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【Interview】ポーランド・ワルシャワ発、日本人店主が手掛けるヴィーガンラーメン店『Uki Green』のいまと今後の展望≪前編≫

2019年09月02日 20:00更新

某日。We Love Ramenキャンペーン協力店のポーランド・ワルシャワにあるヴィーガンラーメン店『Uki Green』の八木さんが一時帰国されるということを知り、インタビューをさせていただきました。研究者として渡ったポーランドでラーメン店を開いた理由や日本とポーランドの食文化の違い、ヴィーガンラーメンへの想いについてたっぷりうかがいました。



――あらためましてキャンペーンへのご協力ありがとうございます。お会いできてうれしいです! 帰国されるとどれくらい日本に滞在されるんですか?

 だいたい1週間ほど滞在していますね。毎回、時間が限られており、とにかく行ける限りラーメン店に行きたいので、事前に気になるお店や食べたい限定麺の情報を調べて行って、そこでタイミングがあえば、店長さんと直接お話して、いろいろと聞いたりしています。今日は大和製麺所へ行ってきて、試したかった小麦で麺を試作して食べ比べをしてきました。

――帰国中はどれくらいラーメンを召し上がるんですか?

 前回の滞在では、1週間で32杯食べ歩きました(笑)。ポーランドでは気軽に情報交換ができる環境もなく、ひとりでラーメンを作っているので。交流できる日本の店主さんたちがうらやましいですよ。

――もともと八木さんは研究者をなさっていて、仕事の関係でポーランドに渡られたそうで。ポーランドにはラーメン店は結構あるんでしょうか。

 ポーランドのポズナンという町に初めて出来たラーメン店があるんですが、初めて食べたときに正直日本人の私からしたら“これがラーメン?”と思うような、少し違った感想だったんです。けれど、現地の方にとっては「ラーメン=初めて食べたあのお店の味」だったので、そこの町で日本式のラーメンを作って食べてもらっても“3年間慣れ親しんだあっちのほうがラーメンだ”と言われることもあったりします。でも結果的に、食べた人が美味しいと思えればいいんですよね。それでいい、これは、ラーメンじゃないと言ってるとラーメン文化が発展していかないとも思っています。

――カリフォルニアロールのように、日本では馴染みがなかったけれど外国発信で支持をされていってスタンダードになっていくものもありますもんね。

 そうなんです。だけど、やはり僕は日本人なので、自分が好きな“日本のラーメン”を追求していきたいし、僕らが感じているような味を感じてほしいし、食べてもらいたい。

――たしかに日本のベーシックな味が伝わってほしい気持ちもあります!

 この間、ポーランドの南のちいさな街で豚骨ラーメンを食べたんです。そこはイギリスでラーメンを習った人がやっているお店で、ドロッとしてちょっと臭みのある豚骨だったんですが、ちょっと麺がスープに合ってないけど熊本豚骨っぽい豚骨らしさがあって“僕にとっては最高だよ!”とSNSに書いたら、それを見た現地の友人が“Koheiがそう言うなら!”と実際に行ってみたそうなんですよ。そうしたら“あれ……?”っと(苦笑)、僕は日本で慣れ親しんだ豚骨を知っていたから好きだけど、それがないポーランド人にとったら“くさい”と。

――強烈だったんでしょうね(苦笑)。自分が美味しいと思ったものが、必ずしも受け入れられるとは限らないのは、少し残念な気もしますが育った環境や慣れ親しんだ味は違いますからね。

 最近ワルシャワでラーメン店を開いたフレンチ出身のポーランド人店主が作ったオリジナルのラーメンを試食すると、選んだ食材や調理に用いる技法が日本人では思いつかないようなアイデアもあったりして驚くこともありますよ! 固定観念のない彼らこそが新しいこれからのラーメンの世界を切り開いてくれるものだと思っています。



八木晧平さん。今年立ち上げた試作室『Kitchen R Labo』にて、ラーメンに向き合い日々研究を重ねている。

――八木さんは、最初にワルシャワに渡ったとき研究者をされていたんですよね。どうしてラーメンの道に?

 ポーランドに来た理由は、ある植物のゲノム解析プロジェクトのメンバーとして参加するためでした。実は、博士号も取らせていただきまして、いまでも少し論文を書いたり、遺伝学の研究もしているのですが、大半はラーメンのことばっかり考えていますね。小さい頃からラーメンが好きで、学生時代は先輩や後輩とラーメン好きのグループを作りラーメン店巡りや遠征もしていました。雑誌を開いて行ったお店のリストを塗りつぶしていったりしながら、いわゆるラヲタというやつです。日本にいたときも自作ラーメンも作っていたんですが、そんなラーメン好きがラーメンの全くない国に来てしまい、ラーメンを好きなときに食べれない。この苦しみがわかりますか?(笑)食べたいと思ったときから食べるまでにタレを寝かせて、スープや麺を準備して、1週間はかかりますからね。そして、あまりレパートリーがない。最初のころは日本で作っていたのと同じように作ってもうまくいかなく、なぜだろうと。なので、一つ一つの材料をきちんと知ることから始まりました。本腰を入れ始めたのは7~8年前ぐらいで、本格的に仕事として活動が多くなったのが、6年ぐらい前です。

――6年前! それは何かあったんですか?

 いまのビジネスパートナーの松木さんから、「今度UKIUKIという、うどん屋さんを開く予定なのですが、そこでラーメンも提供したいので、手伝ってくれませんか?」とお話しをいただき、コンサルという形でお店の商品開発を任され、お客さんに出すのであればとさらに熱が入りました。ラーメン作りだけでなく、マーケティングや顧客心理を知るため、心理学やビジネスの勉強をしました。美味しい、また来たいと思うのは、味も大事ですが雰囲気やサービスの要因もとても大きいと思っていますので、どうやったら、お客に喜んでもらえるんだろう、どんなお店にもう一度来たいか、国は違いますが、ベースの心理は同じだと思っています。ラーメン作りのほうは、いまでも日本に帰国の際、ラーメン学校や塾、道場など勉強できる場にはできるだけ参加して、いろんな見方や知識を得ています。修行ゼロですが、できることならば日本のラーメン店で働いてみたいです。短期で学べる場所は、ラーメン作りの基礎だけで、実際のオペレーションや細かいコツは学べませんので、ここはどうやっているんだろうって疑問がいまだに多々あります。帰ってきてひとりのときは、こちらの材料で作ってみて、日本の材料との違いをみたり、実際に自分で試して確認、各種類のラーメンレシピの塩分や油分、酸味や甘みなど数値化して比較したり平均化したり、成分量を分析したり、研究ですよね。結局、対象が違うだけでやってることは、自分にとって同じなんです。日本のラーメン店さんも競争率の高いなか、切磋琢磨しながら、それぞれ研究されている研究者、探求者じゃないですか。自分の場合は、その切り口がちょっと理系よりなだけだと思います。


店舗情報:Uki Green

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