「麺に関しては誰にも負けない」麺に特化したラーメン店とは!? 桐麺 本店(大阪府・大阪市淀川区)(後編)【大阪の麺スタグラマーによる「ラーメンの時間ですよ」】第11回
はいはーい、前回の続きですよ♪
「スープはあくまで麺を引き立たせるための脇役」
そう言い切る『桐麺』桐谷店主のエピソードと麺への熱い想いを、前編ではお伝えしました。
後編では、麺が主役という桐谷店主のラーメンをご紹介。まずは材料へのこだわりから。
麺が主役と言うからには、もちろん小麦へのこだわりも当然。『桐麺』では北海道産の「はるゆたか」「キタノカオリ」「春よ恋」「ゆめちから」「はるきらり」「きたほなみ」、長野県産の「ユメセイキ」の7種類の麦種を使用。「スーパーはるゆたか」「ロイヤルストーン」などを店主独自の配合でブレンドして製麺しているそうで、配合や加水は常に変えているとのこと。つけ麺は「スーパーはるゆたか」がメインで、以前は2割ほどだった比率が今や5割に。
お次はスープを。鶏は銘柄鶏2種類、地鶏2種類を使用。特に「さつま知覧どり」は養鶏場を指定するほどのこだわりよう。魚介出汁は特に“いりこ”にこだわり、長崎県産「かえりいりこ」、鳥取県産「境港いりこ」、そして香川県伊吹島産の「伊吹いりこ」の3種類に加え、さんま節、昆布など計8種類を使用して作られているとのこと。ちなみにこれらの内容、麺の加水率まで全てメニュー表の裏に書いています。出し惜しみしない性格が気持ちいいですね♪
他にも、味噌や醤油はオープン時から兵庫県多可郡にある足立醸造さんのものを使用しているそう。足立醸造さんといえば、日本のラーメンシーンを牽引する名店がこぞって使っている醤油蔵。1年半ほど前、足立醸造さんの店舗リニューアル時には『らぁ麺 飯田商店』さん、『中華蕎麦 とみ田』さん、『Japanese Ramen Noodle Lab Q』さんという名店3店舗による夢のコラボが開催されたのは記憶に新しいところ。こんなコラボはもう無いかも、ということでもちろん私も行きましたが。
そんな足立醸造さんを使い始めたきっかけが「オープン前に楽天で10種類くらい適当に購入し、効き醤油的な感じで食べ比べてみたところ、足立醸造さんの醤油や味噌が自分のイメージするラーメンに合ったから」だそうでまた驚き。やっぱりいいものは違いがわかるものなんですね。しかし、その後の行動がさすが。実際に足立醸造さんの元を訪ね、蔵を見学させて頂き、足立さんの話を直接聴くことで、より足立さんの作る醤油や味噌をラーメンに使用したいとの気持ちが強くなったそう。このように生産者や生産農家を直接訪ね、生産工程や生産者の想いを聴くツアーを毎年行なっているとのこと。
ここまで書いてきてわかったこと。
こだわりは麺だけちゃいますやん!!!
スープは脇役と豪語するだけありもっと簡単に作ってるんかと思いきや、全然そんなことないこだわりっぷり。そりゃそうですよね(笑)。
一体いつになったらラーメン出てくるねん! とお叱りが聞こえてきそうなので、そろそろラーメンのご紹介を。
まずはおすすめの『桐麺しょうゆ』。
こちらは修業していた『ラーメン人生JET(JET本店)』譲りの鶏白湯スープ。さつま知覧どりのガラ、みつせ鶏のゲンコツなどを15時間炊いたスープは、朝4時に火入れをして完成するのはだいたい夜の7時という! それだけの手間暇をかけたスープは濃厚で、鶏の旨味を存分に味わえます。こってり好きにはたまらない一杯。
お次は『カレーつけめん』。
麺にこだわる桐麺さんならではの小麦の風味豊かな麺と、濃厚なカレーの旨さをともに堪能できる贅沢な一杯。辛さは3段階から選べるのも嬉しい。このカレーつけめんで桐麺さんのファンになった、そんな思い入れのある一杯。
この他にも定番メニューが豊富で、しかもどれもが美味しいのでお店に行くたびに何を頼むか悩むところなんですが、さらにおすすめしたいのがこちらの限定メニュー。
まずは『ひやきり』。
魚介&清湯スープに、極太平打ち麺のみのシンプルな構成。名前からもわかる通り、うどんのひやかけをイメージした冷やしラーメン。トッピングは無く、まさしく“麺を喰らう”ためのメニュー。冷水で締められた麺を啜ると、小麦の香りが口の中に広がっていき、麺本来の美味しさを再認識できること必至。魚介出汁の風味がまた格別です。途中で別添の鶏油を投入すれば、コクとまろやかさが追加されるという。すごいアイデアです。
もう一つも夏限定の『MAZEL』シリーズ。
こちらは『ひやきり』より潔い、麺のみ(笑)。実は底にタレがあり、麺と絡めて食べるまぜそばです。こちらもまた麺が主役というべき一杯ですが、とにかくこのインパクトに驚かされます。
『ひやきり』の麺は冷水で締めるのに対して、こちらは氷水で締めます。夏の暑い日にこの『MAZEL』を啜ると、麺の美味さとひんやりとした清涼感に火照った身体が一気にクールダウン。どちらも桐谷店主の麺へのこだわりや愛着が伝わってきますよね。
トッピングの無いシンプルな『ひやきり』や『MAZEL』を1000円にしている理由について、桐谷店主からは……
「挑戦なんです! ラーメン1杯1000円は高いと思われてるこの時代に、麺だけで1000円でどういう反応をされるのか? 高いと思われたり、麺だけやから途中で飽きたとか思われたら僕の負けなんです。これで満足! 納得! って思ってもらったら僕の勝ち!」
との言葉が。はい、少なくとも私は負けましたね。だって1000円払ってでも食べたいですもん(笑)。
ここからは将来への展望について触れておきます。桐谷店主が未来年表を作っていることは、前編でも書きました。
この未来年表には、出店計画やお弟子さんの人数などの目標が書かれているんですが、現在の38歳の欄には【二号店出店】との記載が。場所こそ京都ではないものの、既に出店済み。で、40歳の欄には【弟子10人とともに東京への三号店出店予定】、そして42歳の欄には【日本一になる TRYとる】との記載が。この大賞を取るために東京出店を目指しているのだそう。「もちろんラーメンWalkerグランプリも狙っているのでよろしく(笑)」と言われましたが、残念ながらわたくし、審査員ではありませんので(汗)。
年表に記載されているのは45歳までですが、その後の夢があるそうで。それは……
「自分が作ったラーメンを自分で食べて、美味すぎて後ろにひっくり返って気絶すること! これが最終的な自分の夢」
と言われびっくり(笑)。これまたすごい夢ですね!
「このためにあと30年は頑張る」との桐谷店主のラーメンドリーム、今後も目が離せません。
<店舗データ>
【店名】桐麺 本店
【住所】大阪府大阪市淀川区三津屋北3-1-15
【営業時間】11:00 ~16:00
【定休日】火曜日
【最寄り駅】阪急神戸線「神崎川」駅から徒歩約12分
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッターをご確認ください。
<ライタープロフィール>
だいち Daichi
大阪府在住。年間300食以上を食べ歩くラーメンインスタグラマー。普段はバイク移動をしており、美味しいラーメンを求めて気の向くままにラーメン店巡り。仕事柄出張が多いことから、Instagramには全国のラーメンをポストしている。
本人Instagram @ramentimes
Twitter @elground7s
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