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【フジテレビプロデューサー赤池洋文が紡ぐ!読むだけで美味しいラーメン「物語」】第30回

<特別編>躍進し続ける「家系」の名店・王道家(千葉・柏)の新たな挑戦とは?

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 私がラーメンを食べる上で「味」よりも大切にしているのが「物語」。「物語」は何にも勝る最高の調味料。お店がこれまで紡いできた「物語」と、私が勝手にお店と紡いでいる偏りまくった「物語」を紹介します。

 …なのですが、今回は特別編!

 以前コチラで「物語」を紡がせていただいた「王道家」。その「王道家」が自分の味を守りつつも、新たな試みに意欲的に取り組んでいるので、今回そちらを紹介させていただきます。もし私が以前書いた「王道家」のコラムを未読の方は、先にお読みいただいてから、是非お読みください。

  直系を外れながらも、誰よりも「家系」を愛し、躍進し続ける名店 王道家(千葉・柏)
  https://ascii.jp/elem/000/004/013/4013189/

 こちらにも書いた通り、店主の清水裕正さんは、家系ラーメンの総本家である「吉村家」で修業をして、直系である「王道家」を開店。その後紆余曲折を経て、直系からは外れることとなりましたが、今もなお「吉村家」の味とイムズをしっかりと受け継いでいます。

 

店主の清水裕正さん

 清水さんは家系の伝統をしっかり継承しつつも、その味をさらに美味しくするために、意欲的に新たな挑戦を試みています。そんな清水さんがここ最近、とても面白い2つのイベントを実施されたので、そちらを取材させていただきました!

 まずは1つめのイベント。

 9月28日。清水さんは1日限定で「ラーメンショップ」のラーメンを作って、お客さんに無料で振る舞うという「王道家版ラーショ無料試食会」を開催したのです。

 「ラーメンショップ」とは、関東を中心にフランチャイズ展開されているラーメン店。「ラーショ」の愛称で、ラーメン好きだけでなく、地元の常連客に支持されているお店が多く、真っ赤なベースに白抜きで「うまい ラーメンショップ」と書かれた特徴的な看板を見たことある人も少なくないのではないでしょうか。ラーメンの味はライトな豚骨醤油で、この味が家系ラーメンの原型だと言われています。

一度見たら忘れない!?「ラーメンショップ」の特徴的な看板

 かつて清水さんは、「吉村家」で修業して「吉村家のラーメンの作り方」は覚えたものの、それを自分のお店に置き換えた時にどうしたらいいのか、ということを全く考えないまま独立してしまうという苦い経験をしました。いざ自分のお店を出した時にどうしていいか分からない、という苦い経験しました。そこで猛省した清水さんは、独学で一からラーメン作りを研究しました。その中で清水さんは、家系ラーメンの作り方だけではなく、その原型とも言える「ラーメンショップ」のラーメンの作り方にも着目しました。

 「ラーショのラーメンの作り方が家系の作り方の基礎である」。清水さんはその考えの元、「ラーショ」の作り方を研究して、基礎から学び直すことで、自分のラーメンの味を作り上げたのです。

 では、なぜ今になって、その「ラーショ」のラーメンを作ろうと思ったのか? その答えは「弟子の教育のため」でした。

 現在「王道家」では、清水さんが完成させた作り方を、弟子たちが忠実に再現することでラーメンが提供されています。「王道家」を回していく上ではこれで全く問題ありませんが、これだと弟子たちが、かつての清水さんのように、「ただラーメンの作り方を覚えただけ」という事態に陥ってしまう危険性があります。

 そこで清水さんは、今回あえて「ラーショ」のラーメンを作ることで、その作り方を弟子たちにも教えて、ちゃんとした基礎を学ばせようと考えたのです。普段の「王道家」のラーメンは2本の寸胴を使って作りますが、「ラーショ」のラーメンは1本の寸胴で作ります。そのスープの炊き方や調整の仕方を清水さんは懇切丁寧に弟子たちに教えていました。

 また、従業員の教育という意味で、今回もう一つの狙いがありました。それは、「お客さんの好みを覚える」ということです。「王道家」では、「麺の固さ」「味の濃さ」「油の量」という味の好みをそれぞれのお客さんに聞いて、その味にカスタマイズされたものが提供されています。その好みを間違えないように、従業員は食券を受け取った際に食券にメモします。

 間違えのないようにという意味では、正しいオペレーションです。しかし、清水さんは自分がかつて「吉村家」で働いていた時は、一切メモをとらず、お客さんの好みを全て暗記していました。しかも、その時の一時的な記憶ではなく、そのお客さんの顔と好みをずっと覚えていて、次にそのお客さんが来た時には「固め、濃いめ、多めですよね?」と、好みを聞かずに自分から確認していたのです。

