さまざまな修業からたどり着いた「なるべく体に悪くない」ラーメンのこだわりとは? 4代目 松屋食堂(千葉県・船橋市)【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第8回

2020年08月03日 18時00分更新

 その名の通り、ここは4代続く店。

 曾祖父の頃、昭和6年創業から祖父、父と代が移り、4代目の松谷卓氏が引き継いだのが2017年11月25日。先代の町中華的な雰囲気から一転、フルリニューアルしてこだわりの無化調ラーメン店に。コンセプトは「なるべく体に悪くない」という松谷店主のラーメンを初めて食べたとき、驚いた。

「これは、あの名店の味では……」

 どうしても真相を確かめたくなり、取材をお願いすることにした。

「初代はラーメン、2代目の祖父の時に中華ありきの冬はおでん、夏は焼きそばというような食堂になって、3代目の親父が継いで町中華になったみたいですね。もともとは栄えた町で、中山競馬場に行く人や、工場地帯から仕事帰りに寄るお客さんで賑わっていたんですけど、武蔵野線ができて工場が全部撤退してマンションが建って、今は反対側の南口のほうが栄えてます。こっちの北口のほうが商店街で、店前は参道なんですよ。すぐそこに千葉県で二番目に大きな中山法華経寺があるんです。昔は競馬場や仕事帰りの男性客がメインだったけど、今は参拝帰りの女性のお客さんも結構多いですね」

―4代目になって、ラーメン専門店にリニューアルしたんですね。

「最後の頃は、親父も常連さんも年をとって、いつも同じおじいちゃんが飲んでるような、一見さんが入りづらい店だったんで。それも変えたくてフルリニューアルさせてもらったんです」

カウンターとテーブル席2セットの店内は、現在コロナ対策仕様

―びっくりしたのが「魚介しおらぁめん」。スープを一口飲んだら、埼玉の「こしがや」の塩ラーメンに似てる! と思って。もしや佐野実さんの「支那そばや」系の店で修業したとか。

「魚介しおらぁめん」。有機ほうれん草に麩、生胡椒がピリッとした刺激に

「いや全然その系列では修業してなくて。もともと別の飲食店、ピザーラで13年ぐらい勤めてたんですよ。長いこといたんでエリアマネージャーまでやらせてもらってて、ここを継ぐ気もなかったんですね。親父も継がなくていいって言ってたんですけど、僕が30歳の時に親父も年をとって弱気になって『やっぱり継いで欲しい』っていうことになって。ちょうど雇われでやるより自分でやったほうが面白いなって感じてたんで、それで中華屋に未経験で転職したんですよ」

―先代から教わらずに?

「そうですね。親父とは全く違うことを身につけたかったんですよ。最初はラーメン一本で行くつもりはなくて、ラーメンにも力を入れている中華屋に就職して6年ぐらいいたのかな。その店舗が閉店することになった時、中華屋のスープって基本は動物のガラだけなんで魚介の勉強がしたくて築地市場で2年間、その後に味噌ラーメン専門店で働いて、最終的に親父が引退して店を継いだのが3年前です」

―いろいろなところを経験されてますが、このラーメンはどこが色濃く出てるんですかね。

「いや、どこでもないっすね。僕が影響を受けてるのは、学芸大学の『麺処 びぎ屋』さんなんで。食べ歩いてて、一番衝撃を受けた醤油ラーメンなんですよ。同じようなものを作ろうとは思ってないけど、煮干しだけ、鶏と水だけとかじゃなくて、ああいういろんな素材を使った重層型のラーメンが理想です」

―修業先は味につながるものはなくて、食べ歩いててこの味になったということですか。

「そうですね。ラーメン作りの基本は中華屋ですね。最初は鶏ガラスープの取り方も知らなかった時に、中華屋で基礎から教わったんで。あとは最後の味噌ラーメン専門店。実は入社してからセントラルキッチンだってわかって(笑)。味には繋がらなかったけど、上司によくしてもらって、試作を自由にさせてもらって、ほぼ毎日賄いを作って皆に食べてもらってました。中華屋で基礎を、築地で魚介の知識を学んで、食べ歩きで知識をためていって、味噌ラーメン専門店で独学の実践をさせてもらったっていう。今でも試行錯誤しながら作ってますが、どこもすごく恩があるんですよ。ありがたいですね」

「魚介しょうゆらぁめん」追加ワンタン。麺は全粒粉入り細麺、松屋製麺の平打ち

―独学の延長というか、オープンしてからも素材、味が変わってるんですね。

「動物系スープは、鶏ガラを以前よりグレードアップして、銘柄鶏の『つくば茜鶏』を使ってます。それで鶏清湯と、豚は白湯を作って、鶏清湯7で豚白湯3の割合でブレンドして。合わせると本当に粘度の全くない清湯スープになるんです。さらに魚介6動物4で合わせて、メインは魚介。メニューにも魚介しょうゆ、魚介しおと謳っているように、動物を下支えにして魚介が勝つようにしてます。塩は節系メインで、塩の魚介と醤油の魚介は同じです。味噌は動物だけで、味噌の動物は醤油と同じ。最近変わったのは、塩に醤油と同じ鶏油を入れるようになったことかな」

