日本を代表する人気実力店主たちによるトークイベント
〜We Love Ramen〜
『ラーメンの魅力と可能性』
日本を代表するスーパーバイザーをはじめとする実力店主、ゲストの方にご来店いただき、愛してやまないラーメンの魅力と可能性について語っていただきます。
トップランナーとして走り続ける店主ならではの味作りの秘訣や美学などファン必聴の内容が盛り沢山。ぜひご期待ください!
Vol.4 2021/11/14
出演(順不同)
田邉庸介店主(麺屋ようすけ)、蓮沼司店主(我武者羅)、黒木直人大将(饗くろ㐂)、早坂雅晶店主(五福星)
「麺屋ようすけ」田邉庸介店主:以下田邉店主
栃木県佐野市の佐野ラーメン「麺屋ようすけ」の田邉と申します。
佐野ラーメンの特徴はですね、あっさりとしたスープに水分が一杯入ったもちもちとした麺が特徴となっております。
毎日でも食べられる優しいラーメンになっておりますので、是非足を運んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。
「我武者羅」蓮沼司店主:以下蓮沼店主
東京の渋谷で新潟のご当地ラーメンを展開しております「我武者羅」の蓮沼です。よろしくお願いします。
今は東京で自分の故郷である新潟のラーメンを広めているんですが、新しい文化として「ラーチャン」という、ラーメンとチャーハンをセットで食べていただく文化をこれからどんどん広めて行こうと思いますので、機会ありましたらお店の方に足を運んでください。お願いします。
「饗くろ㐂」黒木直人大将:以下黒木大将
秋葉原で「饗 くろ㐂」と言うラーメン屋をやっております黒木です。
ウチは普通のラーメンと週変わりで日本全国の季節の食材を使ったラーメンを提供しています。
毎週色々考えて、お客さんが楽しめるような一杯を作っていますので、もしよかったら来てください。よろしくお願いします。
「五福星(ウーフーシン)」早坂雅晶店主:以下早坂店主
仙台の五福星(ウーフーシン)というラーメン屋をやっております早坂と申します。どうぞよろしくお願いします。
地方の特徴的なラーメンをやっているわけではなく、ラーメンを国民食ととらえ、どんな人が来ても食べやすいものをどう作れるかなということを考えて作っています。
流行りものを作るのではなく、どちらかというと昭和のラーメン屋っぽい、そんな感じで仙台で営業しています。
機会がございましたら是非お立ち寄りくださいませ。
田邉店主
私は地元が埼玉県の熊谷というところでして、熊谷でご当地ラーメンというのはないんですけども、小学校から慣れ親しんだラーメン屋さん(「よか楼 熊谷星川店」(当時))がありまして、小さい頃からラーメンに触れていました。
前職がゴルフのティーチングプロだったもので、その先生としてやってる間にお客さんとして佐野ラーメンの「田村屋」さんのオーナーがいらっしゃって、歳が近いこともあって色々話していく中で独立することになったんです。
ゴルフで色々な地方に行くんですけども、ラーメンは国民食と言われているように食べやすく、いろんな地域で愛されるラーメンがあるということを知りました。
その中で、佐野ラーメンという地元の愛されたラーメンがあることを知り、そこからどっぷりハマりました。
ずっと続けられる、愛されるラーメンを目指して、やって行こうと決心して開業しました。
蓮沼店主
元々フレンチのコックになりたくて新潟の調理師学校を出て東京に出てきたんですけども、ホテルで修業して、レストランを経験して、フランスにも行かせてもらっていました。
ただ、自分で経営者になる、お店を持つ、と考えた時にフレンチでは苦しい時代で、お店をやるんだったらフレンチではないなと思いながら、やっぱり日本人が大好きなもの、ということでラーメンを選びました。
ラーメンって決まりがないので、自分のお店で「これが僕のラーメンだ」と言ったらそれがラーメンになるわけで、すごい可能性を感じました。
ラーメンには故郷の新潟での小さい頃からのイメージがあって、「オレ150円、お前いくら持ってる?200円?300円」と友達とお金を出しあって大盛り一杯を頼んで、ご飯片手に頭ぶつけ合いながら食べてましたね。
そう言う学生時代のイメージもあって、だったら自分の故郷のラーメンをやろう!というところから始めた感じですね。
「黒木さんは大手の外食チェーンの料理長として活躍されていましたが、ラーメンへ進まれたきっかけは?」
黒木大将
元々ラーメンにはそれほど興味なくて、お腹を一杯にするためにガツガツ食う感じだったんですけど、湯島(当時)の「大喜」さんでラーメンを食べたら凄い感動しちゃって。
僕の中のラーメンのイメージとは違うものが出てきて、カルチャーショック、文化の違いってこれなんだと。
その日の夜、カミさんに「オレ、ラーメン屋になる」って言って、その次の日に会社の社長に「すみません、辞めます」て言って、1年がかりで辞めてラーメン屋になりました。
『饗 くろ㐂』黒木対象が目指すシンプルなラーメンと今、考えられている「脱東京」とは?
