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ラーメンWalker発!「未来を輝かせるラーメンストーリーズ」第32話

名店の店主も日本一と称賛する東海殿堂入り店が見せた、一杯の丼の中に完結したラーメン哲学

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 ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。2022年10月26日~31日は、「東海の殿堂入り店」を味わい尽くす 第2弾! ラーメンWalkerグランプリに三重エリアでいち早く殿堂入りし、数々の受賞歴がある四日市『らーめん鉢ノ葦葉』が初出店した。東海エリア随一の技巧派と呼ばれる店主の堀克多さんは、その上質な味を独学で作り上げた。今回、東京麴町の名店『ソラノイロ』宮崎店主が、日本一と尊敬してやまない『鉢ノ葦葉』を推薦した。堀店主が三重から作り込んできた極上ラーメンの全貌と、一杯の丼にこめた想いを伺った。

『らーめん鉢ノ葦葉(はちのあしは)』店主・堀 克多さん

独学で一つひとつ創り上げた東海エリア最高峰のラーメン

 堀克多さんは、神奈川県小田原市で生まれ育った。遠く離れた四日市に根付くきっかけは、「妻の実家が四日市で、長女で一人っ子だったんです。僕は気楽な生き方をしていたので、じゃあ行こうかと、30歳の時に移り住みました」。もともと我が強く、関東にいた頃もほとんど定職につかず、組織の中でうまくいかないのがコンプレックスだった堀さん。子供も生まれてこれからどうしようかと考えた時に、何か個人事業で生きていけないかと思い立った。「自分の貯金で開業できる飲食店にターゲットを絞って、さらにうどんやカレーとか1つのもので商売が成立することだったら、性格的にとことん突き詰めて勝負できると思ったんですね。それで候補に上がったラーメンをやってみようとなったんです」と堀さん。意外にも、ラーメンが大好きというわけではなく、生きるための手段としてラーメンを選んだという。

 ラーメンの食べ歩きもしたことがなく、包丁すら持ったことがない状況で、まずは1日2000食をこなす社員食堂の調理師の仕事に就いた。「ラーメンは大量調理だから、そこで2年間働きながら調理を覚ようと思ったんです」と、修業を選ばなかった堀さん。その間、ラーメンの勉強や自作と、ほぼ独学で準備をし、2007年4月8日に『らーめん鉢ノ葦葉』を開業した。

『らーめん鉢ノ葦葉』。近鉄四日市駅から徒歩10分

 しかし、オープン後の半年は鳴かず飛ばずで、貯金を切り崩しても支払いが滞る状況に。もう終わりだと思ったその時、たまたまテレビの取材依頼が舞い込んだ。一時的だが、来客が増え、それで何とか切り抜けることができた。そこから内に秘める情熱がふつふつと湧き上がり、創業から15年。少しずつ積み重ねて今の味を創り上げ、遠方からわざわざ訪れるべき名店となった。

店の味をそのまま届けるために。大盛況イベントの裏側

 ラーメンWalkerキッチンに出店するために、四日市では東所沢到着前から仕込みが既に始まっていた。まず、店同様に乾燥メンマを4日間かけて戻して調理する。

四日市で乾燥メンマから仕込んだメンマを、店そのままの味で東所沢へ

 続いて、国産豚肩ロースを本体、脂、赤身、差し入り、骨筋に分割し、それをチャーシュー、ワンタン餡、スープに振り分ける。店の味をラーメンWalkerキッチンでもキッチリ再現するために、いつも通りの仕込みだ。

通常の仕込みと並行して、膨大なイベントの仕込みをこなす

 今回の出店するにあたり、最後の最後まで悩んだのが、麺を仕入れにするか自家製麵にするか。「普通に考えたら自分が作る100%自家製麺は無理なんです。でも、何とかならないか、ずっと思案していて。それをポロっと埼玉の岩本店主にもらしたら、『僕が打ちますよ』って言ってくれたんです。でも、それだとダメなんですよ。ラーメンフリークの方たちは、それだと熱狂しない。やっぱり僕がふれたものじゃないとダメだと思うんです。でも、岩本さんがそこまで言ってくれたんだから何とかしようと思って考えたのが、東所沢入りの前日に四日市の店で打てるだけ打って、仕込み日に『中華そば深緑』で岩本店主に教えながら2人で打って、残りは鉢ノ葦葉レシピをマスターした岩本店主の麺。それなら納得いくんじゃないかって考えたんですね」。

