【フジテレビプロデューサー赤池洋文が紡ぐ!読むだけで美味しいラーメン「物語」】第3回製麺rabo(東京・西新宿五丁目)

2020年03月04日 12時00分更新

 私がラーメンを食べる上で「味」よりも大切にしている「物語」。「なんだその『物語』って?」をテーマに、歪みまくったラーメンへの偏愛を書き連ねます。

 今回私が紡いできた「物語」を紹介するお店は、都営大江戸線・西新宿五丁目駅のほど近くにある「製麺rabo」。『ラーメンWalkerグランプリ』のランキングにも名を連ねたり、某グルメサイトでも高得点を獲得したり、評価も高いのですが、少々寂しい立地のためか、隠れた名店的な位置付けのお店となっています。

 

都営大江戸線「西新宿五丁目」駅から徒歩約5分

 かく言う私も、その存在は知りながらも、なかなかお伺いする機会に恵まれず、初めて訪れたのはオープンから2年経ってからでした。しかし、ここで店主とのある意外な共通点が発覚したのでした・・・

 店主の小野里博さんは、2001年に「ラーメン創房 玄」の初台店をオープン。その後、「嗟哉(あなや)」としてリニューアルし、自家製麺や高級食材も積極的に取り入れ人気店に。そして、「嗟哉」をスタッフに譲り、しばらくの充電期間を経て、2014年に「製麺rabo」を開業、現在に至ります。

 そんな「製麺rabo」には、こちらの常連である知り合いに連れてきてもらいました。小野里店主は基本余計なことを喋らない、見た目もいかにも職人気質という感じでした。「ちょっと怖そうだな」というのが率直な感想。「混んでなければ、お酒やつまみで多少長居しても問題ない」とのことだったので、こちらにお邪魔したのですが、どうにも店主が歓迎しているようには見えませんでした。

店主の小野里博さん

 ならばさっさと帰ればいいのですが、つまみからラーメンまでもう全てが美味しかったので、すっかり長居してしまい、気づけばどうでもいい自分のラーメン食べ歩き歴をベラベラと知り合いに語り出してました。特に、私が大学時代によく通っていた「赤坂ラーメン」について熱弁を振るったのです。「赤坂ラーメンはね、今でこそそんなに取り上げられるようなお店ではないけど、20年前は凄かったんだからね!なめんなよ!」と、下戸のくせに語っているうちにテンション上がっちゃって、よく分からない因縁をつけて絡んでいた、ちょうどその時。

「20年前ですか?それなら多分、赤坂ラーメンで働いてましたよ、俺」

 えっ、今なんて言いました?てか、こんな会話を聞いていて下さってありがとうございます!いやいや、そうじゃなくて・・・・・・/えーっ!!!????

 それまで一切我々の会話を聞いている素振りなど微塵もなかった小野里店主からまさかの一言。当時の「赤坂ラーメン」は今とは違う場所にあり、立ち食いスタイルで店内はいつもほぼ満員。物凄い熱気と喧騒に包まれていました。私は味はもちろん、その雰囲気が好きで、大学から近いこともあり、かなりの頻度で訪問。ラーメン食べ歩きを始めたばかりの、私のラーメンの原風景とも言えるお店。あそこで、あの美味しい豚骨ラーメンを作っていた人が、今私の目の前にいる…。小野里店主の紡ぐ「物語」と、私の紡ぐ「物語」は、今から20年も前にお互い知らないところで、縮れ合って絡み合っていたのです!

 聞けば小野里店主は、家業の大工を継いだのだが、仕事がなくなってきたタイミングで、ラーメン屋さんになることを決意。当時『テレビチャンピオン』で優勝した「赤坂ラーメン」に入って修行を始めたとのこと。「赤坂ラーメン」の社長さんは屋台上がりの苦労人。とにかく「売れ!売れ!」と鼓舞されながら、ラーメン作りと商売の基礎を学んだのでした。ちょうど2000年前後の頃の話だそうです。

 「今、『製麺rabo』では淡麗と濃厚の2種類のラーメンを出してますが、濃厚ラーメンの基礎はやはり『赤坂ラーメン』で学んだことがすごく生きてますね」と語る小野里店主。
 

大人気の濃厚メニュー「らーめん(濃厚魚出汁)」

 私が「美味い、美味い」と食べていた濃厚ラーメンには、あの「赤坂ラーメン」のイズムが継承されていたのです。そりゃ美味いに決まってます!まさに運命の再会、いや運麺の再会!

 「製麺rabo」の特徴として、とにかくメニューが多彩です。

 

らーめん(濃厚魚出汁)
中華そば(あっさり鶏出汁)
支那そば(あっさり魚出汁)
塩ラーメン
つけ麺(濃厚魚出汁)
つけそば(あっさり魚出汁)
塩つけそば
辛い油そば
辛い担々麺

 恐ろしいことに、全メニューがとんでもなく美味しいのです!普通これだけあれば、いくつかハズレがあってもいいものですが、全部当たり。まさにラーメン界の「銀河系集団」。そう言っても過言ではない美味さを誇っているのです。どのラーメンも奇をてらったところは一切なく、オーソドックスな類いのものですが、一つ一つが際立って美味い。小野里店主に聞いても「普通にやっているだけですよ」と言うだけで、実際私も最初は「なぜ美味いのか」解読できませんでした。

 しかし、通ううちに分かりました。「スープももちろん美味いけど、麺が格段に美味いのだ」と!「製麺rabo」。その名の通り、それぞれのラーメンによって打ち分けられる自家製麺は、小麦の香りや喉ごしなど、それぞれに絶妙な特色を持ち合わせていて、スープを引き立てるどころか、ぐいぐい引っ張っていく、そんな美味さに溢れるものなのです。

 まさに、「製麺rabo」のラーメンたちは、「赤坂ラーメン」で濃厚ラーメンを学び、「ラーメン創房 玄」で淡麗ラーメンを学び、「嗟哉」で独学で自家製麺を習得し、そうやって1つ1つ実直に小野里店主が積み上げた「物語」の集大成と言えるでしょう。重みが違います。

 ちなみに、「赤坂ラーメン」は移転しつつも今なお健在。こちらも今でもたまに赤坂で仕事があった際などにフラッと寄ってます。

 是非あなたにも「製麺rabo」のラーメンを、あなたなりの「物語」を紡ぎながら食べて頂きたいです。

 

製麺raboオススメの看板メニュー「中華そば(あっさり鶏出汁)」

あまりの旨さに衝撃を受けた「塩つけそば」

常連客に大人気の「辛い油そば」

試作メニュー。小野里店主の気まぐれで味見をさせてもらえることも。この日は元々は鍋用に炊いたという鶏白湯スープを使った一品。何を作っても美味しいのが凄い

おつまみメニューも豊富。お酒を飲める人はぜひ

店主さんワンオペのため、食べ終わったらご協力を宜しくお願いします

赤池洋文 Hirofumi Akaike (フジテレビ社員)

2001年フジテレビ入社。ドラマ「ラーメン大好き小泉さん」、ドキュメンタリー「NONFIX ドッキュ麺」「RAMEN-DO」などラーメンに特化した番組を多数企画。大学時代からの食べ歩き歴は20年を超え、現在も業務の合間を縫って都内中心に精力的に食べ歩く。ラーメン二郎をこよなく愛す。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @ekiaka

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