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ラーメンWalker発!「未来を輝かせるラーメンストーリーズ」第31話

東海の殿堂入り店に称賛の嵐! 人との繋がりを大切にした味づくりで、食べた人が幸せになる最高の1週間

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 ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。2022年10月19日~24日は、「東海の殿堂入り店」を味わい尽くす 第1弾! 2017、2018年に愛知総合連覇で殿堂入りした、名古屋の『らぁ麺 紫陽花』が初出店した。もともとラーメンフリークだった店主の戸谷真佐男さんは、『らーめん鉢ノ葦葉』など名店で修業を積み独立。今回、東海を代表する店として、師匠の『らーめん鉢ノ葦葉』堀店主からの推薦だ。師匠への感謝、お客さんへの感謝、自身の想いをラーメンにのせて伝えきった6日間の全貌と、ラーメン店主として一番大切なことを伺った。

『らぁ麺 紫陽花』店主・戸谷真佐男さん

魅力あふれるラーメン店主たちから受け継いだ“ラーメン道”

 戸谷真佐男さんがラーメンを好きになったきっかけは、弟に「美味しいラーメン屋さんがあるよ」と教えられて食べにいったこと。「そのラーメン屋の店主さんの人柄に惚れて通うようになり、他にもいろんなラーメン屋さんを食べ歩くようになったんです。当時、年間800杯ほど食べていて、ふらっと新潟行こうかなとか、今日は時間があるから長野に日帰りで行ってこようとか、ラーメンのためだけに時間を作ってあちこち行ってましたね」と戸谷さん。

 食べ歩くうちにラーメンにどんどん興味が湧いて、「僕が作ったらどうなるのかな」と、鶏ガラを買ってきてスープを作り、パスタマシーンで麺を打って、テボも用意して麺上げをして、自作ラーメンを作り始めた。出来上がったラーメンを自分で食べても面白くないからと、家族や友達に食べてもらっているうちに「美味しいね。また作ってよ」という反応が返ってくるようになった。「純粋に嬉しくて、ラーメンを作りたい、ラーメン屋をやりたいなと思ったんです」。戸谷さんは、すぐに仕事を辞めて、愛知県から東京へ向かった。

 目指したのは、自作ラーメンを作っていた頃からの憧れの人、有名な自作ラーメンマニア山口裕史さん(現『らぁ麺やまぐち』店主)が店長として創業した店『麺創研かなで』。「山口さんには、技術を教わっただけじゃなく、人生観もお酒を交わしながらお話ししてくれたり、厳しい修業にも相談にのっていただいたり、すごく人思いの方でした」と修業時代を語る。

尊敬する師匠の山口店主と戸谷さん

 それから2年経ち、『らぁ麺 やまぐち』開業で山口さんが独立した後も、師匠が立ちあげた店で計3年半勤めあげた戸谷さん。そこに、四日市『らーめん鉢ノ葦葉』の堀店主から「辞めるなら、うちで働かないか」と声がかかる。店を辞めて独立しようと思っていた戸谷さんだが、二つ返事ですぐに四日市に引っ越した。

 2人目の師匠、堀店主からは「お前は美味しいラーメンを作るに決まってるんだから」と言われ、「技術よりも礼儀とか、人に対して誠実に、迷惑をかけないといった当たり前のことを厳しく教わりました」と戸谷さん。

第2の師匠『らーめん鉢ノ葦葉』堀店主からは、人として大事なことを学んだ

 『らーめん鉢ノ葦葉』で1年半の修業を終え、その後、名古屋『つけ麺丸和』でも接客を学ぶなど約半年お世話になり、2015年に念願の『らぁ麺 紫陽花』を開業した。店の場所は、戸谷さんが前職で介護士として働いていたところから近かった。不思議な縁を感じ、「ここでやれば将来うまくいくんじゃないかなと、漠然としたイメージが湧いてきた」という。

