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鶏のレアチャーシューが魅力的すぎる一杯には、波乱万丈の歴史が詰まっている! 麺ゃ しき(大阪府・守口市)【大阪の麺スタグラマーによる「ラーメンの時間ですよ」】第13回

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 はいはーい、ラーメンの時間ですよ♪

 20年以上極めてきた板前の道から、ラーメンという新たな領域に挑戦。今もなお挑戦し続ける店主さんに密着。

 今回ご紹介するのは『麺ゃ しき』さん。地下鉄谷町線の守口駅にほど近い住宅街の中にあり、目立たない立地でありながら幅広い年齢層に受け入れられるメニュー構成とアットホームな雰囲気から、行列のできるお店。

店舗外観。渡辺店主の似顔絵が目印

店主の渡辺博隆さん。笑顔が素敵な癒し系

 今回は店主の渡辺博隆さんに色々とお話を伺いました。

 男ばかりの5人兄弟で育った渡辺さん。中学の頃から中華料理屋でアルバイトをしていたそう。

「店主さんやスタッフさんが厨房で調理する姿が中学生の目にはとにかくカッコよく見えてね。それが料理の道に進むきっかけになったんよ」

 ただ、中学卒業後は板前として寿司屋さんに就職……あれ? 中華料理屋さんでは無いんですね?

「もちろん中華料理屋志望やったけど、募集が全く無かったもんで」

 あ、そういうことですか。

 で、気が付けば板前として23年の月日が経過。ここで新たな挑戦として独立……したのは寿司屋さんではなく、まさかのラーメン屋さん。

 なぜ経験のある板前からラーメン屋さんに?

「賄いは何を作っても良くて唯一贅沢できてね。そこで色々なラーメンも作っていて、結構好評頂いてたのもあって多少は自信もあったので。ラーメンは奥が深くて一杯でガラリと味わいが変わる。この点は寿司もラーメンも同じかな、と」

 そうして『麺ゃ しき』をオープンしたのが2011年11月11日11時11分! せっかくだし、とここはこだわったそう(笑) 料理もそうですが時折見せるこういった遊び心も楽しいところ。

 ただ、通りからも外れた場所であり、初めはかなり苦労したそうで。

「とにかく最初の2年はお客さんも来なくてどん底やったね。情報発信する技術もないから、とにかく仕込みに時間をかけたよ。時間だけはあったからね(笑)」

 板前時代に教わった、手を抜いたら終わり、という気持ちを常に意識しながらひたすらどうしたらもっと美味しくできるか、を追求する日々。でもどん底の時には負の連鎖が続くもので、そんなどん底の2年間にありえないような事件が連発!

 1年目、車が好きな渡辺さんが当時乗っていた愛車が日産スカイライン34GT-R! 私も実はスカイライン好きで乗っていましたが、GT-Rは高嶺の花で手が出ず下位グレードで我慢した経緯が……なので羨ましい限り。

 ただ、オープンしたものの売り上げは厳しく、泣く泣く愛車を手放そうと決めた矢先に事件が。愛車との別れのラストツーリングを翌日に控え、いつものようにマンションの地下2階にある駐車場に停めて自宅に。翌日、荷物を携え駐車場に向かうと目の前にはまさかの光景が! なんと駐車場が水没しており、頭は真っ白に! 2012年8月、大阪を突如襲った豪雨により車は水没し廃車。車両保険も入っておらず、お金が無い中で売却予定の車までも一瞬で失ったとのこと。

 そして2年目、普段通り営業を続けていたところ、突如けたたましい音と揺れが響き、顔を上げると店奥の壁を突き破って車が店内に! 裏の駐車場に停める際にアクセルとブレーキを踏み間違えたそうですが、お客さんにも従業員にも怪我がなかったのが不幸中の幸い。しかしながらこの一件でしばらくお店は休業状態に。本来ならば、保険により休業補償やら改修工事費用やらがしっかり賄われるべきなんですが、あまり知識もなかったことから蓋を開ければ全然足りなくて、かなりの金額が自らの負担となったそう。

 オープン当初からこんなドラマのような波乱続きの状態で、さすがに廃業も頭をよぎったとのことですが、そんな時に先輩のラーメン店主さんから「すぐにでも営業再開するべき」との言葉を頂き、頑張って営業を再開。この時の先輩店主さんの言葉に救われたという渡辺さん。しかもその年に奥さんが病で倒れるなどの困難もあったものの、なんとか乗り越え、たくさんの方々の支えもあり、徐々にメディアにも取り上げられるように。もしあの時諦めていたら今の『麺ゃ しき』さんが無かったかもと思うと、ゾッとしますね……。

 認知度もなく苦しい中で更なる試練の事件も乗り越えてきただけあって、現在のコロナ禍においても「やれるだけの対策をしっかりやって、真面目に取り組むのみ」と。緊急事態宣言下でお店は休業していたものの、その際に店内の空気浄化策やアクリル板設置など自ら店舗を改装。おかげで安心して訪問できる空間になっています。

店舗内観。コロナ対策もバッチリ!

