東京市部においてハイレベルのラーメン店が多く、ラーメン激戦区として知られる三鷹。 その中でもここ数年で一気に人気店として知られるようになったお店がある。 それが『鶏こく中華 すず喜』。
これまで大泉学園の『麺屋とらのこ(閉店)』や練馬の『麺酒やまの』など 数多くの人気ラーメン店を立ち上げてきた「とらのこグループ」が、 代表の鈴木氏の名前を冠して満を持してオープンしたお店であり、その店名通り鶏の旨み、コクをウリとしたすばらしいラーメンを提供している。
そしてそのすず喜が2019年11月から夜の部を利用して新ブランドのラーメン店を開始したのだ。 それが今回紹介する『スタミナ満点ラーメン すず鬼』である。
到着するとビルの地下にあって決してわかりやすい場所なわけでもないにも関わらず、 すず喜のブランド力の強さもあってかすでに行列となっていた。 表に掲げられているロゴマークは普段中央に「喜」という漢字が書かれたものが、 「鬼」に変わっているという芸の細かさがニクイ。
ラーメンは「スタ満ソバ」「辛いスタ満ソバ」の2種類のみ。 それに辛さ増しやトッピングなどにより自分の好みにカスタマイズできる。
さて、ここのラーメンのどこが特筆すべきなのか。 なんと知る人ぞ知るあの「アリランラーメン」のインスパイアなのだ。 アリランラーメンとは房総半島中心のかなり辺鄙な場所何軒かでしか食べることができないご当地ラーメン。
たっぷりの玉ねぎとニラに豚肉。醤油と甘み、辛みが効き、そしてニンニクがガッツリと入ってくる。 その強烈なインパクトにより提供店舗数が限られているにも関わらず、 竹岡式ラーメンや勝浦式担々麺と並んで千葉三大ラーメンにも数えられている。
まだ都内ではほとんど知られていないが非常に特徴がありカルトな人気を誇るそのアリランラーメンを「すず喜」がインスパイアしたというのだというのだからそれはチェックせねばなるまい。
注文したのは基本の「スタ満ソバ」。 無料トッピングとしてニンニク、ショウガ、背脂が用意されている。 今回は3つともトッピングした。
そして出てきたスタ満ソバ。 右手にはかなり細かく刻まれた生姜、左手には刻みニンニク、 そして玉ねぎやニラの上にはかなり大きめでしっかりと煮込まれた背脂がたっぷり。 その凶暴さを隠そうともしない見た目に心をわしづかみにされる。
スープを飲むとさらりとした飲み口ながらも肉と脂由来の甘みとコクのあるスープに醤油が効き、 確かにこれはアリランラーメンを思わせる味わい。 ニンニクは二郎で使われるような刻みニンニクではあるが、このスープには当然のようにベストマッチ。 背脂はぶつ切りという表現が正しいぐらいの大きさで、トロトロながら食感も残っていて旨い。
そして驚くは麺。長方形に近い断面の極太の自家製麺。軽く縮れており力強い食感でワシワシと食べ進める。 刻みニンニクの無料トッピングなども含めて、アリランラーメンをそのまま模倣して東京に持ってくるのではなく、 二郎の要素をハイブリッドさせて東京ナイズされたラーメンに見事に進化させている。
生卵を注文するとラーメンとは別の器で出してくれるのも非常にポイントが高い。 ラーメンには入れずに生卵を溶いたところに少しスープを入れ、 そこに麺をくぐらせて生卵を思い切り絡ませて食べるのがまた美味いのだ。 背脂や玉ねぎを絡めて食べてもまた楽しめる。
食べている客は常連が多くすでに三鷹の人たちの心をがっちりとつかんでいるようだ。 すず鬼をきっかけにアリランインスパイアがトレンドになるかもしれない。
『スタミナ満点ラーメン すず鬼』
東京都三鷹市下連雀3-28-21 公団三鷹駅前第2アパート B1F
070-2797-8807
18:45~23:30(売り切れ次第終了)
*『鶏こく中華 すず喜』の二毛作夜営業店
小林孝充 Takamitsu Kobayashi (食ジャーナリスト)
TVチャンピオンラーメン王選手権の歴代ラーメン王が結集して繰り広げられた「ラーメン大王決定戦」で優勝を果たした初代ラーメン大王。今までに食べたラーメンの杯数は13000杯を超える。ラーメンへの深い愛情を前提とした切れ味鋭い評論で、現在各メディアで活躍中。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @cova1026
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