『らぁ麺 紫陽花』。初期投資が必要だったがスケルトン状態から作り上げた店

 ラーメン屋になりたいと思った時から、作りたいラーメンがあった。それは「鶏をベースにした生醤油を使った醤油ラーメン」だ。また、看板ラーメンとは別に、煮干しラーメンや担々麺、つけ麺など、全部醤油で味を作ることも最初から決めていた。思い続けていたその味で、店はオープンから評判を呼んだ。しかし、戸谷さんは「毎日、何十人とお客様が並ばれて嬉しい反面、それは自分の実力じゃなかった。お客様に自信を持ってラーメンを出せるメンタルもなく、辛い気持ちの方が勝ってました。どうしたら、もっとお客さんに美味しいって言ってもらえるんだろう。そればっかり考えてましたね」と、当時の辛い状況を吐露した。

 実は、開業前に師匠の堀店主と仲たがいをしていた戸谷さん。「僕が原因を作ってしまったんですけど、鉢ノ葦葉の大将をがっかりさせてしまって連絡も一切つかなくなった。相談する人もいなくて、どうしようかと思いながらの1年間でした。それが、1周年の時に大将が大きなバラの花束を贈ってくれたんです」。すぐに連絡すると、堀店主は「あの時は俺も大人げなかった。お前はよく頑張ってきたから、もう本物だな。これから一緒に頑張ろう」と言葉をかけてくれた。師匠が自分のことを1年見ていてくれ、認めてくれたことで、戸谷さんの気持ちが切り替わった。

 たくさんのラーメン店や生産者との繋がりが深くなるにつれ、出会った人たちの人生も自分の人生に繋がっていることに気づいた。「自分が幸せになるだけじゃダメだ。その人たちが幸せにならないと、僕たちはラーメンをやっている意味がない。有名な醤油、有名な地鶏、有名な豚を使って…それを出すだけでは意味がないと思ったんです」。それが2021年9月の大きなリニューアルに繋がった。

東海殿堂入り店が、人との繋がりを大切に創り上げたリニューアルの味

 「東海の殿堂入り店」を味わい尽くす 第1弾には、リニューアル後のラーメンを持ってきた。「醤油蔵、鹿児島の黒豚業者、黒薩摩鶏業者、ラーメン屋さんが紹介してくださったお店との出会い、たくさんの人たちとの繋がり、縁を大切にしたい。それがリニューアルの理由です」と戸谷さん。

 リニューアル後、どのように変わったのか。寸胴の中から見ていくと、霧島高原ロイヤルポークのウデ肉とバラ肉と、鹿児島地鶏「黒王」と三重の「熊野地鶏」の2種の丸鶏。その豚と鶏に昆布を加えた3種類だけと、シンプルな構成だ。

霧島高原ロイヤルポークと2種の丸鶏、昆布を加えて、旨味を濃縮したスープ

豚・鶏出汁も醤油ダレも、どちらも深い味わいで、スープと麺だけで十分なほど旨味あふれる「醤油らぁ麺」

 醤油ダレは、湯浅醤油をメインに5種類をブレンドしている。寝かさないで醤油の風味を生かし、その薫りと深み、濃密な出汁の旨味が楽しめる仕上がり。

特製には味玉や自家製ワンタン、柚子胡椒焼きチャーシューなどが追加。食べ進むごとに肉の旨味が増す

 白醤油らぁ麺には、醤油と同じ鶏豚スープに瀬戸内と千葉の煮干や本枯れ鰹節の魚介出汁を重ねて、より深い出汁に小麦由来の白醤油がバランスよくまとめる。醤油とはまた違った味わいだ。

鶏と豚スープに魚介出汁を合わせ、白醤油で味を整えた「白醤油らぁ麺」

 本店では自家製麺だが、今回の出店のため、北海道No1の名店『Japanese Ramen Noodle Lab Q』の平岡寛視店主にコラボをお願いした。平岡店主とは、戸谷さんが開業2年目に名古屋の催事で知り合い、その後、北海道の食材視察に誘っていただくなどお世話になっている。その繋がりから、平岡店主がプロデュースする『Nippon Ramen 凛 KYOTO』とのSPコラボ麺が実現した。