『中華そば深緑』店主・岩本和人さん(右)。最終日は8時間かけて打った計300kgの麺を堀店主へ託した

 岩本店主も「堀さんの製麺工程がすごいんです。どうしてここでこれをやるの?みたいな。でも、家に帰ってじっくり考えると、そうだよなぁと納得させられます。食材の使い方、お客様への心遣い、ラーメンに対しての想いを僕らにも伝えてくださいます。本当に勉強になります」と語る。

 なぜ、そこまでできるのか聞いてみると、「待ってる人がいるんです」と堀さん。そして、工程も大変ながら、「工程自体を自分でクリエイトするのが本当に素晴らしいものだと思うんです。既存のやり方で美味しいものを作るよりも、その道中で思いもよらない、みんながあっと驚くような工程を自分で埋め立てていくと完全オリジナルじゃないですか。それをやってます」と、緻密に計算された一杯のためのラーメン哲学を語る。

いつも通り無双小麦を使った自家製麺

連日行列で材料切れも…緻密に計算された一杯に感動!

 お待ちかねのラーメンがこちらだ。三重県産熊野地鶏と煮干しの出汁、そこに大豆や切り干し大根など日本古来の食材を使った塩ダレを合わせた極上のスープ。合わせる麺は、北海道産小麦をオリジナルブレンドした「無双小麦」を使った自家製ストレート麺だ。いつもの自家製麺と遜色なくお届けするために、四日市の本店で堀店主が打った麺、埼玉の深緑で岩本店主に教えながら打った麺、岩本店主が鉢ノ葦葉レシピで打った麺と、2日毎に異なる麺が提供された。

「塩らー麺」

 具材には、熊野地鶏のモモ、ムネ、ササミの3種の鶏チャーシューに、国産肩ロースの豚チャーシュー、自家製ワンタン、四日市から仕込みしてきたメンマなどが添えられた。特製にはさらに岩中ポークのシキンボ、味玉なども追加されていた。

「特製塩らー麺」

 「醤油らー麺」は、湯浅醤油を使った特製ダレを合わせた上品なスープに、自家製麺を抜群のバランスで仕上げた一杯だ。

「醤油らー麺」

 店の味をきっちり再現するための堀さんの仕事は、サイドメニューにも。「ラーメンWalkerキッチンの炊飯器は電気炊飯器で、店はガス炊飯器。ラーメンWalkerキッチンは都市ガス、店はプロパンガスで、炊飯器の持ち込みは不可。それでも工夫を凝らせば、考えれば『いつもと同じ味』が出来ると思うんです」と、四日市から、もっともっと美味しくできる方法を考え続けてきた。

「地鶏と岩中ポークの味ごはん」は、売切れ続出の人気!

 スープと麺だけの“かけ”で食べたいラーメンがある。それは誉め言葉だと思っていたが、鉢ノ葦葉のラーメンを食べて考えが変わった。鶏も煮干もタレも麺も具材も、すべてが過不足のないバランス。丼の中にしっかりと店主の想いが凝縮された完璧な一杯だ。

名店店主も日本一と尊敬する店主が東海のラーメンの魅力を発揮

 今回、「東海の殿堂入り店」を味わい尽くす、というテーマのもと、東京の名店『ソラノイロ』宮崎千尋店主が『らーめん鉢ノ葦葉』を推薦した。福岡発祥の『一風堂』出身の宮崎店主が、なぜ東海?という疑問に、「2017年にソラノイロが名古屋に出店した時、東海エリアのラーメン屋さんと仲良くなったんです。ラーメンフリークの人に紹介してもらって、彼がお店に来て僕のラーメンを食べて、僕も食べに行って感動して。自分が食べ手として、もう1回食べたいと思えるラーメンってなかなかない。そんな時に出合った、僕が自信をもって日本一だと思えるお店なんです」と答えた。

堀店主(左)と『ソラノイロ』宮崎店主(右)が並ぶ貴重な厨房

 それでは、堀さんから見た宮崎さんは? 「東京麹町のソラノイロって言ったら、地方の我々からしたらハイエンドな世界にいる人。ラーメンで東京のハイエンドって言ったら、世界のハイエンドじゃないですか。そこでしのぎを削っている人って、どういう人なんだろうと興味があるから、常にブログやSNSをチェックしてましたね。読むと “こういう生き方って掃除が大切。なぜなら…”ということを説いたり、自分の哲学を綴ることが多くて。僕もそういう人間だから、店主さんの中で一番僕にフィットする方ですね」。

