お世話になっております。フードジャーナリストでラーメンWalker百麺人の、はんつ遠藤です。
「はんつ遠藤の全国ラーメン探訪記」、前回の「あら陣(北海道中標津町)」は好評だったみたいで、なにはともあれ良かったです。旅行している気分にもなったとも仰っていただけたり。ありがとうございます。今後、続くのか不安です(大汗)。
第2回も、北海道からお届けです。なにせ、広いので。今回は富良野市(ふらのし)の「とみ川(とみかわ)」。
北海道は面積約83,450平方km。広すぎてよく分かりませんが、簡単に言うと、九州全部で約36,750平方kmなので、九州の2倍より大きいです。北海道には179もの市町村があります。ちなみに全国の市町村は1,741。
僕は仕事がら1年間で全国をほぼ一周するので、47都道府県には、ほぼ毎年伺う事もあり、もちろんすべての都道府県でラーメン取材に行きました。
そんなこともあり、実は「全国の市町村すべてでラーメン店に行く」のが僕の夢でした。まぁ、途中であっけなく諦めましたが(涙)。
さて、富良野市。北海道の北部に位置し、上川地方に属する市で、人口約2万1千人。主な産業は農業で、野菜とかお米とか小麦とか酪農とか。グルメ的に一番有名なのは「富良野オムカレー」ですね。これはいわゆる“新ご当地グルメ”と呼ばれるジャンルで、地域おこしのために創出したグルメ。新ご当地グルメって、ほとんどが消え去っていくのですが、これは未だに有名なため、数少ない成功例と言われています。
とはいえ、人口約2万1千人しかいないのに、富良野は全国的にも知名度があります。その一番の理由は、ラベンダー畑。
毎年7月上旬が一番の見頃で、「ファーム富田」とかは観光客で溢れかえったりします。もちろん他の草花も美しくて、日ごろから完全に「花より団子」の僕でさえ、思わず「綺麗だ!!」と唸るほどです。
彼女さんとか奥様とかお子さんとかを連れて行くと、とても喜ばれます♪
そして二番めの理由は、ドラマ「北の国から」でしょう。人によっては、こちらのほうが一番の理由かもしれません。TVドラマ史上に残る不朽の名作。原作・脚本は倉本聰さん。フジテレビ系で1981年から放送開始。その後、’83冬、‘84夏、’87初恋、‘89帰郷、’92巣立ち、‘95秘密、’98時代、2002遺言と続いたテレビドラマ。ずいぶん前の作品とはいえ、今でも、さだまさしの挿入歌を聴いた瞬間に、仕事が手につかずにダメ人間になってしまう大人のなんと多いことか。
そのセットである「五郎の家」(拾ってきた家、石の家など)が、今も富良野市の麓郷という地に残っているわけで、行けばいつでも田中邦衛や吉岡秀隆や中嶋朋子の面影にふれることができるわけで……。
その「拾ってきた家」の向かいあたりに位置しているのが、今回ご紹介する「とみ川(とみかわ)」です!(前フリ、長かった (笑))。
富良野駅からクルマで約30分の、山奥にある麓郷にて、1997年の創業。木目を生かした温もりのある外観&店内。
最近はソーシャルディスタンスにも気を使ったカウンターに。
ご主人の富川哲人さんは地元の富良野出身。元・プロボクサーで、独学でラーメン店を始めました。店長の楠瀬利和さんとともに切り盛りなさっています。
初めてお会いしたのは10数年前。僕はNAMCOというゲーム会社が全国にプロデュースしていた数々のフードテーマパークで名誉館長や企画監修をしていたのですが、そのひとつ、大阪球場跡地のなんばパークスにあった「浪花麺だらけ」に出店していただいたのが最初です。そういえばフードテーマパークのほとんどは閉館しましたが、僕の企画監修で残っているのは「札幌ラーメン共和国(こちらにも「とみ川」出店して頂きました)」「津軽ラーメン街道」くらいかな。
今は、僕が名誉館長を務める中国・上海のラーメンテーマパーク「拉麺競技館」にも出店していただいています。ほかにも、全国のさまざまな百貨店の催事にも出店中。
そんな「とみ川」の一番の特徴は、麺です。
自家製麺はもちろん、石臼挽きの「自家製粉」なのです。←ここ、重要♪
