秋葉原駅と浅草橋駅の中間、清洲橋通り沿いの人気店「饗 くろ㐂」。和食を出す小料理店のような店構えの前に、時には30人を越える行列がある事も。ひるんでしまうかもしれないが、少しの時間があれば並んでみてほしい。店主を始めとしたスタッフの皆さんが事前に注文を確認し俊敏に動き、行列は想像以上に早く進む。そして、着席後少しすると配膳されるので、写真を撮りたい人は準備をお早めに。
店主の黒木直人(なおひと)さんは、料亭とイタリアンで10年修業を重ねたのち、大手外食企業で創作和食やイタリアンの店を立ち上げてきた経験の持ち主。2010年に「らーめん天神下 大喜」の「特製鶏そば」を食べて感動し、ラーメン店をやろうと思い立つ。2011年に塩味と味噌味の2種類を用意した「饗 くろ㐂」を開業し、様々な限定ラーメンを提供したり、曜日によって変わる味などで常に話題を集めてきた。
2018年6月にラーメンの味を全面リニューアル。「塩そば」と「醤油そば」の2種類が基本メニューになった。
「塩そば」のスープは、甲州地どり・丹波黒どり・京鴨・黒豚などを三段階で温度を変えて煮出す事で、旨みの世界を幅広く抽出したもの。そこに5種類の塩をブレンドしたタレを合わせている。自家製麺はコシを感じる「細麺」と、プリプリ食感が楽しめる「手揉み麺」から選択できる。麺を変える事で、啜る時のスープの印象も変化するので、その違いも楽しんでみてほしい。
具には鶏チャーシューと鶏団子、メンマと九条ネギが乗る。「特製」では味玉やワンタンも加わるが、いずれの具もスープにマッチした仕上がりになっている。
新登場した「醤油そば」は、塩そばとはスープが異なる。煮干し・昆布・鯖節などで採った出汁とアサリ出汁をブレンド。魚介系のみで構成されたスープに、富士幻豚の脂がうっすらとスープを覆っている。小豆島の薄口生醤油をタレに用いている他、「鶴醤」を丼に吹き付ける事で、レンゲでスープを掬う時と、丼から直接スープを飲む時で、全く違うニュアンスの味が楽しめる。自家製麺は、塩そば同様に「細麺」と「手揉み麺」から選択可能。
具も塩そばと異なるものを用意している。黒豚のバラ肉を使った煮豚と、富士幻豚の焼豚でチャーシューは2種類。スープで煮た大根にメンマと小松菜が乗り、焦がし玉ネギが食感の変化を上質に感じさせる。こちらも「特製」ではワンタンと味玉が加わる。
つけ麺は塩味で提供。綺麗に折り畳まれた自家製中細麺が力強く、つけ汁は地鶏が織りなすあっさりした旨みの中に油も感じるもの。麺とつけ汁だけでもグイグイ啜れる。具には鶏チャーシューなどが乗るが、ローストトマトを口にすると酸味と甘さが口に広がって、つけ汁にその味が加わって奥深く変化する。
ラーメン店で「メニューの先頭」や「食券機の左上」は、お店の一押しメニューであるケースが多い。「饗 くろ㐂」てその場所にあるのは塩そばでも醤油そばでもなく、なんと「焼売」。店主が好きな、中華屋さんの味をイメージしたものらしく、少し大きなサイズ。蒸したての温かさが、肉や脂を包んでいる。最初に提供されるので、ラーメンを待たずに食べてしまう。もちろんビールとの相性も抜群。
「饗 くろ㐂」ではサイドメニューのごはん物も豊富。麺だけでなくもう少し食べたい時に組み合わせてみてください。
『饗 くろ㐂』
東京都千代田区神田和泉町2-15 四連ビル3号館 1F
JR「秋葉原」駅・「浅草橋」駅から徒歩7分
03-3863-7117
山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)
2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @rawota
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