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【Interview】ポーランド・ワルシャワ発、日本人店主が手掛けるヴィーガンラーメン店『Uki Green』のいまと今後の展望≪前編≫

2019年09月02日 20:00更新

――当時の同僚の方やご友人は、驚かれたんじゃないですか?

 ラーメン好きだったのを知っている方が多いので、SNSなどでも応援してくれています。協力してくれる方も多くて、本当にありがたいです。日本の家族には、何しにポーランドに行ったの?と言われますけど(笑)。

――研究者というキャリアも珍しいですが、日本ではなく海外で初出店というのも挑戦ですから。新しいラーメンが生まれていきそうですね! Uki Greenの大きな特色は、全種ヴィーガンラーメンという点だと思うのですがポーランドのヴィーガン人口は高いんでしょうか?

 ポーランドはいま、ヨーロッパのなかでドイツと並び一番ヴィーガン人口が多い国ですね。近年ではヴィーガンメニューを扱っていないと、ネットの口コミやレビューが低評価になったりするのでどのレストランでもヴィーガンメニューをもっているのが当たり前になっています。ラーメン店もしかりです。ですが、実際にヴィーガンのみを扱っているUki Greenでは全体の7割くらいは普通のお客さんで残りの3割くらいがベジタリアンやヴィーガンの方なんです。なので、ヴィーガン料理は、ヴィーガンの人のためだけの料理でなく、普段肉を食べる方がヘルシー志向で食べにくるという方が多いと思います。僕自身ヴィーガンではないですし、決してヴィーガン人口のほうが多いわけではないですよ。ただ“今夜はベジにしよう”とか、気軽に選べる感覚ですね。



升に盛り付けた新鮮な野菜を自分好みでどんぶりにトッピング。また、味変のためのラーメンドレッシング(ラードレ)を忍ばせている。

――日本では浸透していない文化ですね。それにしてもポーランドで“日本のラーメンの味”をヴィーガンで追求していくってハードルが高い……!

 “食感”と“香り”は非常に大事だと思います。香りが味の8割を決めるとも言われていて、日本だったら精進料理“もどき料理”があるじゃないですか。香りと食感が近ければ、脳が錯覚を起こすこともあるようです。そういうのをヒントにしてみたり、旨み成分の特性を徹底的に研究・分析しています。どれくらい加熱すれば旨みを引き出せるだろう? とか、基本、僕は研究者なので、醤油にしても塩にしても自分の使うもの、気になったものは、なるべく現地に足を運んだりして、徹底的に調べ上げます。読んだり、聞いたりももちろんですが、実際に味わって、データにして自分の中に落とし込みます。最近も日本のシェフの方から「八木さんは、まず全部調べるところから始まるんですね」と笑われました。 

――ラーメンWalkerも買い揃えていただいているそうで! ありがとうございます。

 ラーメンWalkerも毎回北から南まですべて買い揃えています。それこそ、いろんな新しいラーメンがあって、でも実際、本からは味や香りはわからないじゃないですか。なので、知りたい病を抑えるのは大変です。日本に帰ったときにラーメン店に行って、どういうふうに作るのか、キッチンの中をものすごい熱量で見ています。情報は、ラーメンWalkerさんもそうですが、学術論文を読んだりして、どういうものからどんな量の旨みが取れるかも調べたりしています。最近、たくさん読んでいる論文や本はフレーバーに関するものです。 バーテンダーは香りのプロなので、バーテンダーと仲良くなってアドバイスをもらうこともあります。とにかく情報が本当に欲しい。なので毎回、日本への滞在時間はとても貴重な直接味わえて感じることのできる時間でたくさんの店を回ってしまうのです。 そうして、得た経験、情報は、いつもまとめて、ラーメン作りに生かしています。僕のラーメン作りは、いつも頭の中で始まります。この材料をメインに持ってきて、お客さんに食べている間、前味、中味、後味とどう感じてほしいかという風に方向性を決めて、その材料にあった旨味の抽出方法、温度、時間を選びます。もちろん、そのあとトライ&エラーはありますが、だいたい想像した味を作ることができるようになってきました。

――計算しつくされてますね! 食べてみたいです。

 みんなに「これベジ?」って必ず言われます。今回もこちらでポーランドから持ってきた日本食材と日本で購入した野菜を使っていまのレシピを合わせながら作ったんですが「これベジなんですか?」って言われました(笑)。僕自身は、まだベジに関して十分に知識がないので、それこそ麺屋武蔵さんが期間限定でベジのコラボをされてますよね? 僕も庄司いずみ先生※1に実際に会っていろいろとお話ししてみたいのですが、いまだ叶わず。なので、代わりに日本にいる友達にスクールに行ってもらって話しを聞いたりしています。麺屋武蔵さんのVegan塩ラーメン※2も特に香りの使い方とか、僕らが知っているの“塩ラーメンの香り”を出している。あの香りをどうやって出すんだろうなって、そして、あの味の深み、いやぁすごいです。(取材・文 大島あゆみ)

※1:庄司いずみ先生=野菜料理家。麺屋武蔵とコラボ商品を考案。

※2:麺屋武蔵のVegan塩ラーメン=2019年7月から提供店舗が新宿総本店から六本木店に変更となった。


インタビュー≪前編≫はここまで。来週、食材へのこだわりや将来の展開イメージを語っていただいた≪後編≫をお届けします。

▼Uki Green

ポーランド・ワルシャワに2019年4月にオープンしたヴィーガンラーメン専門店。八木晧平さんは、研究者の経験を生かし、ヨーロッパでいちばんヴィーガン(完全菜食)人口の高いポーランドで、ヴィーガンであっても日本人が愛するラーメンを提供すべく科学的な切り口でラーメン作りを追求している。八木さんは、ビジネスパートナーである松木 平氏が経営するうどん屋『UKIUKI』を始め、『MIKOYA』、『YATTA ramen』、『vegan ramen shop』などポーランド国内で展開する店舗のメニューを考案。2019年『Kitchen R Labo』を立ち上げ、ポーランドから日本のラーメン、食文化を発信中。


店舗情報:Uki Green

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