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【Interview】日本人が営むポーランドのヴィーガンラーメン店『Uki Green』、現地食材で作る一杯へのこだわりと開店までの道のり≪後編≫

2019年09月11日 18:00更新

We Love Ramenキャンペーン協力店のポーランド・ワルシャワにあるヴィーガンラーメン店『Uki Green』の八木さんにインタビューをさせていただきました。後編では、現地食材を使ってのラーメン作りや開店までのエピソード、現地スタッフさんへの思い、そして八木さん目線での日本のヴィーガンラーメン事情の印象についてお聞きしました。

《前編はコチラ》

【Interview】ポーランド・ワルシャワ発、日本人店主が手掛けるヴィーガンラーメン店『Uki Green』のいまと今後の展望≪前編≫

https://ramen.walkerplus.com/news/entry-6841.html



――(前編で)今日は小麦の食べ比べをされてきたということですが、ヨーロッパのほうが小麦は豊富なイメージがありますが。
 ポーランドで購入できる小麦ってパン用の小麦なんです。実際に20種類ぐらい使ってみて比べたり調べてみると、おそらくヨーロッパと日本での小麦の製粉方法や小麦粉にするまでの過程が違うようです。向こうの粉を使うと小麦の外側部分も入っていて、酵素の働きが強くて熟成がすごく早い。日本にサンプルを送って調べたのですが、すべての小麦粉の粘り気を示す数値がとても低い。パン文化と麺文化の違いなんだなと感じました。日本の自家製麺のラーメン店でも“小麦粉のロットナンバーが変わるときは注意が必要”と言われていますが、こちらでは注意どころか全くの別ものが届きます。問い合わせて“なぜ中身をすり替えたんだ!”と言っても業者さんは、“同じものだ”と言い張りますし。そうそう考えると日本の製粉会社の技術は素晴らしいと思います。ポーランドはライ麦が有名なので、将来的に麺にライ麦も混ぜていきたいなとも思ってるんですよね。
――食材そのものは同じでも、産地や製造過程の違いから日本と同じ味には再現ができないんですね。
 まず、水から違いますね。そこで、国内にあるいろんな水を買い集めてきてすべて硬度を調べました(笑)。そしたら、すべて硬水でした。やっぱり硬度が高いんですよね。いまは硬水を浄水器にかけて軟水にして、さらにフィルターをかけています。食材も、例えば同じ鶏であってもこっちでは香りや味が違うので、日本とはまた違う鶏白湯ができますよ。



※平ざるを操っているのは、キッチンリーダーのクリスティーナさん。

――同じレシピでも出来上がったら別ものですね。調理料などもたくさん試されて……?
 醤油もいろんな種類を試しましたし、塩もヨーロッパの塩をたくさん集めたり……そうしたらうちの奥さんが嫌がって嫌がって(笑)。醤油と塩が30種類以上、家にあるんですよ。それは嫌でしょう。でも、そのおかげか塩の卸業の方と仲が良くなりまして、もっといろんな塩を試すことができるようになりました。この間、頼まれて日本の塩を取り寄せました。もちろん、いまは醤油も塩もすべて試作室(Kitchen R Labo)に移動したので、奥さんは大喜びです。
――家が塩だらけ(笑)知らなかったらちょっとあやしげです。山椒などの一部、使っている野菜も現地の農家さんにお願いしているそうで。
 はい。すべてではないですが、現地の農家の方に頼んで栽培してもらっています。いまポーランドにわさび畑をやっている人がいるんですよ。ヨーロッパではいま2か所あり、そのうちの一つです。今度一緒にコラボをしようということで、わさびを使った限定麺を作ります。もう試作品は出来ているんですが、トッピングに茎わさびを添えて、そこでワサビの香りを楽しんでもらえるラーメンにしようと思ってます。
――さっぱりしていそうですね。現地の方は、わさびの辛さは大丈夫なんでしょうか?
 ポーランドにも首都ワルシャワだけでも、300店舗以上の寿司屋がありますし、最近は、にぎり寿司の“おまかせ”が流行しているようで生わさびは人気ですよ。それに日本でも練りわさびに使われている西洋わさびはポーランドの特産でもあるんですよ。