「そうやってお客さんの好みと顔を覚えることで、お客さんも喜んでくれて、自分のことを覚えてくださる。そして、お店のファンになってくださる。この積み重ねが昔はあったのだが、いつしかそれが失われてしまった」

 正確性や合理性を求めるあまり、失われつつある大切な文化。「このやり方を完全に復活させるのは難しいけれども、自分の店で働くのであれば、従業員にはせめてその経験をさせたい」。そう思った清水さんは、今回のイベントでは一切券売機を使わずに、従業員に全てお客さんの好みを暗記させました。そうすることで、普段のお店では生まれないお客さんとのコミュニケーションが生まれれば、と考えたのです。

 その上で清水さんは、このイベントを通じて、日頃のお客さんへの感謝とサービスをしたいと強く思いました。今回のイベントの最大の目玉は「無料で提供」。何とも太っ腹です。しかも、チャーシューや「ラーショ」の定番であるネギのトッピングまで無料。こちらの写真が、今回私が頂いたネギチャーシューメンですが、このボリュームで無料なんですから驚きです!

「ラーメン屋なんだから、やはりお客さんへの感謝の気持ちはラーメンでお返ししないと! しかも、今回は自分としても実験的に作るラーメンだし、従業員の教育も兼ねているワケだから。それにお付き合いいただくのにお金は取れないよ」

 見た目だけでなく、心まで男前な清水さんです!

 実際に頂いた「王道家版ラーショ」は、「ラーショ」と言うだけあって、濃度を上げずにサラリとしたスープ。当然普段の「王道家」よりかなりライトでしたが、コクと旨味はしっかりと出ていて、清水さんの丁寧な仕事ぶりを堪能できる一杯でした。「単純な『ラーショ』のコピーをしてもしょうがないからね」と、カエシはあえていつもの「王道家」のものを使っていたので、「ラーショ」の枠に収まらないオリジナリティー溢れる味に仕上がってました!

 麺もこのスープに合わせてわざわざ打つという手の込みよう。いつもより細めでしたが、コシも小麦の香りも強く、食べ応え満点。スープとの愛称も抜群でした。

 チャーシューもいつもと違ってスモークしていません。スープがそこまで強くないので、結果このスモークしてないことでベストマッチ。見るからに肉質の良さを感じる大判なモノで、無料でも一切妥協しない清水店主の心意気を感じました。

 そして特筆すべきはネギ。「ラーショ」のネギは、「クマノテ」と言われるオリジナルの調味料で味付けされており、この独特な味わいこそ「ラーショ」の真髄と言えるものです。清水さんは今回、この「クマノテ」も見事に再現。このネギがあれば延々に麺が啜れてしまう、まさに魔法のネギです。

 ちなみに、こちらのクマノテ風の味付けをされたネギは、通常の「王道家」でも食べられますので、興味のある方は是非お試しください!

 

通常メニューで食べられる「ネギ丼(白)」

 これだけのラーメンが無料提供ということで、当然開店前から長蛇の列。常連さんも多数訪れ、従業員もお客さんの好みを覚えるのに悪戦苦闘しつつも、楽しくコミュニケーションを取られているようでした。

 こうして、あっという間に予定杯数終了。「王道家版ラーショ無料試食会」は、大盛況のうちに幕を閉じました。

 なお、11月30日(月)に「ラーショ企画第二弾」として、グループ店である「横浜家系ラーメン宗八 柏本店」で、今度は「ラーショ」のネギ味噌チャーシューメンをやるそうです。さすがに今回は無料とはいきませんが、同じ柏の名店「こってりらーめん誉」とのコラボが決定。「柏で味噌と言えば誉」と、清水さんも絶大な信頼を寄せる「誉」が味噌を担当するということで、こちらも楽しみでなりません!

 つづいて2つめのイベント。

 10月28日。清水さんは、都内で家系テイストのラーメンを提供している「神田ラーメン わいず」とのコラボイベントを、直営店の「秋葉原ラーメン わいず」にて開催したのです。

「神田ラーメン わいず」直営店の「秋葉原ラーメン わいず」

 「わいず」は、「家系ラーメン」の看板を掲げてないものの、ジャンルとしては家系にカテゴライズされる濃厚な豚骨醤油ラーメンで人気を博す、神田と秋葉原にお店を構えるラーメン店です。その「わいず」と「王道家」がなぜコラボをすることになったのか? 実は「わいず」と「王道家」はおよそ10年前くらいから交流があったのです。そして今回、「わいず」の店主である渡邊泰隆さんが、ある目的を持って「王道家」に行ったことが、結果コラボに繋がったのです。

