津軽発の煮⼲しラーメンの奥深さを堪能できる 長尾中華そば(東京・⼩川町)

2020年05月08日 18時00分更新

 例年なら⾥帰りや観光旅⾏に向かう人が多い、GWが終わりました。私もいつもなら、泊まりがけでラーメン遠征に行ける好機とばかりに各地のラーメンを味わっていたが、コロナ禍に覆われた2020年は外出すらままならず、行けなかった地への想いが募るばかり。そんな中、ご当地の味を伝える東京の店のありがたさが増している。

 北海道や九州には知名度ではかなわないものの、東北もご当地ラーメンの宝庫。青森県には「津軽ラーメン」と呼ばれるご当地の味がある。青森市周辺では澄んだ醤油味の「あっさり味」、弘前市周辺では動物系⽩濁スープを加えた「こってり味」が人気を集めている。どちらも煮干しや焼き干しを存分にきかせたスープが特徴で、中には魚介ダシ100%のスープを提供する店もある。

 津軽ラーメンは東京のラーメンにも⼤きな影響を与えた。創業時は豚骨ラーメンを提供していた「ラーメン凪」が、青森県内でラーメンを⾷べ歩いて煮干しラーメンに驚き「すごい煮干しラーメン」を看板メニューに。かつてから東京でも煮干しを使ったラーメンはあったが、「ニボニボ」とも呼ばれる濃厚な煮干しラーメンが都内で溢れるようになったのも、津軽ラーメンが確かな影響を与えている。

地下鉄「小川町駅」「新御茶ノ水駅」からすぐ

 店主の長尾大氏は都内の中華料理店などで修業を重ねた後、青森市で2004年に「長尾中華そば」を創業。津軽ラーメンが「あっさり」「こってり」でそれぞれのファンを集めている点に注⽬し、両⽅のメニューを提供する事で、幅広い層の支持を集めた。当初は東京出店を考えていなかったという店主だったが、煮干しラーメンが広まった東京のラーメン 界に「津軽ラーメン」本来のスタイルを知ってほしいと考え、2018年に神田小川町「長尾中華そば 東京神田店」を開店した。

「あっさり」(750円)

 津軽ラーメンの伝統的なスタイルである、澄んだ醤油味の煮干しラーメン。平子煮干しを中⼼にした滋味ある旨みを引き出すため、鶏ガラや豚骨といった動物系素材はスープに不使用。手打ちスタイルの太麺はかん水を使わず、小麦と煮干しの食感をシンプルに、かつ力強く楽しめる。

「こく煮干し」(880円)

 津軽ラーメンの新しいスタイルとも⾔われる、煮干し豚骨ラーメン。豚の各部位に鶏素材も加えた白濁豚骨スープに、煮干し出汁を加えている。煮干し出汁は「あっさり」で使うものとは別に採っていて、⽩口煮干しを中⼼にうるめイワシなどもブレンド。豚骨に負けない力強さが漂ってくる。チャーシューも、脂がより多い部位を使用している。

「ごぐにぼ」(900円)

 当初は裏メニューだったが、現在は券売機にも並ぶ「ごぐにぼ」、「こく」の2文字を濁らせた事からも分かるように、スープの濃度を高めて濁らせまくった「超濃厚」な一杯。煮干し粉も加わり、濃厚な上にインパクトを極限まで高めている。煮干しの旨みを出しつつも苦味などは抑えて、実は⾷べやすい。

「まぜにぼ」(900円)

 煮干しまぜそばで「まぜにぼ」。「ごぐにぼ」よりも濃厚な、煮干しと豚骨ベースのタレをかけている。モヤシやメンマの他にも、チャーシューやナルトが乗っているが、かき混ぜやすく、啜りやすくするために、麺と同じように細長く切り分けているのもポイント。煮干したっぷりのタレを一気にかき混ぜ、麺の下のタレもしっかりかき混ぜて、インパクト溢れる煮干し味を堪能してほしい。

 煮干しラーメンが多い東京だが、津軽ラーメンの味を再現した「あっさり」と「こく煮干し」は貴重な存在。更に煮干し味を突き詰めた「ごぐにぼ」に「まぜにぼ」でも煮干しのインパクトが強く感じられ、津軽ラーメンの味を、東京にいながら存分に楽しめる。

山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)

2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @rawota

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