【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第23回
埼玉・新三郷『中華そば 須紗』 麵屋武蔵で11年修業したベテランが中華そばとつけ麺で勝負。武蔵ゆずりの角煮もさらに美味しく!
2023年1月26日、埼玉県三郷市に新店『中華そば 須紗』がオープンした。店主の須藤大輔さんは、『麵屋武蔵』出身。豚骨魚介の二刀流Wスープで一躍人気となり、国内外に店舗展開してきた名店だ。須藤さんは11年修業してきた『麵屋武蔵』のエッセンスを取り入れ、独自の味を作り上げた。最寄り駅から遠い場所ながら、すでに行列ができるほど評判だ。筆者も地元にできた名店の系譜を新たな形で継ぐ店に、タイミングを待ち続けてようやく訪れた。
名店『麵屋武蔵』で11年修業を重ね、待望の独立は地元埼玉で
須藤大輔さんは、仕事の合間にいろんなラーメン店を食べ歩くうちに、仕事を辞めてラーメン店で働こうと考えていた。まったく飲食店経験はなかったが、最初から独立を目指し、「どうせだったら日本一のお店に行こう」と、その時、一番好きだった『麵屋武蔵』に飛び込みで入ったという。当初は、3年で独立しようと意気込んでいたが、包丁も握ったことがない須藤さんには厳しかった。店舗をいくつも移動しながら、独立するまで11年もの修業を積むことになる。
独立を考えたのは3年ほど前。「もともと独立するなら埼玉でやろうと思ってたんです。物件を100軒くらいみて、ここに決めました」。須藤さんを後押ししてくれたのは、同じ店で働いていた尊敬する先輩『拉麺 瑞笑』の高木店主だ。先に独立していた高木さんが相談に乗ってくれたことで、独立に踏み切れたという。
そして2023年1月26日、埼玉県三郷市に念願の『中華そば 須紗』をオープンした。店名には自身の苗字、須藤から一字とって、さらにもう一字“紗”をパートナーの名前から付けた。「物件を100軒も探し回ったんですが、不動産業で働いていた彼女に相談に乗ってもらったおかげで、やっとのことでここに決まったんです。途中で諦めようかと思うくらいで、背中を押してくれたのが彼女です。今では休みの日に店を手伝いに来てくれたり、とても感謝しています」。須藤さんは石橋を叩いても渡らないタイプらしく、彼女が陰で支えてくれるおかげで今があると語る。
ラーメンじゃなく“中華そば”を目指して、理想の出汁を徹底的に追求
もともと二郎系や家系が好きで、清湯ラーメンをほぼ食べたことがなかった須藤さん。独立を考え始めた頃、蒲田の『麺屋 まほろ芭』で食べた清湯ラーメンに衝撃を受けた。どうやったらこの味を作れるんだろうと試行錯誤しながら仕上げたその味は、「麺屋武蔵の絶対的なタレの技術に、オリジナルの美味しい出汁で作ったらどういう味になるか、それが目指しているところです。だから、醤油の風味が前に出るような醤油ラーメンではなく“中華そば”で出しています」。独立前からずっと出汁感を研究し続け、須藤さんが目指した中華そばがこちら。
一目見て、惚れ惚れするような美しさ! 早速、スープを一口、あっさりだがいろんな旨味が押し寄せる。初めて来た方に「何味?」とよく聞かれるそうで、「鶏ガラもげん骨も、鰹節や煮干し、椎茸、昆布も大量に使ってますし、それがバランスよくまとまっている感じです。ただ、オープン時は全バランス型で、タレもスープも油もビシッとハマるようにしたんですけど、それだと印象に残らない。今はあえてバランスを魚のほうに寄せています。この醤油旨いというより、このスープ旨いってなるようにですね」と、須藤さんのこだわりが伝わってくる。
券売機を見ると、中華そばの隣に塩中華そばがある。「どちらもベーシックを心掛けて作っています」という、2種の中華そばが人気だ。まずは中華そば、次に塩中華と順番に食べ進めて、もう1つ、『麵屋武蔵』出身といえばつけ麺をぜひ食べたいところだ。
