増え、カフェのような明るい雰囲気でとても居心地がいい店になった。
食材を見直し、さらに美味しくブラッシュアップしたラーメン
亀有移転後、ラーメンにも変化が。「食材はすべて変えてます。煮干系は大きくは変わってないんですけど、ベースの動物系を名古屋コーチンと岡崎おうはんに変えました。岡崎もそうですが、白醤油も八丁味噌も全部愛知なんですよ。自分の力というより、どれもいろんな人との繋がりのおかげで仕入れることができて、本当にありかたいです」。
謙虚な言葉とは裏腹に、早川店主の確かな手元からスープ、麺、チャーシューなど次々と盛り付けられ、完成したラーメンの丼顔はこちら。
なんて、いいかお! まずはレンゲでスープを一口。名古屋コーチンと岡崎おうはんなど動物系スープをメインに、煮干し・節系数種と羅日昆布などの煮干し系スープを少々、愛媛県・梶田商店の醤油など数種の醤油を使ったカエシを合わせたスープは、すべてがバランスよくまとまって穏やかな美味しさ。
一方、人気を二分する「にぼし白醤油ラーメン」はこちら。
スープは醤油と同様に、動物系スープと煮干し系スープを使うが対比が違う。ほぼ煮干系スープに動物系をほんの少し加え、愛知県の七福醸造の白醤油を使ったカエシを合わせて、より煮干の風味が際立つ仕上がり。醤油、白醤油のどちらも無化調ながら旨味あふれるスープだ。
そのこだわりが詰まったスープに合わせる麺は、菅野製麺所のストレート中細麺。
「食材から一新したスープとすごく相性のいい麺です」。そう言いながら、麺を丼の中でスープにくぐらせる早川さんの手元を見ると、引き上げる度に麺がスープ色に染まっていく。提供されたラーメンは、醤油も白醬油も、麺を啜ると美味しいスープをまとって麺自体の美味しさもパワーアップ!
みんなが“いいかお”になる、もっと美味しいラーメンを目指して
味噌󠄀ラーメンも醤油と白醤油共通の動物系・煮干系2種のスープに同じ麺を使うのだが、対比とカエシが変わるとガラリと変わる。毎朝仕込む八丁味噌ダレの甘みがスープにとけ、麺に染み込んで濃厚な味噌󠄀色に。「全部のスープにのる麺で、美味しいスープを持ち上げてくれる、美味しい麺です」。
こだわりはスープや麺だけではない。「5ツ星お米マイスター市川さんのお米が美味しいのはもともと知っていて、ただ巣鴨に持ってきてもらうのは申し訳ないなと。近くに移転したので、仲の良い北千住の『らぁ麺屋のさかいさん』に紹介してもらってお願いしました」。味噌󠄀ラーメンのお供に頂いた先ほどのごはん。チャーシュー、味玉、スープとも相性抜群だ。
もう一品、券売機にラーメン店には珍しいサイドメニュー「海ぶどう」がある。
「素材自体がすごいんです! ぜひ食べてみてください。そのまま食べてもいいですし、海ぶどうを入れてもラーメン自体のバランスが崩れないんですよ」と伺って、早速頂いた。
温度が上がるとしぼんでしまうかと思いきや、なんとラーメンに入れても大丈夫。プチプチとした食感が残ったまま、温かいスープともよく合う。海ぶどうの温度管理は15~25℃くらいで、発泡スチロール箱に入れて常温で沖縄から発送されるという。とても新鮮な状態で届くからこそ、こんなに美味しいわけだ。
実は、この海ぶどうの養殖生産者・東さんは、サポートスタッフ成田さんの紹介。成田さんは亀有出身で、店舗施工の工務店も地元の同級生にお願いしたそう。
そもそも二人の出会いは早川さんが大学生時代、アルバイトしていたプールに、小学6年生の成田さんが遊びに来ていた頃から。その後も成田さんが高校生になると同じプールでアルバイトをしたり、30年以上の付き合いだ。早川さんが巣鴨で独立後、店を訪れた成田さんは、「早川さんの白醬油ラーメンを食べて、このラーメンを広めたい! 一緒にやらせてくださいと伝えたんです」。
早川さんのラーメンに惚れ込んだ成田さんの他にも、常連のデザイナーさんがお店のロゴを作ってくれたり、多くの人に支えられてきた。「本当にありがたい。感謝しかないです」。
多くを語らない早川さんだが、ご年配の方のチャーシュー、メンマを細かく切って食べやすくしたり、ベビーカーでも入りやすい店作りなどお客様への細やかな気遣い1つ1つから、語らずとも伝わってくる。
「材料のポテンシャルを僕が引き出せてないだけで、まだまだ美味しいものを作れると思います」。そう言いながら、配合を変え、やり方を変え、日々のブラッシュアップに余念がない。
店名には「ラーメンの丼顔をいいかおに、そしてお客さん、従業員、業者さん、携わった皆さんがいいかおになりますように」という想いが込められている。早川さんの想いは、ラーメンを食べるお客さんの“いいかお”にしっかりと表れていた。
ラーメンいいかお
東京都葛飾区亀有3-27-4
火~土11:00~15:00、18:00~21:00
日祝11:00~15:00
月曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://x.com/rameniikao)をご確認ください。
大熊美智代 Michiyo Okuma
ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。
本人X @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna
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