ラーメンWalker発!「未来を輝かせるラーメンストーリーズ」第28話
濃厚、煮干し、つけ麺、それが流儀だ! ラム・牛・鴨×煮干し極濃ドロドロの限定つけ麺でも極める
ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。2022年9月28日~10月3日は、蒲田の超人気店『煮干しつけ麺 宮元』が初出店。「つけ麺の流儀~麺の美味さ、スープの深さを、お腹いっぱいに満喫!」をテーマに、ここでしか食べられない動物×煮干しで、いつにも増して濃厚を極めたつけ麺を数多く披露した。店主の宮元達宏さんは、名店『麺屋一燈』出身。つけ麺界の次世代を担う若手店主の“つけ麺の流儀”に迫る!
ラーメンフリークから名店修業。つけ麺にかける人生は挫折から救ってくれた師への恩返し
宮元の代名詞とも言える“つけ麺”。遡ること2000年代中盤に濃厚・極太麺のつけ麺ブームが巻き起こる。その頃、高校生だった宮元達宏さんも、ラーメン本片手に近隣の店を仲間と食べ歩いていた。高校卒業後は、就職して営業マンになった宮元さん。関東全域を営業しながら回る中で、ラーメンフリークとして食べ歩きに拍車がかかっていった。年間500杯も食べ歩くうち、この先の将来を考えるようになる。「大好きなラーメン屋をやろう。やるからには厳しいところで修業をしよう」と考えた宮元さんは、21歳で麺屋こうじグループの『大黒屋本舗 平井店』(閉店)に弟子入りする。
アルバイトから正社員になった頃、初代店長だった坂本幸彦さんが独立すると、宮元さんに声がかかった。「師匠の坂本さんに誘われて、『麺屋一燈』のオープニングスタッフに入ったんです」。しかし、2010年の開業からすでに長い行列ができる人気店。1日300杯以上を提供し、仕込みも尋常ではない量で寝る暇のない状態が続いた。あまりにも厳しい現場に、宮元さんは数ヶ月で店を辞めてしまった。
それでもラーメン屋の夢を捨てきれず、『ラーメン凪』で一からやり直す。「これじゃダメだと、もう一回ラーメン屋さんで修業したいと思ったんです。でも、坂本さんのところには戻れない。もし、戻るなら自分で店を出してからって決めてたんです」。
アルバイトで1年ほど経った頃、子供ができたことで再び思い悩む。「アルバイトでは家族を養えない。会社員に戻るしかないか…」。そんな折、坂本さんから「戻って来ないか」と再び声がかかる。
「本当にありがたかったんですが、ここで戻るのは中途半端すぎるし、失礼になると思って、すぐには返事ができなかったんです。でも、家に帰って妻に話したら、『辞めたあとも坂本さんに恩返しがしたいって言ってたでしょう。戻ったらいいじゃない』って言われたんです」。気持ちも新たに、坂本さんのもとへ戻った宮元さんは、麺屋一燈を大きくして恩返ししたいと誰よりも一生懸命働き、独立を果たした。
2015年4月にオープンした『煮干しつけ麺 宮元』は、『麺屋一燈』初の独立店ということもあって、瞬く間に行列のできる人気店となった。しかし、大勢のお客様に仕込みが間に合わない状況が続く。「材料がなくなったからといって夜営業は店閉めますとか、そういう頭がなかった。その頃は、絶対やんなきゃいけないと思ってたんで、1年間泊まりこみで営業してましたね」と、宮元さんは当時の辛い状況を語った。
1年過ぎた頃から安定して仕込みもできるようになり、その頃、今は独立した亀井さんなど一緒に働くスタッフも増えていった。
動物×煮干しで極濃ドロドロのつけ麺、ラム、牛、鴨など限定でも極める!
