百麺人・山本剛志の「語りたいラーメン店」 【第30回】電車じゃ行けない千葉の名店へ!「亀喜屋」&「澪つくし」

2023年05月01日 12時00分更新

 普段の食べ歩きは電車やバスなど、公共交通機関を使っている私には、「気になるけど行けていない」と思ってきたラーメン店が何軒かあります。
 友人からの誘いで車に乗り、そんな「行けていない店」がある千葉へと向かいました。

1店目は千葉の名店出身店主が作るワンタン麺

千葉市若葉区「中華そば 亀喜屋」

 まず1軒目に訪れたのが千葉市若葉区にある「中華そば 亀喜屋」です。

 

こちらのお店は2016年3月、千葉市作草部の人気店「麺処 まるわ」の2号店として開店しました(ちなみに「麺処 まるわ」は、長年店長を務められてきたビギーさんが2021年に店を受け継ぐ形の二代目として独立しています)。

 最寄り駅は千葉都市モノレールの千城台駅なのですが、5km以上は離れています。コンビニなどの店舗や目標物がなく、県道をしばらく進んだ一角に、突然現れる店舗がこちら。コミュニティバスもあるが本数が少ないため、車での訪問が現実的。
 ただし、店舗の横と裏手にある駐車場は満車になる時も多く、売り切れ次第閉店のため14時頃で完売する日も少なくないので注意が必要です。

ワンタン麺(味付け玉子トッピング)

 「亀喜屋」の看板メニューがこのワンタン麺。ご主人の出身地である勝浦市の朝市通り沿いにあった名店「出雲屋」の味にリスペクトを捧げつつ、味の記憶などから作り上げたという醤油味。スープには豚や鶏、節類メインの魚介系素材を用い、バランスを整えた一杯です。
 浅草開化楼の太麺が力強く、大判のチャーシューも存在感を発揮していますが、やはり中でもトゥルンと啜れる皮が心地よいワンタンが珠玉の食感で魅力的。また、海苔とナルトの上にのっているのは細く切られた生姜で、これをラーメンの合間に口に運ぶと、舌に残るスープの旨みや油分がリセットされて、またスープを飲み、麺を啜りたくなるという素晴らしい組み合わせです。

味噌らぁめんとつけそばもオススメ

 ワンタン麺が看板メニューの亀喜屋ですが、他のメニューも2品、この機会にいただいてきました。

味噌らぁめん(辛ネギトッピング)

 その一つ目がこの「味噌らあ麺」で、味噌味のラーメンに辛ネギを乗せたことで、見た目的にもすごいインパクトが生まれています。そして、力強いスープに深みのある味噌味が絡んで、お腹の底から温まる味わいになっています。辛味を和えたネギも相性がよく、さらに太麺を啜っていくと辛ネギがスープの中に徐々に落ちて、味噌色のスープが赤く染まり、辛さの質が変わっていくのも楽しいです。

つけそば(味付け玉子トッピング)

 もう一つは、亀喜屋の美味しい太麺を堪能できるつけそばです。つけ汁の酸味との相性が良いため、麺を勢いよく啜ることができます。さらに、たっぷりの刻みネギも相性が素晴らしく、よい意味でさっぱりした味わいに感じられます。

中華そば 亀喜屋
住所:千葉県千葉市若葉区上泉町 字堂地616−4
営業時間:11時00分~材料売り切れまで(ただし最長でも15時00分まで)
定休日:日曜日、祝日(月によって変更あるため公式Twitterを確認のこと)
※最新情報は公式Twitterhttps://twitter.com/kamekiya1296) をご確認ください

2店目は“焼き干し”の旨味が引き立つ中華そば

八街市「焼き干し中華そば 澪つくし」

 続いて向かったのは、千葉市との市境を越えた八街市に2022年9月に開店した「焼き干し中華そば 澪つくし」です。

 1店目に紹介した「亀喜屋」からは道一本で5kmほどの距離なのですが、いずれも最寄駅がないため、車で向かうしかないというわけです。
なお、こちらは実は西千葉駅近くの人気店「自家製手打ち麺 粋や」の2号店。この店舗の裏に工房があり、店主が麺とスープを仕込んでいます。

 そして看板メニューの「中華そば」には濃口醤油と薄口醤油の2種類があります。ちなみに中華そばも、それ以外のメニューのいずれも「中太手揉み麺」と「細麺」から選ぶことができます。

中華そば(濃口醤油、ワンタントッピング)

 まずは看板メニューでもある濃口醤油の中華そばをワンタントッピングで注文しました。この中華そばのスープとしては、ポイントとなるのは「焼き干し」を使っていることです。  
 小魚を煮出して作るのがいわゆる「煮干し」ですが、炭火で焼くことでその旨みを残しつつ仕上げるのが「焼き干し」です。この焼き干しを使用することで、濃口醤油の存在感も両立させています。そして苦味が控えめで香ばしさが立ち上るスープなので、グイグイと飲み進めてしまいます。

ツルツルシコシコな食感がたまらない中細麺

 なお今回は「中太手打ち麺」ではなく「細麺」の方を選びました。ツルツルシコシコとした食感が力強い中細麺が、スープの旨みを纏って引き上げさせます。さらにワンタンも皮の存在感が心地よく、個性的な一杯をより魅力的に彩ってくれます。

こちらも魅力的な「すっぱいしー!」

すっぱいしーつけ麺

 こちらの店では中華そばのほかに「こってり中華そば」「つけ麺」「すっぱいしーつけ麺」などがあるのですが、その中で特にもう一つ注目しておきたいメニューが「すっぱいしーつけ麺」です。
 その名前のとおり酸味と辛味が強いのでまさに「すっぱいしー」なつけ麺になっています。このメニューは、なんと千葉県八千代市勝田台にあった「丸長(閉店)」の二代目店主が提供していた独特な味にオマージュを捧げた一品となっています。黒胡椒を中心に大量の香辛料が入っており、酸味もたっぷりでまさに「すっぱいしー」という名にぴったりです。

焼き干し中華そば 澪つくし
住所:千葉県八街市沖1128-4
営業時間:11時00分~15時00分
定休日:木曜日
※最新情報は公式Twitter(https://twitter.com/miotukushi_iki) をご確認ください

 今回訪問した「亀喜屋」も「澪つくし」も、まさにここにしかない味を堪能できる名店。とにかく車がないと行きづらいのですが、この2軒の連食はオススメのコースですので、たくさんのラーメン好きの方に行っていただけたら嬉しいです。

山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)

2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @rawota

この記事をシェアしよう

ラーメンWalkerの最新情報を購読しよう

PAGE
TOP