 

「わいず」店主の渡邊泰隆さん

「実は今、現在新店舗の出店を計画していて、そこで出す味を、今の『わいず』の味と家系直系の味のちょうど中間点と言えるようなモノにしたいと考えています。その流れで、直系の味を再確認したいと思い、『王道家』さんの仕込みの様子を見学させてもらえないでしょうかと、清水さんにお願いしたいのです」

 この渡邊さんからの申し出を清水さんは快諾し、さらに今回のコラボを提案。それを渡邊さんが受ける形で実現の運びとなったのです。

 清水さんは常々、「別にどこ出身だとか関係なく、同じ家系を作る仲間とは積極的に交流を持ちたい。求められれば技術提供しても構わない。それは結果、家系全体のためになるから」と考えています。そして、そのような交流を通じて「同じ価値観や信念を共有できる仲間を増やしたい」と願っているのです。まさに「チーム家系」という考えです。

 その延長で実現した今回のコラボ企画。「王道家」に「わいず」を呼ぶのではなく、「王道家」が秋葉原の「わいず」に出張する形でしたが、これには清水さんの狙いがありました。

 これまで清水さんの下からたくさんの弟子が独立を果たし、今や全国各地に「王道家グループ」の店舗が存在します。しかし、都内への出店だけはなかなか実現することができず、清水さんにとって悲願となってます。その都内出店がようやく来年実現しそうで、清水さんは実際に東京のお店に立ってみて、街の雰囲気やお客さんの流れなどを自分の肌で感じてみたかったのです。

 「わいず」にとっては、直系の味を再確認できる良い機会。

 「王道家」にとっては、都内進出への勉強ができる良い機会。

 そしてお客さんにとっては、「王道家」と「わいず」の貴重なコラボを楽しめる良い機会。

 まさに「三方よし」な素晴らしい展開となりました!

 こうして実現した特別企画「わいず×王道家」。今回、スープと麺は「王道家」のものを持ち込み、そこに乗せる上物の具材を「わいず」が用意する形となりました。

 「王道家」のスープと麺の旨さについては、今更語る必要もないと思います。特筆すべきは「わいず」のチャーシュー。およそ10年前、渡邊さんは「王道家」を訪れて焼豚の釜を覗かせてもらったそうです。その経験を経て、渡邊さんが独自に改良・発展させたチャーシューが、時を経て今回「王道家」の麺とスープと邂逅するという……。この貴重な「物語」の場に立ち会うことができて光栄でした!

 結局、今回のコラボに胸躍らせたラーメンファンたちが「わいず」に殺到し、この日は開店前から大行列。用意した100食はあっという間に完売しました。

「今回の準備で自分だけでなく従業員も『王道家』さんに連れて行って、色々と仕事を見せてもらいました。そして本日実際に店舗でご一緒させてもらって、本当に勉強になりました」。

 そう渡邊さんが語る一方、清水さんも、

「我々も他所の厨房借りてラーメンを作るのは初めての経験だったし、とても勉強になった。そして、改めて都心の昼間は人が多いね(笑) 都内進出に向けて刺激になりました。これからも依頼を受ければ、技術提供はどんどんしていくし、お祭りは大好きだから、こういうコラボ積極的にやっていきたいと思ってます。家系が盛り上がることはいくらでも挑戦していきたいので、宜しくお願いします!」

 今や「王道家」は連日行列の大人気店。しかしそこに安住することなく、さらなる進化と家系の向上を目指す清水さん。「王道家」という絶対的な基盤があるからこそ、無料のラーメン提供や、同業者とのコラボ、そして無償の技術提供なども可能だということが、今回改めてよく分かりました。

「チーム家系」の進化・発展のために、清水さんはこれからもパワフルに走り続けます。私は、そんな清水さんが次に何を仕掛けてくるのか楽しみにしつつ、これからも「王道家」のラーメンを食べ続けたいと思います!

 是非あなたにも「王道家」のラーメンを、あなたなりの「物語」を紡ぎながら食べて頂きたいです。

赤池洋文 Hirofumi Akaike (フジテレビ社員)

2001年フジテレビ入社。ドラマ「ラーメン大好き小泉さん」、ドキュメンタリー「NONFIX ドッキュ麺」「RAMEN-DO」などラーメンに特化した番組を多数企画。大学時代からの食べ歩き歴は20年を超え、現在も業務の合間を縫って都内中心に精力的に食べ歩く。ラーメン二郎をこよなく愛す。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @ekiaka

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