食べやすくも満足感のある一杯 22時までの営業もうれしい期待の新店 中華そば おや麺(東京・立飛)【ZATSUのオスス麺 in 武蔵野・多摩】第114回

2023年01月30日 12時00分更新

 今回のオスス麺は、前回のコラムでも軽く紹介した立川市の新店「中華そば おや麺」を詳しく掘り下げて紹介させていただきます。

 多摩都市モノレールの立飛駅から徒歩10分、JR立川駅の北口から徒歩20分ほどの芋窪街道沿いにオープンしたこのお店。決して良い立地とは言えませんが、その味を求めて足を運ぶお客さんがたくさんいます。

 ご主人の小山(おやま)さんは、高校生の頃に書店で何気なく手に取った多摩地区のラーメンを紹介している本がきっかけでラーメンの食べ歩きをするようになり、その頃から漠然とではあったものの、「いつかはラーメン屋になりたいな」と考えていて、初めてのアルバイトもラーメンチェーン店の「らあめん花月嵐」だったとの事。

立川の人気店だった「横浜家系 麺屋はやぶさ(閉店)」

 その後、豚骨スープの製法の一つとしても有名な「呼び戻し製法」に興味を持ち、機会があれば学びたいと思っていた矢先に「呼び戻し製法」でスープを作っている立川のラーメン店「麺屋はやぶさ(閉店)」のオーナーからたまたま声が掛かり、同店に就職してラーメン作りを学ぶことが出来ました。

 数年が経った後、「麺屋はやぶさ」のラーメンの味作りをした初代店長の辞職を機に、二代目店長として「麺屋はやぶさ」を任されるようになりました。

麺屋はやぶさ時代の「鶏出汁中華そば」

 レギュラーメニューだけでなく限定麺を創作するなどして、多くの常連さんに愛される人気店の店長として腕を振るってきましたが、コロナ禍の影響もあり、また店舗が入っていた施設「ヤタパラ」の閉鎖が決まっていたこともあり、残念ながら2020年11月30日に閉店してしまいました。

居酒屋の営業時間外で始めた「Sunday Dining おや麺」

提供していた一杯「しいたけ香る喜多方らーめん」

 小山さん自身も突然の事で困惑されたようですが、終わってしまった事は仕方ないと気持ちを切り替え、「立川鉄板酒場BOTA」にてカレーやラーメンの創作ランチを提供し、年が変わった2021年1月からは立川の居酒屋「餃子Diningこゝろ」に就職。元ラーメン店店長の腕を買われ、2021年3月よりダイニングの営業時間外である日曜日の昼営業のみラーメンを提供する二毛作営業という形で「Sunday Dining おや麺」がスタートしました。

 ラーメン専門ではない店舗のため、茹で麺機がない中でお湯を入れ替えながら営業することが何よりも大変で、味作りの点では仕込みのロットが少ないためブレが出やすかったなど苦労する面もあった一方で、「麺屋はやぶさ」とは違い、カウンターのみではなくテーブル席もあったので、お客様や空間を広く見られるようになったという利点もあったとの事。

 週に一度の営業でそのラーメンを食べたお客さんに「また来たい」と思って貰うのは至難の業ですが、厳しい条件下でも多数の限定麺を創作するなどして着実に常連さんがついてきました。

多摩都市モノレール「立飛」駅から徒歩10分ほどの地で独立開業した「中華そば おや麺」

 そして、1年9か月の間借り営業を経て、遂に独立店舗として「中華そば おや麺」が2022年12月12日にオープンしました。

 間借り営業時から一貫して使用している「おや麺」という屋号は、「麺屋はやぶさ」で働いている頃に「小山(おやま)」×「ラーメン」で「おやめん」という渾名をつけてもらい、それが気に入って屋号にしたとの事。

 看板メニューは、「万人に愛されつつも『普通のラーメン』と言われないよう、スープ・麺だけでなく一つ一つの具材が丼の中で調和するように役割分担をイメージし、食べやすくも満足感のある一杯を目指しています」というこだわりを持って作り上げた「鶏出汁中華そば」。

「特製鶏出汁中華そば 醤油」

 スープは大山鶏をメインに鶏を数種類合わせ、醤油ダレはヤマロク醤油の「菊醤」をメインに5種類ブレンドしたものを使用しているとの事。

 鶏と水のみで作りながらも流行りの「鶏水系」と呼ばれる清湯系とは違って軽く濁りのあるスープで、その味わいは鶏清湯とも鶏白湯とも違い、清湯のスッキリさを持たせつつも白湯のような厚みのあるコクと旨味が感じられ、そこに醤油ダレをビッと効かせる事でスープ全体の一体感がある味に仕上がっています。

 「ラーメンとしての一杯の満足感を得てもらうのに、単なる清湯ではなく、また油に頼りすぎないスープ自体の厚みがある味に仕上げた」との事。まさにその思いが具現化された味わいで、「また食べたい」と惹きつけられます。

 そのスープに合わせる麺は、菅野製麺特製の中細ストレート。

 スープに厚みがあるのでそれに負けない若干太めなものとなっていて、しっかりと茹でられてモチモチ感があり、スープと最高のマッチングを見せます。

 通常のトッピングは、肩ロースチャーシュー・メンマ・ネギ・ナルトとなっていますが、「特製」になると鶏チャーシュー・豚バラチャーシュー・つくね・味玉が追加されます。トッピング一つ一つも丁寧に作られていて、その味を存分に楽しめる「特製」がオススメ!

「特製鶏出汁中華そば 塩」

 「塩」のスープは「醤油」と同じものを使用しながらも、その味わいはガラリと表情を変えます。

 塩ダレは国内外合わせて4種類の塩と鯛煮干しなど数種類の乾物を合わせているとの事で、この塩ダレによって強い旨味を加味しながらも、円やかな「醤油」に対してシャープな味わいで、奥深いコクと旨味を感じさせながらもスッキリした後味に仕上がっています。

 このコラムを書いている時点ではまだ販売されていませんが、「おや麺」の味らしく鶏油を活かしてシンプルに仕上げたいという「まぜそば」や「つけそば」なども近々登場予定との事で、そちらも楽しみ!

 今後どんなお店にしたいかと伺うと、「地元に愛される、温かいお店を作っていきたいです。お子様からお年寄りまで幅広い層に受け入れられつつも、満足感のあるお店目指しています」と応えてくれました。

 最近は、昼営業のみや夜営業も早く閉まってしまうお店も多いですが、「おや麺」の22時までの営業は夜遅い時間にしか寄れない方には有り難く、「駅前ではないこの場所にわざわざ足を運んでくれるお客様の為にも早仕舞いのないよう営業時間はしっかり守っていき、使い勝手の良いお店だと思ってもらえれば」とお客さん目線での営業をされているのが嬉しい。

 元「ラーメンフリーク」ということもあって食べ手の視点も持ちつつ、しっかりとラーメン専門店での修業も積み、間借り営業で培った経験も合わさった小山さんの作るラーメンは、老若男女問わず「美味しい」と満足感を得られるオススメのお店です!

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/oyamen_hayabusa)をご確認ください。

ZATSU

2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。

本人ブログ(https://zatsu-ke.blog.jp/

本人Twitter @zatsu_ke

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