――そうなんですね。それにしてもUki Greenのヴィーガンラーメン、どれも色鮮やかできれい!
 野菜は升に入れて麺の上にトッピングできるようにしています。ですが、いつも作りながら思っているんですが“いくらベジで、無化調でも美味しくなければ意味がない”なと。何か面白いラーメンできないですかね? ベジ二郎とかやってみたいですね。ベジ郎!
――ベジ二郎! スープから野菜マシマシですね! そしてすっごくヘルシー(笑)。Uki Greenオープンまで、大変だったことはありますか?
 いえ、楽しかったです! 朝から晩までにやにやしながら、ずーっと迷走していましたね。まずは醤油にこだわりたいと思って、動物系だったらいろいろと入れられるけどベジではそれは難しい。清湯系よりもとろみのある白湯系のスープのほうがヨーロッパではなじみがあるので、それは決めて、2年ぐらいいろいろと試作しましたねー。醤油は最終的に、山椒オイルとトリュフオイルをちょっとまぜたもので香り付けして落ち着いたのですが、塩は塩で、また迷走して(笑)。きちんと原価計算をして、スタッフトレーニングのプログラムを作って……。僕らのビジョンをどう伝えようかって話し合い、マネージャーに伝えて……今回は、開店予定日から実際の開店までに10か月はかかりましたね。工事による遅れでしたが、伸びた分、味の改良がさらに進みましたよ。これまでポーランドで十数店舗の立ち上げを手伝ったり見てきましたが、予定日から実際の開店までは、半年から1年程度は大抵遅れます。理由はさまざま。建物の所有者との問題であったり、工事の遅れ、許可の遅れ、業者が来ないなど。日本では当たり前のようなことがそうではないことが多々あります。



 予定は組みますが時間通り、予定通りに進むことはまずありません。ポーランドの場合、家賃は最初の3か月は工事期間として払わなくてもいいのですが、その後は発生するので資金は日本より確実にかかります。最後のタイミングで開店できると思ってスタッフを雇い、トレーニングしてもまた思わぬところで開店できないなんてことも。トレーニングしたスタッフに逃げられないように待ってもらう分、賃金を支払うなんてことも多々見てきましたし、僕も自分のお店の開店のときにしましたよ。最悪、1年はオープンできないかもというのを想定して資金を用意されるといいかと思いますね。



ヴィーガン冷やし中華。ごまペーストをあえた麺に、コメ酢とりんご酢、レモン汁を混ぜた自家製のヴィーガンマヨネーズを添えて。

――先ほどのわさびラーメンも気になりますが、すでに限定麺も出されていますよね。
 4月は春ラーメン、5月はタコスまぜそばを出しました。ポーランドでは“まぜそば”っていうスープのないラーメンになじみがないこともあってか、お客さんからの反応はあまりよくなかったですね(苦笑)。次に出した白アスパラスープとスピルリナ※1を練り込んだ限定冷やしラーメンは好評で、すぐに売り切れました。いまだにまたやってくれと言われます。あと、ロイヤルカスタマー向けに2か月に1回入れ替わる裏メニューも常に4種類ほど出しています。

※1:スピルリナ=アミノ酸が豊富でたんぱく質やビタミン、ミネラルなどを含んだ健康食品として知られる食用の藻類。



厨房でスタッフの皆さんにレクチャーする八木さん。

――スピルリナが好評とは、やはり健康志向ですね。現地で取材とか受けることはありますか?
 まだないです。けど僕、レストランの顔としてあまり出たくないんですよ。僕がラーメンを考案していますが、毎日頑張っているのはスタッフですから。“
これを作っている子がすごいんですよ”って伝えてあげたい。本当に感謝しています。僕がこういう思いで作ったとか、細かなオペレーションの受け取り方が違うこともありますけど、いまこういう立場になって、協力してくれる方がいて本当に嬉しい。それこそ一緒にやっているビジネスパートナー(松木 平氏)ともよく話すんですが、一緒に働く人たちをハッピーにしたい。やっぱり働いている人をハッピーにして、その人の希望をかなえてあげられる環境を整えるのがいちばんいいかなと。まずスタッフがハッピーにならないとお客さんもハッピーにできないじゃないですか。なので、スタッフとも、これから何をしていきたいかや将来の夢に向けて手伝えないかなども聞くようにしています。
――スタッフさんへのオペレーションで気を付けていることはありますか?
 ヴィーガンラーメンは繊細なので、かん水の溶け込んだゆで汁をなるべく入れたくないんですよ。なのでお湯をきちんと切るために平ざるを使っています。水ちゃんと替えてる?とか気を付けるようにしています。



