今回のオスス麺は、7月6日に中神駅北口から5分ほどの所に移転オープンした「麺や 独歩」。
事故によって厨房に立てなくなってしまったお兄さんに代わり、弟さんが新店主となって再スタートしました!
「麺や 独歩」は、現店主・井原英樹さんのお兄さんである井原優樹さんが立ち上げたお店で、東中神駅を北上した大山商店街の一画でご両親が営んでいた「えん」という居酒屋の営業時間外であるお昼の時間を利用し、間借り営業という形で2010年11月17日にオープンしました。ご主人(優樹さん)は修業などもせず独学で始めたので、当時はご家族や周りの方からかなり心配されたようです。
屋号の「独歩」は、「独りでも歩いて行ける一人前の男になる」という思いを込めてご主人(優樹さん)が名付けられたとの事。
オープン当初の中華そばは、ベースの味わいやビジュアルは今と然程変わりないですが、まだまだ完成と呼べるものではありませんでした。しかし、それでも魅力を感じる味わいを持った中華そばに惚れ込み、また実直で研究熱心で体育会系な感じだけど優しく人情味のあるご主人(優樹さん)の人柄が好印象で、私自身足繁く通うお店となりました。
本当に研究熱心で行く度に何かしら変化があり、良くなる事もあれば悪くなる事もある、でも気持ちが伝わってくるもので食べに行くのが楽しみなお店でした。
現在は提供していませんが、出汁を注射器で半熟玉子に注入し一口で食べることをオススメする「ダシ入り味玉」や、現在も人気のサイドメニューとなっている「豚めし」にもチーズサルサ味などバリエーションが多く、また限定メニューも定期的に提供するなど面白い試みが沢山ありました。
2012年には「立川ラーメンスクエア」のラーメントライアウトにも出場。
優勝した益子さん親子をはじめ、白河ラーメンの名店「火風鼎」のご子息で那須塩原にある「手打 焔」店主の小白井さん、奈良の「ちかみちらーめん」の若井さんなど実力派のチャレンジャーが集まるハイレベルトライアウトだった為、優勝には届きませんでしたが、「良い経験が出来た」とおっしゃっていました。
2013年には、私の方に某テレビ局から「行列のできない激うまラーメン」の良いお店がないか問い合わせが来た際に「独歩」をオススメさせていただきました。
実は、この頃から少しずつ行列が出来始めていたのでNGになるかな? と不安でしたが、しっかり取材に行ってもらえたようで、放映されたのが凄く嬉しかった記憶があります。
隠れ家的な立地ながらも、確固たる人気を得て地元の昭島の方を中心に賑わいをみせていましたが、2014年4月1日に間借り営業を終了し、独立店舗として4月21日に「御苑 独歩」の名で新宿御苑前に移転オープンしました。
この御苑でもメディアで度々紹介されるなど、人気店の仲間入りを果たしました。
約2年半の新宿御苑での営業を経て、2017年2月7日、ご両親が営む昭島の「ジンギスカンDining えん」の営業時間外であるお昼の時間を利用し、間借り営業という形で「中華そば 独歩」が凱旋オープンしました。
実は、この時点で中神に新店舗を作る事が決まっているという話を伺っていて、それまでの繋ぎとしてこの昭島で間借り営業されるとの事でした。
同年11月2日には「Ramen House 麦と大豆」として、素材にこだわった清湯系ラーメンや和え玉などを提供する夜営業のみのセカンドブランドを立ち上げるなど、これから先の新しい「独歩」の可能性を感じさせてくれるものでした。
ところが、セカンドブランド立ち上げから半年ほどして、ご主人(優樹さん)の姿は厨房から忽然と消えてしまい、ご両親やスタッフがラーメンを作るように。
ご両親に伺っても「ちょっと体調を崩していて」との返答で、スタッフが育って任せているのかな? 程度にしか思わず、まさかご主人(優樹さん)が大変な事になっているとは知る由もありませんでした。
当時色々な噂は耳にしましたが、つい最近になり弟の英樹さんがInstagramで発表されて、初めて事の詳細を知りました。
2018年、ご主人(優樹さん)が事故により頭蓋骨骨折と硬膜下出血の重体となり、「助かる確率は1%」と告げられました。幸いにも一命は取り留めたものの、3年経った現在も入院してリハビリを続けているとの事。
優樹さんが倒れた後はご両親が代わりにお店を切り盛りされていましたが、年齢の問題などもあり、「家族を支えたい」との思いから弟の英樹さんが脱サラして新店主となり、優樹さんが戻るまで店を支えようと決意されました。
新店主である英樹さんは、2010年に「居酒屋 えん」で「独歩」が間借り営業を始めた当時は大学生で、「独歩」でアルバイトをしてご兄弟でお店を切り盛りされていました。
大学卒業後は「独歩」から離れ、一般企業で営業マンをされていましたが、これを機に脱サラされてラーメンの世界に飛び込みました。
以前からラーメンに関しての研究や試作は重ねていたようで、ラーメンWalkerキッチン「RAMEN CHALLENGE PROJECT」の「レシピ・アイデア部門」にも挑戦したり、脱サラ後は高田馬場にある「博多ラーメン でぶちゃん」にて修業するなどをして準備していたとの事。
今年3月下旬、昭島の「独歩」閉店の際にはお店を手伝われていて、お兄さんとは少しタイプは違うけれど気持ちの込もった接客を見て、私自身も応援したい気持ちになりました。
そして7月6日、約3ヵ月間の充電期間を経て、遂に中神の新店舗「麺や 独歩」がオープン!