 独学で「今でも食べ歩きとかほとんどしない。そこに自分の正解があると思えないんですよね」という堀さんに対して、修業11年で「食べ歩きをする理由は地道に勉強したいから。そこで負けたくないというか、そこが自信のもと」という宮崎さん。一見、対照的だが、それは泥臭い地道な努力の積み重ねであって、根っこは同じだと互いに共感し合う。宮崎さんも「堀さんはタイプは違うけど、共感と尊敬の両方あります」と語る。

ワンタンも無双小麦を使ったいつもの皮。宮崎店主もワンタン包みの強力な助っ人

堀店主の仕事を隣で見る宮崎店主が「一流、それは気づくこと、察知すること。とても勉強になった」と語る

 権威ある世界的なレストランガイドに掲載されたり、ラーメン情報サイトのランキングで頂点に君臨し続ける『飯田商店』を抜き1位になったりと、既にラーメン業界のトップに君臨する『鉢ノ葦葉』だが、「急にビックネームになったわけではないんです。気づいたらちょこちょこっと階段を上がるような感じで。もちろんランキング1位は嬉しいけど、客観的に自分を見つめて、あなたの順位はラーメン業界で何位ですかって問うと、決して1位じゃないですね」と、自身の評価は厳しい。前回の出店を任された、弟子の『紫陽花』戸谷店主にも厳しい方だと伺った。

「彼はラーメンを作るテクニックは本当に天才的。ただ対人とか対組織、対社会とか、うまく立ち回りができない人なんです。だから修業時代に教えたのは礼儀とか筋を通すとか、あとは掃除ですね。最初に換気扇掃除を任せたら、きれいになったんです。でも、よく見ると裏側がひとつも掃除してなくて。換気扇って掃除した人はわかるんだけど、裏のほうが汚れるんですよ。なぜ、掃除が大切かと言ったら、汚れに気づく人は何にでも気づける人。それに気づけない人は自分のラーメンの気づきもない、表面だけでなんです。人に対しても心の中に気づけるように、そういうことをひたすら厳しく言いましたね」。

堀店主が認めた弟子『紫陽花』戸谷店主(右)とともに、ラーメンWalkerキッチン初出店

 戸谷店主も「師匠が紹介してくれたから、今回出店することができたんです。たくさんの人との繋がりのおかげでここまで来てるんだとすごく感じます」と答えているように、師匠の想いはしっかりと伝わっている。

 今回、宮崎さんからの紹介を堀さんは、「本当に、感謝してます。ちょうどコロナもあって、ずっとモヤモヤし続けていたんです。ラーメン屋って結構ハードワークで、自分も50歳を過ぎてる。いつまでできるのか、やれるところまで何でもやろうかなっていう気持ちでいた時にオファーを頂いたんです。よしよしと、これを受けてこの先に何があるのかなという好奇心が湧いてきましたね」と、感謝の言葉と柔らかな笑顔を見せた。そして、「厨房に立ち続ける限り、ストイックに何か特別なものを追い求めるのは間違いないです。ラーメンと自分のソウルは完全に一体化していて、イコールな存在なんです。体が壊れるとか立てなくなって、完全にできなくなった時が終わり。中途半端に惰性でってのは絶対無理ですね」と、譲れないプライオリティもある。

 店以上の味を求めた鉢ノ葦葉を、宮崎店主が「東京でこのレベルのラーメンが食べられるのは、お客様にとってすごいチャンス。もっといろんな人に食べてもらいたい」と、改めて称賛した。二人の店主の想いは同じ、「東海エリアのすべてのラーメンの魅力を多くの方に知ってもらいたい」。東海を盛り上げるために、次に繋がる最高の6日間だった。

宮崎店主(右)も見守る中、連日大盛況で出店を終えた。「今は感謝の気持ちで一杯です」と堀店主(左)

​らーめん鉢ノ葦葉
三重県四日市市城北町1-12 ル・グラン 1F
11時~15時
月曜休(祝日の場合翌平日休)

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/8noashihanoodle)をご確認ください。

ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/

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