第20回
常にどこかが新しく、変わり続ける気鋭の店「SORANOIRO」今の味を確認しよう! SORANOIRO(東京・平河町)
ラーメンの歴史を振り返った時、ターニングポイントとなるのが「1996年組」の出現。それまでにない概念でその後のラーメン界に影響を与えた3軒として「麺屋武蔵」「中華そば青葉」「くじら軒」の名が刻まれている。
ラーメン好きの間では、その再来と盛り上がった「2011年組」が知られている。2011年の開業以来、豊富な経験でラーメンの概念を問い直してきた人気店でもある。その「2011年組」として注目されたのは「饗 くろ㐂」「牛骨らぁ麺 マタドール」、そして今回紹介する「SORANOIRO」である。
東京メトロ半蔵門駅と麹町駅の中間で、2011年6月に「ソラノイロ」として創業。店主の宮崎千尋氏は15歳の頃からラーメンを食べ歩き、ラーメンの作り手の道へ。人気店、中でも「一風堂」では10年以上修業し、ラーメンダイニング「五行」の立ち上げにも携わった。
すっきりでシャープな味わいの「中華ソバ」と、ニンジンをスープに使った斬新な「ベジソバ」の二枚看板で鮮烈なデビューを飾ったが、驚いたのはそれから。2020年6月現在、都内に4店舗があるが、それぞれの味を各店舗で提供している。本店も過去に安住することなく味に磨きをかけている。そこまでなら珍しくないが、味やメニューだけでなく、2019年には店名を「SORANOIRO」に変え、ラーメンのラインアップも全面的に刷新した。
そのような経緯もあり、今提供されているメニューが今後も続くとは限らない。今の「SORANOIRO」で食べられるラーメンを紹介します。
SORANOIROで提供するラーメンは、宮崎店主が今作りたいラーメン。2011年の「中華ソバ」から大きく変化している。今の味は、豚骨鶏ガラのスープに貝の旨みも加わった醤油味に、振りかけられた背脂がアクセントになっている。多加水の太麺を啜れば、口の中に様々な旨みが一気に流れ込んでくる。
開業時に注目を集めた「ベジソバ」も、2019年のリニューアルで大きく変化した。ニンジンベースのスープに玉ねぎの味も加わって、見た目の色合いも明るくなり、すっきりした後口に程よい甘さもプラスされている。野菜の魅力を様々な形で楽しめる精神は、リニューアル前から一貫している。
2019年のリニューアルで登場した新メニュー。季節ごとに、トッピングされるハーブやフルーツを変え、「季節の味」を丼の中で表現している。ハーブの下には鶏チャーシューが入っていて、そこにのったピンクペッパーが味わいのアクセントになっている。麺を啜れば、ハーブの香りが丼から立ち上ってきて、最後の一口まで飽きが来ない。
こちらも2019年のリニューアルで登場した新メニュー。チャーシュー代わりにたっぷりのった鶏ムネ肉はしっとりした味付けで、ブロッコリー・味玉・プチトマト・モヤシも加わって賑やかな一杯。スープには鶏ガラや豚骨も使いつつ、大量のおからパウダーと豆乳をプラス。麺にはプロテインを練り込んで、「高タンパク低脂質」で満足感の高い一杯を実現している。
ソラノイロは、季節限定や期間限定メニューも次々と提供されている。写真は昨年提供されていた「彩り冷やし中華」。しっかり締めた平打ち中華麺に、甘酸っぱいタレと胡麻ダレの両方を使い、野菜や果物を使って涼しくも独特の食後感を楽しめる。今年も販売開始しているとの事だが、年ごとに具材を変化させているとの事なので、その点も楽しみ。
企業とのコラボ限定や季節恒例の味もあれば、レギュラーメニューの刷新も行われている。ビーガンメニューにも取り組み、現在は「ビーガン醤油」「ビーガン担々麺」の2種類を提供。コロナの影響を受けた事で、ネット通販「おうちでソラノイロ」にも更に力を入れている。ネット限定のラーメンを販売したり、ラーメンと肉や野菜などを交互に送る、年間契約の「定期便」を用意し、様々なスタイルで生産者と食べ手を繋げようとしている。
常にどこかが新しく、変わり続ける気鋭の店。10年目を迎えた2020年も、更なる変化に向けて動き始めている。
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。
山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)
2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @rawota
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