キジ出汁スープと絶品の手打ち麺 立ち呑み居酒屋 金町製麺(東京・金町)【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】 第4回

2020年04月06日 07時00分更新

 私が初めて「金町製麺」に来たのは2012年4月12日。「中華そば(塩)」(当時650円)を食べた。平日の昼間、すでに立ち呑みではなくなっていて、椅子もあった。

 その後、ライターの仕事で携わったラーメン本でお付き合いのある、ラーメン評論家やラーメン好きな方々が集まる恒例のラーメンBBQにお呼ばれし、二次会の会場が「金町製麺」ということから通い詰め、今に至る。

バラエティー豊かな料理と麺、居心地のよい雰囲気。同業ラーメン店主も多く訪れる

 「金町製麺」は、2010年9月8日オープン。

 店長の長尾優介氏は、イタリアンから居酒屋、和食屋を経て、都立家政時代の「麺や七彩」で働き始め、金町製麺を任されることになる。

 「麺や七彩」といえば、無化調・自家製麺の喜多方ラーメンの名店。「金町製麺」もその流れを汲む。久しぶりに、製麺から見せていただいた。

──以前は、営業中にも製麺してましたよね。アルバイトの子たちも一緒に。

「そう、前は暇だったからね(笑)。今はいつ忙しくなるかわからないから、営業前に全部仕込んどく」

いつものように飄々と話しながら、手際よく製麺作業に取り掛かる

小麦粉とかん水を混ぜてもみ込み、さらに袋に入れて足踏み。最後に麺棒で生地を伸ばす

小分けにカットした生地をパスタマシーンで伸ばして麺帯にして、冷蔵庫で保存

注文ごとに麺帯を取り出し切る。一人前約130~140g(茹で前)、大盛230g

麺を揉んで茹でれば、モチモチの縮れ麺に

──「麺や七彩」が2015年7月7日の八丁堀移転を機に、“打ちたて麺”を提供するようになりましたね。その頃、「金町製麺」でも麺が変わったんでしたっけ?

「オープンから5年は七彩の麺、自社製麺を使ってたんだけど、八丁堀移転でここでも麺を打つようになったんですよ。七彩は、“こねない・練らない・寝かせない”だけど、うちは手でこねるだけでなく足でも踏む。僕のおばあちゃんがうどんを打っていて、その作り方と一緒なんだよね。七彩と同じなのは小麦粉。それとオリーブ油を使うことかな」

──へえ、手打ち麺は七彩に近いものを感じていたけど、打ち方は独学だったんだ。毎日、どのくらい打つんですか?

「1日の営業分は、だいたい2kg打つ。小麦粉2kgにかん水1Lちょっと、オリーブ油を少々。今の時期は加水率52%とかなり高めだね。麺メニューによっては手打ち麺の他に、細麺も使うし、平日はまあ余裕があるかな。でも最近、日曜の昼にすごく麺が出るようになって、この倍4kgくらい出るんだよ。テレビで紹介されたり、常連さんの口コミ情報を見た人が来てくれて……忙しいけどありがたいね」

──私もSNSに写真をアップすると「金町製麺に行きたい!」という人が多い。「金町製麺」のようなラーメン居酒屋って、他にはなかなかないから。

豊富な日本酒。「おかえりなさい」を背景に写真を撮り、「ただいま」とSNSに上げるのがお約束

「実は、ここが立ち呑み居酒屋で開店する前に、北千住の立ち呑みの店『徳多和良』に行って参考にしたんですよ。つまみは和食で、日本酒が充実して、立ち呑みで、キングオブ立ち呑み居酒屋じゃないですか。結局、東日本大震災の時に立ち呑みはやめちゃったけど。みんなが歩いて帰ってきて疲れてるのに、立って呑むのは辛いでしょ。椅子があるのに出さないとか、そこまで立ち呑みにこだわる必要があるのかと思って、椅子を出したんですよ」

──何事にも研究熱心ですよね。でも、立ち呑みじゃなくなっても、刺身・おつまみのクオリティは変わらずに。

「魚介類も、豊洲市場とかへ行ってその時季の良いものを仕入れてるし、日本酒も千葉の酒屋や他にも、食材は自分で足を運んで、いろいろと見て回って取り揃えてます。だいたい刺身とかおつまみ1品400円で普通は出せないからね」

おつまみは400円均一。仕入れによって毎日違うメニューが並ぶ

刺身盛り合わせ一人前690円~。魚は季節で変わる。右下・土日ランチにはお得なご飯物もあり

──さて、肝心のラーメン。私が食べてきたなかでもオリジナリティ溢れる創作麺がたくさんあったけど、この10年どのようなラーメンを作ってきたんですか?

麻婆豆腐納豆そば、トウモロコシ冷製麺、思い出深い納豆ラーメンの数々。右下・ポタージュ風トウモロコシ冷製麺も人気の一品

「最初の頃は、全国のご当地ラーメンシリーズとかもやってましたね。新潟三条カレーラーメン、信州濃厚味噌らーめん、マグロらーめん……とか。実際に現地まで食べにいって作ってたんですよ!」

──さらに長尾さんのオリジナリティを加えた、ご当地インスパイア麺! ラーメン好きな方々と飲み会をすると出てくる創作麺の発想の源はこれなんだ。本当に食べに行くところがすごいなあ。

「そうやっていろいろな食材を試しているうちにキジに出会って、今の基本の中華そばにたどり着いたんですよ。愛媛県鬼北産のキジガラでとった出汁がメインで、煮干しなどを合わせることもあります。醤油ダレは長野県のマルヰ生醤油・たまり醤油など。手打ち麺をくぐらせて、具をのせれば……これが今の基本のラーメンです」

「鬼北キジの中華そば」。キジの独特な旨味が後を引く。老若男女問わず愛される味

──キジ出汁のラーメンって珍しいですよね。

「そう、キジを使っているラーメン店って、あまり聞かないじゃない。誰もやってないものを作るほうが楽しいね。これからも、ラーメン居酒屋のスタイルは変わらないと思うけど、もともとラーメンを作りたくて、そのために七彩に入ったから。基本はラーメンだね」

──今年の9月9日は、10周年ですね。

「おう、10周年には立ち呑みを復活するよ!」

──原点回帰! 久しぶりに「椅子がない!」って、みんなびっくりしますね(笑)。

「まあ、特別なラーメンは出さないかもね。その時期になったら、その時ある食材で作るかな。いつもと同じようにね」

店主の長尾優介氏。何でもできる器用さと気さくな人柄に惹かれ、10年通う人も

立ち呑み居酒屋 金町製麺
東京都葛飾区金町6-2-1 ヴィナシス金町1F
TEL 03-5876-5736
12:00〜14:00(昼営業は土日のみ)
18:00~23:00
月曜定休・臨時休業はTwitter(@kanamachiseimen)で発信

大熊美智代 Michiyo Okuma

 ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。

本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna

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