『Nippon Ramen 凛 KYOTO』から毎日届く自家製麺

醤油は平打細麺、白醤油は丸刃の細麺。それぞれ食べ比べるため毎日通う人が多かった

一番大切なのは、たくさんの人に幸せになってもらえる店づくり

 コラボ麺を麺上げする戸谷さんを見ていると、以前はテボでスウィングするような豪快な湯切りだったが、平ざるでゆるやかな湯切りに変わっていた。理由を伺うと「一番の問題点は腱鞘炎がひどいんです。月1回必ず病院に行って注射を打ってたんですが、手首だけじゃなく膝もやられたんですね。このままだとラーメン人生が終わっちゃうなと。それで平ざるに変えました。これまでのテボの湯切りと比べながら、テボで持って放置、平ザルで置いて放置、テボで1回振る、平ザルで1回叩く、それぞれ何秒で何cc湯が落ちるか計算して。それを結構やりましたね」と、ただ変えるだけでなく細かな調整も伺えた。

以前はダイナミックなテボでの湯切りだったが、腱鞘炎と膝痛で病院通いに

今はテボから平ざるに移し、お湯の切れ方を計算しつくした身体にやさしい湯切りに変更

 チャーシューの美味しさと、種類の豊富さにも感動の声が上がっていた。「毎日12種類くらい、希少部位の牛肉のカメノコだったり、炊きあがったばかりの熱々のバラ肉を切り出したり、日によって違う部位も作るようにしました。柔らかくて美味しいだけじゃなくて、知らないものを食べる楽しさを感じていただきたかったから」。特にチャーシューの盛り合わせは、店主自らお客さんへサーブし、部位の説明を丁寧にされていた。「食材や自分の作っているものは、何を聞かれてもお客様に詳しくわかりやすく説明できるよう常に心がけています」。お肉を説明するシェフの言葉に喜ばれるお客さんを見ると、同じ空間でラーメンを食べる人も皆温かい気持ちになる。

霧島高原ロイヤルポークの全て異なる部位を堪能できるチャーシュー盛り合わせ

 スープもチャーシューも、すべてを手間暇かけて作り上げる中で、出店後半にはさらに追加であっさり「煮干らぁ麺」、ビターな「濃煮干らぁ麺」の2種類が日替わりで限定提供された。

10月23日限定の「濃煮干らぁ麺」。雑味を抑え、濃厚ながら出汁の旨味あふれる仕上がり

 連日、たくさんの方が訪れ、今までにない大盛況で終えた6日間。素晴らしい偉業を成し遂げた戸谷店主だが、出店当初は「一生懸命作らせてもらってますが、自分の作ってるものに対して、自信を持っていない」と語っていた。

「お客様が食べている笑顔とか、ご馳走様、美味しかったと言ってくださったり、一緒に働いてくれている皆さんも連携してお店を切り盛りする、そういうライブ感がすごく刺激的でした。今まで、コロナ禍でモヤモヤしていたこと、どうやったらお客様に喜んでもらえるだろうとか考えていたのが、これでいいんだと気づかせてくれましたね」

毎日の膨大な仕込みを、一つひとつ丁寧にこなしていく戸谷店主

 日々の仕込みを黙々とこなしながら、ネガティブな自分の気持ちがどんどん上がってきたと感じるという戸谷さん。「東京に引っ越した常連さんが5年ぶりに来てくれて、人の繋がりをすごく感じました。コラボ麺をお願いした平岡さんにも、恐れ多いと思いながら自分からお声がけできて、自分自身も変わってきたと思います。ここでラーメンを作れること自体が特別なことですが、鉢ノ葦葉の師匠が僕を紹介してくれたから、今回出店することができたんです。たくさんの人との繋がりのおかげでここまで来てるんだとすごく感じます。この特別な体験を次に繋げていければ最高ですね」。

 一番大事なことは「ラーメンを美味しく作ることよりも、たくさんのお客様に幸せになってもらえるような店を作ること」。さらに一歩先に進んだ戸谷店主が、次に出店する師匠の最高の1週間に繋げてくれた。

最終日までの6日間、全力を出し切った戸谷店主の笑顔

​らぁ麺 紫陽花
愛知県名古屋市中川区八剱町4-20-1 コーポ源 1F
水・木・日11時~15時
金・土11時~15時/18時~売り切れ閉店
月・火曜休・他不定休あり

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/ramen_ajisai)をご確認ください。

ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/

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