豚白湯・鶏清湯・魚介出汁を合わせると、透明な清湯スープに

―普通に清湯スープかと思ったら、白湯を合わせてるんですね。醤油は動物と魚介だけど、魚介のほうがすごく来る。魚介出汁だけの塩は、動物は鶏油だけなのに鶏を強く感じるし……不思議ですね。

「料理って面白いですよね。煮干しもオープンの頃とは変わって、その時とれるもの、物の善し悪しで変わったりしますけど、基本は片口鰯と平子煮干しとウルメ鰯の3種類。節は鰹の荒節と宗田鰹の枯節を使ってます」

―「こしがや」は本枯節、名古屋コーチンの鶏とガラ、あと焼き甘海老が入ってるんですよ。

「うちは海老は入ってないですね。塩ダレには牡蠣煮干しと浅蜊節、魚醬も使ってます。醤油ダレは本当にシンプルにほぼ醤油だけ。醤油3種類と名古屋の戸田みりん、日本酒が少し。それを手間暇かけて低温で12時間ぐらい煮詰めているだけです」

―違うなあ、どこがどうして似てるのか(笑)。

「でも、埼玉に引っ越した常連さんから同じことを言われたんですよ。『こしがや』の塩ラーメンを食べたら、うちとすごく似ててびっくりしたと連絡が来て」

―味が似てるっていう人が他にもいる! 修業先は支那そばや系じゃないし、独学だし、偶然、似た感じになったということですよね。

「旨味成分って大きく分けるとイノシン酸とグアニル酸、グルタミン酸じゃないですか。多分その組み合わせ、バランスが似てるんじゃないですかね。旨味成分の三類の使い方が」

―おお、いずれはラーメンの鬼ですね(笑)。

「いやいや恐れ多いです。今、第三次すごいブラッシュアップしたい症候群にかかってて(笑)。塩は完成してきたんで、醤油に力を入れてます。あとは限定をどうしようかなあと。たとえば、昨年の今頃出したのはすだちラーメン、つい最近だと北習志野の『麺処 ゆきち』さんとコラボした竹岡式ラーメン。NAKEDで『東京しゃもデトックスかけらぁめん』(3月提供)をやったり。NAKEDもそうですが、限定で多いのがサプリメント使い。クロロフィルをよく使いますね。緑色のラーメンです」

今年3月提供のNAKED「東京しゃもデトックスかけらぁめん」

―それは池袋の「麺屋 六感堂」的な。

「六感堂さんはユーグレナですよね。イメージ的には同じですが、六感堂さんの場合は栄養摂取。僕の場合はデトックスをテーマにしてるんで、クロロフィルなんですよ。六感堂といえば、今のチャコ店長の考え方が格好いいと思ってます。面識は全く無いんですけど、5年間一回も同じ限定を出したことがないっていうのを何かで読んで、自分もそうなりたいと。オープンからそろそろ3年ですが、同じ限定を一回も作ってないです。お客さんからまたやってほしいとか、定番にしてくれって言われることもありますけど、でも二度と作らないって(笑)。限定はレシピも残さないで、その時々気まぐれで作ってますし、自分も楽しみたいんですよ」

限定「冷やし煮干しらぁめん」。青森系しょっぱめ煮干しに香油付

限定用の煮干し味の冷和え玉。通常メニューに鰹節味もあり

―有機野菜とか食材にもこだわってますよね。

「僕のコンセプトが『なるべく体に悪くない』無化調ラーメンなんです。うちは出汁をしっかりとってるんで、通常よりは少ないと思いますが、ラーメンってどうしても塩分を摂りすぎてしまうから、塩分を排出しやすいように有機野菜を入れるようにしました。有機野菜は、たまたま前の会社で取引してた八百屋から農家を紹介してもらって、現地に行って食べさせてもらったんですね。これはすごい美味しいと思って、直接取引させてもらえるようになったんです。今、有機野菜を使ってるのは、トッピングの野菜とサラダの他に、担々麺に入っている筍、ピーナッツ、パクチー。特に謳ってないけど、ネギとコーン以外は有機です」

―食後に嬉しいデザート、アイスもありますね。

「いつも2種類作って、2〜3カ月ぐらいでどちらかが入れ替わります。アイスは、前の会社の時にフレンチ出身の人から教わったんですよ。今は無添加のアサイージュースと信州産の桃缶を使ったアイスです。ラーメンも無化調なんで、添加物も気にしてます。添加物が入っているのは、麺のかん水と麩の着色料、その2つだけですね。味噌も有機玄米味噌だし、醤油も1つは有機丸大豆です」

自家製デザート「信州産桃缶のアイスクリームとアサイーヨーグルトアイスクリーム」

「皆さんに多分怒られると思うんですけど、忙しくやるつもりはないんですよ。サラリーマン時代に散々忙しいところで働いてきたんで、ある程度の収入で自分のやりたいことをやる、それが独立した目的。今はまだまだ試行錯誤しながらラーメンのブラッシュアップ中ですが、将来的にはメニューを絞って中華料理も取り入れたいと思ってます」

4代目松屋食堂
千葉県船橋市本中山2-18-5
月~土11:00~15:00 17:30~22:30
日・祝11:00~15:30 18:00~21:00 水曜定休

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業・材料切れ終了・限定情報など、詳しくはお店の公式ツイッターをご確認ください。

大熊美智代 Michiyo Okuma

 ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。

本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna

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