「どこに驚かれたのですか?」
黒木大将
特製とりそばを食べたんです。今でも覚えてるけど白髪ネギがいっぱいと、春菊の小口切りが入っているんです。
ラーメンに春菊が入っていることに「何なんだこれは!」と。
ラーメンを食べ進めて行くうちに鶏のそぼろがあって、鶏感が増したところに春菊がサクッとスープを切って、また食べたくなる。
その時初めてラーメンを「一杯の料理」なんだなと感じて、ラーメンってこういう表現の仕方もあるんだと思って凄い惚れてしまって。即決。
「奥様は反対されませんでした?」
黒木大将
超反対です(笑)
当時「なんでラーメン屋なの?」と言う意識もあって、お客様からもそれがあって、それが悔しくて。
「『大喜』さん行ってみろよ!ラーメンってこんな凄いんだよ!」という気持ちが僕の中にあって、それを表現しようと思って今がある感じです。
「早坂さんがはじめられたきっかけは?」
早坂店主
若い時、ラーメンが好きで食べ歩いているとかはなくて、ラーメンに対する意識はそれほどなかったんですよ。
元々、洋食屋さんで働いていて、最初の頃はアヒルと言われる洗い場でじゃぶじゃぶやっていて、今みたいに食器洗浄機なんてないから、「アヒル、アヒル」と言われて大変でしたね。
そんな中、ラーメン屋さんでは丼しか洗ってないんですよ、これ凄いなと思って(笑)
洋食屋さんを始めようと思うとお皿もいっぱい必要で、ライスボールからコーヒーソーサーなども必要で。
それを考えると大体同じくらいのランチの価格帯で、丼と釜2つあれば「オレでもラーメン店として独立できるじゃないか?」という感覚でこの業界に入りました。
やりはじめたらラーメンは奥が深くて、どっぷりハマって30年ほど過ぎてしまいました(笑)
『五福星』早坂店主がラーメンとの出会いと、国民食としてのラーメンへの思い。
「ご当地ラーメンの多様性についてはいかがでしょうか?」
早坂店主
ラーメンはルールとか概念が自由ですよね。
突然ラーメンからスープがなくなっても、麺と分けてつけ麺になっても全部ひっくるめて「ラーメン」と言える。
例えばこれがお寿司だったり、違う外食産業でこういう風に概念なく何でもその分野に集められるか?というとそんなことは無くて。
ラーメンの良さって色々変わりながら横に広がっていく。
「これが正解」というルールがないので、若い子たちが新規参入してきて売れればそれは一つの正解だし、地方ではずっとそれだけを延々作り続ける文化もある。
地方に行けば行くほど概念の強いラーメンになるし、都会に来れば何でもラーメンになる。
それをお客さんが楽しんで答えを見つけてもらえるという、自分の好きなところが正解って言える。
これがラーメンの面白さじゃないかと思います。
「蓮沼さんは新潟のラーメンを東京で出されていますがいかがですか?」
蓮沼店主
僕は17歳ぐらいで東京に出てきて、もうこっちの方が長くなってしまっています。
新潟にお店があるわけではないので、小さい頃からのイメージや、新潟に通って自分なりに新潟のラーメンを勉強しながら東京でやっています。
地元の方にとっては「これぞ俺のラーメン」とイメージが決まっていることがあって、そこからちょっと形が変わったりすると嫌がられることもあって。
ただ、地方のオリジナルをそのまま再現するのは嫌なので、根っこの部分だけはしっかり守りながら、アレンジして提供しています。
東京には色々な受け取り方をする人がいて、いろいろな可能性があるので、やっていてやりがいを感じますね。
フレンチシェフからラーメン店主への転身!『我武者羅』蓮沼店主が感じたラーメンの可能性、自身が感じる一番美味しいラーメンとは?