 それではそろそろラーメンの話題に(笑)

 『麺ゃ しき』さんで提供しているラーメンには元板前ならではのこだわりが随所に見られるんですが、その中でも特筆すべきはやはりトッピングのトリレアチャーシューかと。ピンク色で透明感のある、見るからに美しいレアチャーシューは食べても絶品で、ついつい増してしまいます(笑)

仕込みの風景。慣れた手つきで大量の鶏を捌き選別していく

 このレアチャーシュー、もも肉の中でも新鮮で柔らかいものしか使わないそうで、熟練した目利きが重要とのこと。そう言いながら瞬時に鶏を捌き選別していく渡辺さん。

『支那そば』+トリレアチャーシュー増し

 そんなトリレアチャーシュー、もちろん追加トッピングもできますが、初めからトッピングされているラーメンが『支那そば』。鶏と魚介のWスープに3種の塩からなる透明感のあるスープは、あっさりとしつつも素材の旨味がしっかりと伝わってくる美味しさ。風味付けとして貝柱の香味油を使用するこだわりも。

『美白白湯つけ麺』+濃厚煮玉子

 同じくトリレアチャーシューがトッピングされているのが『美白白湯つけ麺』。ネーミングに惹かれる女性も多いかもしれませんが、口当たりもまろやかで繊細な味わいの白湯。鶏白湯スープを炊くのはかなり大変だそうですが、手間暇を惜しまない努力がこの美味さに繋がるんだと改めて実感。

『醤油しき麺』+濃厚煮玉子

 『醤油しき麺』は、鶏と魚介のWスープにカエシの風味豊かな味わいが特徴的。大分県産の濃厚煮玉子は、名前の通り濃厚な黄身が特徴でトッピング必須の美味さ!

『つけ麺』+濃厚煮玉子。顔バージョン(笑)

 たまにこんな遊び心も見せてくれます(笑)

『太麺和えそば』+『炊き込みご飯』

 『太麺和えそば』は、もちもちの麺に濃厚な黄身と香ばしいタレが絡んでクセになる美味しさ。麺を食べ終わった後は残ったタレに『炊き込みご飯』をダイブさせれば、これがめっちゃ合う! 病みつきになること必至のコンビです。

夏限定『濃厚カレーラーメン』

 定番以外にも限定を提供されているんですが、夏限定が『濃厚カレーラーメン』。冷やしラーメンを提供するお店が多い中、敢えてのカレー! 今流行りのスパイスは控えめに、万人受けする味わいが人気の秘訣。

 カレーラーメンだと締めは白ごはんだよね……と思っている方がほとんどですが、実はこれにも先ほどの『炊き込みご飯』が合うんです。自分も今まで知らなかったんですが、炊き込みご飯の味わいがカレーのルウに上手く調和します。ぜひ試してほしい組み合わせです。

冬限定『味噌三昧』+つくね+肉味噌+濃厚煮玉子

 そして、冬限定といえば『味噌三昧』。味噌と酒粕にとことんまでこだわり抜いた冬の風物詩で、ファンが毎年待ち望んでいるほど(私もその一人)。ニンニクの有無が選べますが、このニンニクがまた合うんです! 食べ進めていると、冷えた身体の芯からポカポカしてきて、じんわりと汗が滲むほど。つくねや辛味噌を追加トッピングして食べると最高です!

 全体的に渡辺店主の笑顔同様優しい味わいなんですが、ご家族でお越し頂くことも多く、小さいお子さんからご年配の方まで年齢層も幅広いことからたくさんの方に喜んで頂ける味を追求し続けた結果、今の味に。最近は製麺機を導入し、かなりの試行錯誤の上やっと自分なりに満足できるレベルになったことで、自家製麺に切り替えたばかり。

 「屋号に『麺ゃ』って入れているだけあって、やはり麺にはこだわりたくて。かなりの時間をかけてやっと自分で『美味しい』と思えるレベルになったので」という自家製麺、これがまた美味しいんです。

製麺機と自家製麺

 独立開業して波乱の連続だったものの、今では知名度も上がり、気付けば9年目。ここまでやってこれたのは「たくさんの人々の支えに助けられたから」と語る渡辺さん。高校生のアルバイトスタッフさんも多い中、皆元気で気持ちの良い接客に行くたびに癒されます。

 「ほんと人に恵まれた人生やわ」と言われますが、やはり渡辺さんの笑顔や想いが人を惹きつけるんでしょうね。

 「一切妥協しない!常に全開!」の渡辺店主が作る一杯と笑顔に癒されに、今年もまた通います(笑)

<店舗データ>

 【店名】麺ゃ しき
 【住所】大阪府守口市豊秀町2-1-3 エスポワール豊秀ワン1F
 【営業時間】
  平日 11:30〜14:00、18:00〜21:00
 土日祝 11:30〜15:00、18:00〜21:00
 【定休日】月曜夜、火曜
 【最寄り駅】
 地下鉄谷町線「守口」駅から徒歩1分
 京阪本線「守口市」駅から徒歩6分

 ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/menya_shiki)をご確認ください。

<ライタープロフィール>

 だいち Daichi

 大阪府在住。年間300食以上を食べ歩くラーメンインスタグラマー。普段はバイク移動をしており、美味しいラーメンを求めて気の向くままにラーメン店巡り。仕事柄出張が多いことから、Instagramには全国のラーメンをポストしている。

 本人Instagram @ramentimes
 Twitter @elground7s

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