【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第25回
千葉県柏市『麺処 にし尾』。名店『ほん田』を敬愛する店主の手揉み中華そばでラーメン激戦区に大行列!
ラーメン激戦区・千葉県柏市に、開業するや否や行列が絶えないラーメン店『麺処 にし尾』がある。店主の西尾勝さんは、名店『麺処 ほん田』のラーメンに衝撃を受けてから、奥深いラーメンを探求し、2022年5月23日に念願の独立を果たした。オープンから1年、西尾店主の作る手揉み中華そばや昆布水のつけ麺に、連日大勢の人が押し寄せる人気ぶりだ。衝撃の味を店主なりに昇華させた一杯を味わいに、早速お店を訪れた。
『麺処 ほん田』のラーメンに衝撃を受け、千葉県柏市で独立開業
西尾勝さんは、16歳の時、地元・我孫子の『北海道らーめん ひむろ』でアルバイトを始めた。「ラーメン屋って格好よさそうだな」。最初はそんな気持ちから、なんとなくラーメン屋で働きたいと思ったという。そのうち社員になり、働き始めてから5年後には店長に昇格。ちょうど21歳になった年、オーナーから自分と同じ21歳で独立して店を開いた人がいると聞いた。それが『麺処 ほん田』だった。「すぐに店に行って、初めて中華そば専門店で食べた一杯に衝撃を受けたんです」。
ラーメン界の若き天才と呼ばれた店主の本田裕樹さんは、その時26歳。東十条の本店は知らない人はいない超有名店で、次々と店舗展開し、ほん田グループも大きくなっていた。西尾さんは、『ほん田』の1ファンとして通いながら、「僕もちゃんとラーメンを作っていきたい」と勤務先の『北海道らーめん ひむろ』で限定ラーメンを作るようになる。
それから4年、西尾さんに転機が訪れた。そろそろ独立を考えていた時、『ほん田』のアルバイト募集が目に留まった。『ひむろ』の定休日に『ほん田』でアルバイトを始めて、尊敬する本田店主の仕事を間近で見れるところまできた。「ラーメン作りに対する貪欲さやラーメンへの探求心を間近で見て、仕事中はもちろん何気ない会話でも全てが勉強になりました。僕にとっては神様みたいな人です」と、本田さんへの想いを語った。
『ほん田』で働き始めて1年、柏駅から少し離れた場所に念願の独立を果たす。看板には麺処を冠し、『麺処 にし尾』として2022年5月23日にオープンした。
「本田さんには、独立する2カ月前に『手揉み中華そばやります』って、店名も伝えました」という西尾さんに、本田店主は笑顔で応え、オープン前には応援ツイートをしてくれた。
出汁のバランスと特注麺、7種の醤油使いで、自分なりの手揉み中華そばを目指す
看板メニューは、もちろん「手揉み中華そば」。『ほん田』でもお馴染みの手揉み麺を使ったラーメンは、西尾さんが「いままで食べたなかで一番美味しいラーメン」だからだ。そのイメージで製麺所に作ってもらったのが、こちらの特注麺。
開業の1年ほど前、もち小麦を使った麺は、自家製麺で作る店はあったが、製麺所で扱っているところはなかった。「だから、もち小麦を使った麺を使いたいって、菅野製麵所の担当さんにリクエストしたんです」。ひむろ時代からお世話になっている菅野製麺所も西尾さんの熱意に応え、試行錯誤しながら何度も試作品を運んでくれたという。オープンには間に合わなかったが、その年の8月には納得のいく麺が仕上がった。
特注太麺は、よく揉んで押しつぶして、しっかりと縮れをつける。「これは、ほん田スタイルですね」。そう言いながら、ひとつひとつ丁寧に作り上げていく西尾店主は真剣そのもの。早速、渾身の一杯をいただいた。配膳の際には、エプロンの利用を聞いてくれる。そんな細やかな配慮もありがたい。
いつもならスープからいくところを、西尾さんが魂をこめて揉んだ麵を引き上げてみた。縮れがついた麺は艶々に輝き、啜るとプルプルっと不規則に跳ねながら喉を通り抜ける。モチモチとした食感のよさはもちろん、もち姫に春よ恋もブレンドしたことで、小麦のよい風味が楽しめる。