オープンから7年。大量の煮干しで作り上げる「極濃煮干しつけ麺」は、宮元の誇るべき代名詞となった。今回のテーマ「つけ麺の流儀」を掘り下げる前に、まずは宮元を代表するつけ麺から紹介しよう。
鶏や豚などのガラも、煮干も、どちらも大量に炊くことで濃厚を極めている。合わせる麺も、修業先である「心の味食品」の小麦粉を使って、毎朝打ちたての自家製麺。小麦の旨味が強くモッチリとした食感で、中太の麺だがドロドロのつけ汁も負けじと絡んでくる。
日替わりの限定つけ麺は、今回の目玉だ。第1弾は、「ラム煮干しつけ麺(9/28限定)」。
当日は、宮元で6年間修業して独立した『手打麺祭 かめ囲』店主・亀井康太さんも登場。師匠のスープに合わせて、打ちたての麺を提供した。「かめ囲が『ラーメンWalker東京2023』の表紙を飾らせていただいたんで、みんなに顔を覚えてもらう意味もあります」と宮元さん。
師匠と弟子、二人がどのように合わせていったのか気になるところだ。「今回に関してはぶっつけ本番。散々二人でやってるんで、言わなくてもお互いこういうのを作るってわかっちゃうんですね」と宮元さんが言うように、阿吽の呼吸でできあがったつけ麺は絶妙なバランス。北海道から仕入れたラムと脂で作るラムだけのスープと、煮干しだけのスープを合わせ、敢えてわかりやすい仕上がりにしたという。そこにかめ囲の極太縮れ麺がコラボした特別な限定となった。
ラムの後に「牛煮干しつけ麺(9/29限定)」「鴨煮干しつけ麺(9/30限定)」と続く、動物×煮干し3部作。最後の3日間提供されたのは、「極濃烏賊煮干しつけ麺昆布水Version(10/1~3限定)」。烏賊煮干しは、店でも年に1、2回提供する一番人気の限定だ。これほど種類豊富な限定を提供するわけは、「お客様に喜んでもらいたいから。近隣の方はもちろん、わざわざ遠くから足を運んでくれる店の常連さんのために、レギュラーメニューの他にも用意したかった」。宮元さんにとって、仕込みの苦労よりもお客様への思いのほうが強かった。
絶対ブレない、唯一無二の「濃厚・煮干し・つけ麺」。それがつけ麺の流儀!
近年、淡麗系のラーメン、つけ麺が流行し、濃厚つけ麺の店が少なくなってきていると宮元さんは危惧する。仕込みも大変な濃厚つけ麺をリニューアルしようか悩んだ時期もあったという。「濃厚のつけ麺をなくしたくないですよね。もう7年やってきて、人にも教えていかないといけない立ち位置にいると思ってます。濃厚煮干しのつけ麺屋さんで独立したいって弟子もいるんですよ。そういう人がいる限り僕が辞めるわけにいかない」。
セントラルキッチンを作らないことにも理由がある。「羽田空港の改装前に出店のお声がけいただいたんですよ。すごく嬉しかったんですがお断りしたんです。なぜなら僕がそこでやるならセントラルキッチンを作らないといけないから。すごく悩みましたけど、僕の方針とは合わない。店でスープを炊き、製麺して、すべて自分たちで作ったものを出したいんです」と宮元さんは熱く語る。
ラーメンWalkerキッチンでもその想いは同じ、いや、それ以上のものを出し切った。もうひとつのレギュラーメニュー「濃厚煮干しそば」もつけ麺と共用では作らず、煮干しの種類や分量も変えて、ゼロから新たに作り上げている。
そして、麺は4種類。レギュラーのつけ麺用の中太麺、ラム用の極太縮れかめ囲麺、濃厚煮干しそば用には小麦粉を変えた細麺、限定の煮干し中華そばにはオーション粉使用の熟成縮れ麺と、それぞれのスープに合わせたこだわりの自家製麵だ。
東所沢出店とは別に店舗営業のスタッフが毎朝、打ちたての自家製麺を届けてくれる。なぜ、これほどまで手間暇かけてくれるのか、宮元さんに伺うと、「そのスープにあった麺じゃないと全然美味しくないから。カエシも油も全部違います。普段から店でもバランスを考えて、同じようにやってるんで」と当たり前のように語る。
ブラッシュアップを重ねて、味はどんどん進化しているが、大元の軸は開店当初から変わらないという。その変えない軸とは、「濃厚、煮干し、つけ麺です。他では絶対味わえない、そこはブレずに作ってます」。それがつけ麺の流儀であり、宮元の流儀だ。
「坂本さんに出会って僕の人生変わったんです。うちはスタッフと言わないんですよ。家族だと思ってるから。僕に出会って人生変わってほしい。金銭的にも人より裕福な暮らしをしてほしい。それで10年後にみんなでフェラーリとか乗ってたらいいじゃんって(笑)」。宮元さんにとっては、みんなの夢を実現する手伝いをしてる感じだという。それは、多くの恩を受け、苦節を乗り越えて生まれた味を守り、伝え続けるためでもある。
煮干しつけ麺 宮元
東京都大田区西蒲田7-8-1
11:00~15:00/17:30~21:00
不定休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/tukemenmiyamoto)をご確認ください。
ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/
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