つやつやした麺上に、大きな角煮がひときわ目立つ。『麺屋武蔵』でもお馴染みの角煮だが、「味は違いますけど、少しでも武蔵のエッセンスを出せればと思ってます」。須紗は、老若男女問わず人気だが、昼は働く男性客が多いので、つけ麺のスープは、中華そばより味濃く引きが強い感じに仕上げているそう。麺量も並、中と同料金で増量できるのも嬉しい配慮だ。
武蔵ゆずりの角煮をさらに美味しく! 蘊蓄抜きで食べて欲しいこだわりの数々
須紗の評判の中でも、特に目立つのが角煮丼フィーバーともいえる盛り上がり。食べた人がSNSに次々とアップしているのだが、他の具も一緒に盛りつけて、だんだんボリューム満点な丼になっている。「武蔵では、基本的に角煮は蒸し器で作っていますが、うちではスペースの問題もあってボイルしています。ボイルの最適な温度や時間を1℃ずつ変えながら見つけ出し、従来よりも低温で長く炊いてるんです。そうすることで外側がプルプル、中も柔らかい角煮になります」と須藤さん。美味しい角煮にはそれなりの理由があるわけだ。
どの具材も秀逸で、特に気になったのが小松菜。須藤さんに尋ねると、「小松菜めちゃくちゃ手間かかってますからね、よく気づいてくれました! 茹でたあと冷やして、水分を絞って出汁洗いしてるんですよ。それを次の日に余分な水分を絞ってから使います」。食べず嫌いで食べない方もいるそうだが、もったいない! シャキシャキとした食感に出汁の味わい、小松菜1本さえも美味しいのでぜひ食べてほしい。
前述のスープも、詳しく伺うと予想以上の手間暇がかかっている。まず、動物系スープを炊き、煮干しや鯵など乾物を追加しながら、炊いては冷やしを繰り返し、油を濾すなど、鶏ガラの解凍を入れると4日かかるという。ちょうど、前夜に煮干しを入れたものに、これから挽肉を入れるというので見せていただいた。挽肉に雑味や油分を吸着させて取り除くことで、旨味たっぷりの透明できれいなスープが出来上がる。
「最初は、動物系の出汁と、魚系の出汁をすぐ使ってたんですよ。そのほうがもっと透明できれいなんですけど味がぶれてしまって。いろいろやり方を変えて、1日寝かせてから使うと動物系スープが安定するんです。げん骨も入れてるんで、すごくプルプルの状態になって、味ものって美味しいんですよ」。美味しい味を求めてブラッシュアップするたびに、日々の仕込みがさらに忙しくなるそうだが、須藤さんはそれを淡々と語る。
須藤さんには、1つこだわりがある。「よくラーメンの説明書きがあるじゃないですか。僕は、先入観なく食べてもらいたいから、蘊蓄を書きたくないんですよ。食べながら、どうやって美味しいんだろうとか思ってほしいですね。母は、ポップを作ればって言うんですけど、ちょっと恥ずかしいのもあります(笑)」と、照れながら教えてくれた。
通常業務も忙しい中、すでに担々麺の限定も始めている。「7月は冷やし、8月は冷たいスープのつけ麺…と続けていきたいですね。修業時代は限定一つでも許可が必要で、やりたいことがなかなかできなかった。今はやろうと思えばすぐできるし、アイディアはいっぱいあります! 自分が美味しいと思ったものにとことんこだわれるのが個人店のいいところなので、それが1%でも伝われば嬉しいですね」。接客のお母様とパートナー、先輩、そして足しげく通うお客様…多くの人に支えられて、埼玉トップを目指す須藤さん。一度、須紗に来てほしい。何度も食べたいと思える味が、ここにはある。
中華そば 須紗 (zusa)
埼玉県三郷市彦成3-121-4
11:00~15:00 (L.O.14:45)、17:30~20:15 (L.O.20:00)
月・木曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/chuukasobazusa)をご確認ください。
大熊美智代 Michiyo Okuma
ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。
本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna
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