Uki Greenの皆さん。左から2番目の男性は、八木さんのビジネスパートナーであり店主の松木 平さん。マネージャーは、マクダさんが務めている(右から3番目)。

――八木さんから見て、日本のヴィーガンラーメンは増えている印象ありますか?
 増えましたよー! びっくりしました。1年で25店舗くらい? もっと増えたかも? 美味いところもあればそうでもないところも(苦笑)。東京都内のヴィーガンラーメンはとりあえず全部食べたと思います。もちろん爆発的には増えてはいないですが、日本のラーメン店主は皆さん考えているんじゃないですかね? 外国人は絶対にベジタリアンやヴィーガンが多いと思うので。ただ、日本は野菜が高いですよね。ポーランドと同じことを日本の野菜でやろうと考えるとちょっと……。けど、やっぱり東京ってすごいんですよ、食のレベルが。ポーランド人でも言いますよ。世界で一番美味しいイタリアンを食べられる場所はどこ? って聞くと日本って言いますもん。
――そこまで日本が美食の国って認識があるとは……。話は変わりますが、日本のラーメンはひとりでサクッと食べに行ける文化でもありますが、ポーランドもひとりでいらっしゃる方はいますか?
 いますよ。気に入って週に何回も足を運んでくださる常連の女性もいたり、もちろん団体さんもいらっしゃいます。最近、アルコール販売が出来るようになったのでヴィーガンビールなどもメニューに加わったので、今後お酒を楽しむ方も増えたらいいなと思ってます。
――客層も幅広くなっていきそうですね。将来の展開についてイメージはありますか?
 いろんなラーメンをやりたいですね。最終的には儲からなくてもいいし、本当に美味しいと思えるものを作りたい。カウンターだけの小さいお店も。Uki Greenはオープンして3か月くらいですが、まだ納得いっていないんです。麺も小麦を変えて、半年後にはもっと美味くなりますよ。そして、ありがたいことに、すでに他のヨーロッパの国に出店する話が持ち上がっています。お隣のヴィーガン大国に少し足をのばして、より多くの方に味わってほしいですね。



――ポーランドに戻られたら、また研究の日々ですね。
 僕は趣味なんですよ、仕事をしている感覚がないんです(笑)。なので、四六時中すべてのことをラーメンにつなげて考えてしまう。好きじゃないとやらないじゃないですか、楽しくないと! それにすごくありがたいのが、周りに理解して助けてくださる方がいるので。それはすごくありがたいです。
――ラーメン愛が伝わってきますし、楽しそうです。いま欲しいものとかはありますか?
 いまは自分のコピーが欲しいですね(笑)。僕がお店の味を決めても定期的にチェックしないと、次第にブレていってしまったりするので。味も進化しなければいけません。3年以内にそんな存在を見つけて分担をしたりしながら、いろんなことに挑戦していきたいです。
――いつかポーランドに食べに行ってみたいです。新作情報など、ぜひ教えてください。
 はい、喜んで!

(取材・文)大島あゆみ



▼Uki Green

ポーランド・ワルシャワに2019年4月にオープンしたヴィーガンラーメン専門店。八木晧平さんは、研究者の経験を生かし、ヨーロッパでいちばんヴィーガン(完全菜食)人口の高いポーランドで、ヴィーガンであっても日本人が愛するラーメンを提供すべく科学的な切り口でラーメン作りを追求している。八木さんは、ビジネスパートナーである松木 平氏が経営するうどん屋『UKIUKI』を始め、『MIKOYA』、『YATTA ramen』、『vegan ramen shop』などポーランド国内で展開する店舗のメニューを考案。2019年『Kitchen R Labo』を立ち上げ、ポーランドから日本のラーメン、食文化を発信中。


店舗情報:Uki Green

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