「田邉さんが埼玉など他のエリアで出店された際に感じることはありますか?」
田邉店主
私も地元にいながら「こんなの佐野ラーメンじゃない」と言われることもありますが、佐野ラーメンの枠を外れない程度に新しいものをどんどん取り入れて、そういうスパイスを少しづつでも自分のラーメンで表現していきたいと思ってやってます。
他の地方で出店させていただく際にそこでの様々なラーメン屋さんから勉強させていただいたことを、どんどん自分のラーメン取り入れていきたいなと思ってます。
進化していく部分と、守らなければいけない部分と、そういう両方がラーメンの多様性だと思ってやっています。
そういう面白さはすごくありますね。
「黒木さんが考えるラーメンの多様性についてはいかがですか?」
黒木大将
色々なラーメンを作る時にも僕の中でルールがあって、東京出身なので、スープ、脂、ネギ、青ネギ、メンマ、チャーシュー…など全部、東京に合わせてやってます。
以前は旨味の出方に関して分析するため、時間数や温度などを変えた様々な検体、約30検体くらいを分析機関に提出して、成分の出方を調査してもらって勉強したり、数字ありきで組み合わせてましたね。
最近は、もっとシンプルに直感で舌だけで味わって「美味しい」と感じるものだけで良いのかな〜と僕の中で変わってきていて。
今はどんどんシンプルになってきて、限定の方もシンプルに。
僕自身ももっとシンプルなことをやりたいな、と思っています。シンプルなラーメン。
「黒木さんがデビューされて今年創業10周年ですがこれからやってきたい事は?」
黒木大将
今やりたい事として「脱東京」があって(笑)実際に探してます。
やりたい場所はまだ決まって無いですが、日本全国いろんな食材があるから、なるべく食材に関連したところでやりたいと思っていて、探し中です。
いい食材といいご縁があれば、その食材で美味しいラーメン作りたい、シンプルなラーメン作りたいなと思ってます。
「黒木さんが東京を出られたら今のお店はどうされるんですか?」
黒木大将
閉めますね(笑)
「早坂さんが今後やりたい事は何ですか?」
早坂店主
子供とかお店を継ぐ人間がいないので、どういう風に幕引きを綺麗にして行こうかっていうのを最近は非常に悩んでいますね。
M&Aとかお店を大きくして転売するとか、今の時代は色々な考え方もあるんですけど、田舎でやってると、人の記憶に組み込まれて行くんですよね、ラーメンって。
その記憶ごとバチっと終わらせるのはなんか申し訳ないなと。
勝手に風呂敷を広げるだけ広げて自分都合で終わるのもどうかなと思ったりもしているので、綺麗な幕引きをどうするのが良いのか、そこはすごく悩んでいます。
「仙台以外で展開されるご予定は?」
早坂店主
移転するという野心を持った時もあるんですけど、今はお店のある場所に人を呼んで、その人たちが牛タンを食べたりすることが地方の活性化に繋がると考えてやっています。
「何のためにやっているのか」「生き残るために何をやるか」と、やり方とあり方は違うと思うので、地方であり方がしっかりしていないと、続かなくなるパターンが多いですね。
「蓮沼さんが最近考えられていることは?」
蓮沼店主
年も50を過ぎ、これから先の事は早坂さんと一緒ですけど「どんなものが作れるか?」という考えよりも「どんなものを残していけるか?」という考え方になってきたのは実際のところありますね。
一度きりの人生なんでね、どこまでいけるかな、やるだけやってみようかなと言うような気持ちになっていますね。
まだまだ楽しみたいって感じですね。
「長いキャリアの中で飽きることはありますか?」
蓮沼店主
飽きないですね。
よく他のラーメン店主さんと「どこのラーメン好き?」って話出るでしょ。
そこで「オレ、自分のラーメン1番好き」って言うと「変態だね」って言われる(笑)
でも、自分の舌で「これが1番美味い」って思うものをお客さんに提供している限りは毎日食べたいし、食べて最高って思うし。