スープを一口いただくと、キレのある醤油がしっかり効いて、その美味しさに驚いた。京紅地鶏をメインに豚、煮干しなどの魚介を効かせ、そこに7種類の醤油をブレンドしたタレを合わせたスープだ。常にブラッシュアップを重ねているので、オープン時から味は少しずつ変わっている。
「最初は量を詰め込めばいいかなという考え方だったんですけど、いまは動物系の出汁と魚介出汁のブレンドの配合のバランスを意識しています。そのなかで一番違うのは醤油ですね。醤油感を出したいなと思って、途中からたまり醤油を入れるようになりました」と、西尾さん。
開業前から、ほん田出身店にも足を運び、自分が目指す味を探し続けていた。その中で、「どの店も美味しいんですけど、手揉み中華そばを出してる南浦和の『麺処 はら田』さんが、自分の目指すラーメン」と西尾さんは言う。開業してからも、さらに自分が納得できるラーメンを作るために、『はら田』に通い、模索し続けた。実は、本田店主も一緒に食べに行ったそうで、西尾さんが「僕のラーメン全然違いますね」と言うと、本田店主は「それはそれでいいんだよ」と言ってくれたそうだ。そうして、最初はまるい味わいだったスープを、いまの醤油のキレのある形にシフトし、自分なりの一杯を作り上げた。
昨年は災害支援活動に参加。ラーメンで受けた恩をラーメンで返したい
日々、さらなる美味しさを求めて作り続ける手揉み中華そばは、もちろん一番人気。2位は昆布水のつけ麺で、テレビでも紹介され人気急上昇中だ。
「昆布水つけ麺も、初めてほん田さんのところで食べた時、衝撃でしたね。当時は、千葉で昆布水つけ麺を出してるところはなかったんで、都内でしか食べられないラーメンでしたから。すぐに研究して限定から始めたんです」。いまではレギュラーで提供し、メディアやお客様の評判も上々だ。
もう一杯は、今夏話題のニボコン。ニボコンとは、煮干し昆布水冷麺の略称で、今年の猛暑に本田店主がいち早く打ち出した新しい限定冷麺だ。ネーミングセンスも素晴らしいこのニボコン、にし尾でも「本田さんにお誘いを受けて、ニボコンやります!って(笑)。他にも何店舗かで提供していますが、煮干しと昆布の出汁ベースで、あとは各店自由に作ってますね。僕もほん田で食べて、うちの材料でできるようにちょっと違うテイストにしてます」と、本田店主を中心に今年のトレンドを目指して盛り上げている。
今後、店舗展開も考えているそうだが、一番やりたいことは開業前からずっと考えていた災害支援。「昨年も神奈川の水害の時に災害支援をしていた千葉のラーメン屋さんを見て、自分も一緒にやらせていただいたんですね。以前から困っている人を助けたいっていう思いがずっとあって。今後も炊き出しや救援物資とか続けていきたいです。それが巡り巡ってラーメン屋さんになりたい人が増えたり、ラーメン業界が盛り上がればいいなと思います」。西尾さんの夢は、ひとつの店に留まらない。
「新しいラーメンも作りたいですね。休日を使った限定営業や、個人店ならではのことをやりたい。でも、まずは地固めかな。日々試行錯誤して、もっともっと固めて。ふだん周りの人に助けられてる分を、人を助けることに活かせたらと思ってます」。店前の行列は、思いのほか若い人が多い。「僕が若い時に、ほん田さんのラーメンを食べて感動してるから、若い子が食べてくれるとすごい嬉しい!」と、笑顔を見せた。一度、行列に諦めずに並んでほしい。店主の思いが詰まったラーメンを啜れば、美味しく温かい気持ちになるだろう。
麺処 にし尾
千葉県柏市東1-2-45 石戸第3ビル 1F
11:00〜15:00、18:00〜21:00
水曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/mendokoronishio)をご確認ください。
大熊美智代 Michiyo Okuma
Instagram @kuma_48anna
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