オープンから5日間は、ワンコインでラーメンを提供するオープニングセールを開催。行列が絶えない日々が続き、その注目度の高さがうかがえました。
「麺や 独歩」のフラッグシップメニューは「魚介中華そば」!
煮干し・鰹厚削りをメインに鶏・豚などの動物系で支えながら、どんこ(干し椎茸)や昆布などを合わせ、グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果で旨味を引き出し、スッキリだけど魚介のパンチを感じるインパクトのある味に仕上げていて、昭島の製麺所「鈴めん」の熟成感のある中細縮れ麺と合わさり、老若男女問わず楽しめる味となっています。
「美味しくてお腹いっぱい」がテーマとなっていて、麺量は一般的なラーメンの2倍量の300g!
美味しくて食べやすいのでスルスル入っていきますが、普通の量でも十分な方には「小盛」も用意されていて、こちらは麺が半分量になる代わりに「味たま」か「海苔5枚」のトッピングサービスが受けられるのでオススメです。
ボリュームたっぷりなのは麺だけでなく「チャーシュー」も!
70gのビッグサイズで、ただ大きいだけではなくトロトロに柔らかく煮込まれた絶品チャーシュー!
食べやすく手割きされた「めんま」や、ゼリー状になった黄身の濃厚感を楽しめる「味たま」など、トッピングにも一切手抜きがありません。
新店主の英樹さんがお店を受け継ぐに当たっては、レシピなどは何も知らず調理も未経験だったので非常に苦労されたようですが、色々と研究されたようで以前と全く同じとは言わないまでも「独歩」のファンを納得させる味に仕上がっていて、「独歩が帰ってきた」とファンは喜んでいます。
「鶏塩そば」は、鶏の風味と旨味が強く感じられるスッキリさとコクを楽しめるスープで、どことなく懐かしさも感じるような味わい深い一杯!
「魚介中華そば」に次ぐ人気メニューで、濃い口のスープにプリッとした麺の弾力を楽しめる一杯!
鶏塩ベースにフライドオニオンの風味と甘味がアクセントなり、ライムを搾って清涼感も楽しめる一杯!
強い辛味がありながらも、魚介の味や風味はしっかり楽しめるクセになる一杯!
ラードと醤油ダレと魚粉の味を主体にしながら、濃厚な旨味を持つネギ油がアクセントとなって、病みつきになる一杯! 箸休めのスープが付くのも嬉しい♪
数量限定ではありますが、昭島時代の人気限定メニューであった「冷製 鴨つけ中華」なども始められていて、アクティブな姿勢が見られます。
オープン当初からある人気サイドメニュー「豚めし」は、ご飯の上にトロトロ柔らかなほぐしチャーシューとネギがのった逸品!
タレとニンニク、二つの味が用意されているので好みの方を選べます。
新店主の英樹さんに今後の展望を伺ってみると、「やはり兄とともにラーメン屋をやることです。その上で昭島発の店として地域と人に愛され、感謝を伝え続けられるような店でありたいです」と力強く答えてくれました。
私も、いつか兄弟お二人揃って厨房に立つ日が来ることを楽しみに待っています。
「独歩」は、兄弟や家族の絆によって受け継がれる、愛情溢れる美味しいラーメンが食べられるオススメのお店です!
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/doppo_ramen)をご確認ください。
ZATSU
2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。
本人ブログ(https://zatsu-ke.blog.jp/)
本人Twitter @zatsu_ke
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