今聞いてらっしゃる方もこいつ変態だなって思ってるでしょ?(笑)
「早坂さんはいかがですか?」
早坂店主
食べた時に楽に消化できるとか、年寄りも食べられるとかを考えてます。
僕のお客様のイメージは磯野家なんですよ。
磯野家のタラちゃんから波平さんまでみんながお店に来てもらった時に、家族みんなで頼んで食べられるラーメンがあるかどうか、それが僕の国民食というイメージ。
カツオくんからマスオさんまでしか食べられないと、波平さんはスポンサーにはなれるけれど、自分は食べられないんだよねとなると、おじいちゃんおばあちゃんと孫が一緒に食べられない。
自分の店は磯野家がみんなで来て、ラーメンを楽しんでもらえる、そういったお店にしたいと言うところが1番ですね。
「そこには東京と地方の違いもありますか?」
早坂店主
全くそう思います。
東京の都心部に行けば家族連れは少なくなってくるし、世代層別のニーズに合わせて作っていくのが当然になる。
だからそれが都会のラーメンのあり方だと思うし、地方とは別枠なものになると思うんです。
どっちがいい、どっちがハズレというわけではなくて。
そういう中で、ランキングの考え方って難しいと思っていて、最近思うのは、例えば5年までのお店、10年選手、20年選手、30年選手というお店の営業期間別でランキングを付けたらもっと面白いんじゃないかと思うんですよね。
自分がどの世代であるか、自分にあったラーメンを探しやすくなると思うんですよね。
「田邉さんは日々どのようなことを意識されてますか?」
田邉店主
ウチは自家製麺でやっているのですが自分の中に最高の麺のイメージがあって、それを日々追い求めて作っています。
小麦の品質も違いますし、同じ銘柄でも製粉した日によって別物になっちゃいますし、同じ湿度、同じ気温、同じ室温で、同じ水温で捏ねてもまた別物になっちゃいますし、難しいですよね。
そういう難しさの中で自分のイメージを追い求めて作り続けています。
『麺屋ようすけ』田邉店主が考える佐野ラーメンの未来とは?
「最後に一言づつお願いします」
田邉店主
ラーメンWalkerキッチンが2年目に入りまして、新スーパーバイザーとして参加させていただけるようになりました。
少しでもラーメンの活性化に協力できればと思って頑張って参ります。
機会がありましたら是非ご来店ください。ありがとうございました。
蓮沼店主
1年間スーパーバイザーとしてやらせてもらったんですけど、今年1年、たくさんのお客さんがここに来てくださって、本当に感謝しております。
これから2年目に入りますけれど、まだまだ可能性がたくさんあると思いますし、色んな事ができると思っています。
これからも色々な店主がパフォーマンスすると思うので、皆さん飽きる事なく通って頂けたらと思います。よろしくお願いします。
「蓮沼さん、クリスマスラーメン企画について絶賛進行中ですよね?」
蓮沼店主
今、クリスマスに向けてスーパーバイザーのみんなとここでどんなことができるか、会議をしている最中です。
コンセプトとしては「感謝」です。
1年間ここに通って下さったお客様への感謝ということで、皆さんに喜んでいただけるよう、ここにいるメンバーも鼻息荒く取り組んでおりますので、ぜひ楽しみにしていてください。
「黒木さん、早坂さん、一言願いします」
黒木大将
この場所はお客さんが楽しむ場所なんですけれども、自分たちも楽しんでます。
今日も田邉さんのスープの取り方を見られてすごく楽しいし、さっき調理場で色々話したことも凄い勉強になるし、いい場所に来られてよかったなと思います。
また来年も楽しめるといいなと思います。
早坂店主
コロナと言う事もあって去年はあまり出番がなかったんですが、来年機会があればぜひやりたいですね。
僕、昭和のラーメンしか作れないのですが、妥協しないでラーメンを作り込んで、ここでやれたらいいなぁと思っています。
なので素材が高くなって、原価が高くなって、売価が高くなっても皆さんよろしくお願いします(笑)