本来、蕎麦と違い、小麦粉は粉になった状態で流通するのが通常で、身の状態(すなわち玄麦)を入手することすら非常に困難なので、そもそも石臼挽き機を使用できない。でも、富川さんは玄麦を仕入れる事ができるのです。しかも北海道産。それすら凄い。今でこそ、全国に自家製粉のラーメン店は数軒ありますが、その元祖が、こちら「とみ川」。
しかも、そんな小麦粉を、今度は珈琲みたいに自家焙煎したり。さらに、今年からは農家さんに富良野産「はるよこい」を小麦の状態のまま雪の下で越冬させて熟成した小麦を用いた小麦粉(もちろん世界初です)を使用したり。なので、現在は石臼挽き小麦粉配合麺、焙煎小麦粉配合麺、熟成小麦粉配合麺と3種類の自家製麺を提供しています。
なので、現在の一押しは「雪中小麦中華そば(せっちゅうこむぎちゅうかそば)」。
北海道産丸鶏と煮干しで採った醤油スープは、優しい口あたり。
麓郷山桜で燻製した焙煎スモークチャーシューなど3種のチャーシューや、イタドリという植物を用いたメンマなども高レベルで美味。
そこに、雪の中でアイスエージングされた富良野産「はるよこい」を自ら石臼挽きした小麦粉を配合した麺からは、コクと甘さを感じます。
さすが飲食店格付本「ミシュランガイド 北海道 2017特別版」で、ビブグルマンに輝く名店。「ラーメンに向き合い数十年。常にただラーメンの事ばかりを考えて」みたいな雰囲気が伝わってきます。
が、僕は知っています。実は富川さんが、かなりのヤリ手というか商売人な事を。
「なまらガラナソーダというのも作ったんだ。飲んで~♪」とか。
「お土産ラーメンも数種類作ったんだ。「北の国から」とタイアップ的な「子供がまだ食ってる途中でしょうがラーメン」とかもあるよ」とか。
さらに「なまら棒も、食べて~♪」と仰り、クルマでまた約30分かけて富良野駅近くの「ふらのマルシェ2」にある系列店「ゆきと花」へ。(富川さんは富良野や新千歳空港で合計4店舗のラーメン店を経営しています)
「なまら棒」とは、長さ約33cmのスティック状の棒餃子としてスタートし、現在はひき肉ベースで、バター醤油味やトマト&チーズ味などを提供。多い時は一日に約2800本も売れたとか。
やはり、ヤリ手の商売人だ!と僕は確信したのですが、でも、よくよく聞けば、ふらの観光協会の理事とか事務局長とかなさっていて、富良野を全国、全世界に広げようと一生懸命みたい。あ、そうなんだ!地域貢献という意味もあるんだ!
と、ちょっと敬服したところで目に飛び込んできたのが「ゆきと花」の新メニュー、「ふらのジビエ味噌 羆(HIGUMA)」。
「地元のひぐまと鹿の骨をスープに使用した味噌ラーメンなんだよ~♪」といいつつ、ひぐまの骨を嬉しそうに、手に(汗)。
富川さん、やっぱり、ちょっと、ヤバいかもしれません(笑)。
富良野 とみ川(とみかわ)
北海道富良野市字麓郷市街地の5
0167-29-2666
http://www.furanotomikawa.com/
はんつ遠藤
1966年生まれ東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方をひとりでこなし、取材軒数は、1万軒を超える。全国のご当地グルメの知識と経験を活かし、ナムコのフードテーマパーク事業にも協力し、中国・上海の日式ラーメンテーマパーク「拉麺競技館」の名誉館長も務める。『日経トレンディ』にてトレンドリーダーにも選出。「週刊大衆」「JAL(Web)」などに連載中。また近年はYouTube【はんつTV】で飲食店を紹介している。ラーメンWalker百麺人も。岐阜高島屋「はんつ遠藤の全国ご当地ラーメンリレー」監修。
著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメンかんたんレシピ30』『おうち丼ぶりかんたんレシピ30』『東京やきとり革命!』など27冊。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @hantsendo
YouTube【はんつTV】 https://www.youtube.com/channel/UCgu9hL89X4k5mWpz8BetHjw
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