スープにコクを出すために煮込んだ豚の背脂をチャッチャッと振りかける動作から名付けられ、1990年代に一世を風靡した『背脂チャッチャ系』。
今となっては“古いラーメン”と揶揄されることもありますが、実際に背脂チャッチャ系が好きだという人はたくさんいるはず!
時代の流れによって淘汰されるかのように背脂チャッチャ系のお店は減ってしまいましたが、『またおま系』と呼ばれる濃厚魚介豚骨に食傷気味と感じた人が改めて背脂チャッチャ系を食べると、「あれ? こんなにウマかったっけ?」「こってりなのに重すぎない」「とにかくウマい!」って思うことは少なくないと思うんです。
アパレル業界などでは『流行は周期的に巡る』と言われていますが、飽和状態であるラーメン業界もこれから先そういった流行の回帰みたいなのが起こるのではないかと私は勝手に思っています。
というか、それが私の願いであるのかもしれません。
なぜならば、豚骨ラーメンが私の食べ歩きの原点であるとしたら、背脂チャッチャ系は私がラーメンを大好きになった原点であり、今でも背脂が大好きで、『二郎系』が好きなのもそのボリューム感というよりも背脂の魅力が強いからなのです。
そこで今回は、1990年代のラーメンブーム火付け役であり、武蔵野・多摩地区とも縁が深い『背脂チャッチャ系』を紹介したいと思います!
【ホープ軒本舗】
『東京豚骨醤油ラーメン』のルーツとも言える「ホープ軒本舗」は、吉祥寺の老舗人気店。
乳化度が高くまったりとした味わいの豚骨に醤油をキリッと効かせたスープに、細縮れ麺が合わさった一杯。固形の背脂は意外にも少なめで、たっぷりの油の中に軽く見え隠れする程度ながらも『背脂チャッチャ系』の始祖的な味を楽しめる!
【村山ホープ軒 本店】
「ホープ軒本舗」創業者のお姉さんの旦那さんが始めたお店で、同じ系譜ではあるけれど独自の味を出しています。
豚骨の風味を強く出しながらも乳化させず、大量の背脂のコクと、太めで存在感のある風味豊かな麺が合わさったインパクトのある味わい!
【らーめん にんにくや】
東小金井に1号店を置き、一時期は武蔵野・多摩地区に数多く展開しましたが、現在は東小金井・小平・堀之内・中央林間(神奈川県大和市)のみで、店舗によって若干の味の違いを楽しめます。
細かな背脂がビッシリと浮かべられていて見た目は超こってりながら、背脂をどけてみると清湯系に近いような透明感のあるスープが顔を出すので、味わいは意外にもスッキリ。
卓上の生ニンニクをクラッシュすることによって味が完成すると言っても過言で無いほどで、あっさりスープに背脂のコクとニンニクのパンチが絶妙なマッチングを見せてくれる!
【中華麺 江川亭】
「ホープ軒本舗」で修業した店主が独立する際、元・読売巨人軍の江川卓氏の大ファンであったことから「江川亭」と名付けられました。
小金井に本店を置き、東村山・八王子・昭島・武蔵村山・調布・三鷹大沢・保谷・南多摩・新座(埼玉県新座市)に支店を構え、今も安定した人気を誇るお店。
軽く乳化して少しまったりした豚骨スープの旨味と気持ち強めな塩気を感じるニンニク香る醤油ダレに、細かな背脂がたっぷり浮かべられてこってり感とコクが合わさった、王道をいく背脂チャッチャ系!
【らーめん 立川や】
閉店してしまった系列店「東京とんこつラーメン@西立川」「らの字@東大和」らと共に西多摩地区の背脂チャッチャ系の代表格で、立川駅前で食べられるリーズナブルなお店として親しまれてきました。
2013年にすぐそばに移転した後は値上げしてお手頃価格からは離れてしまいましたが、今もなお多くのお客さんに愛されているお店。
ライトながらもまったりとした濃厚な旨味を感じる特徴的なスープに、コロコロとした背脂ミンチが加わったこってりな味わい。さらに特徴的な平打ち麺が合わさることで他とは一味違ったタイプの背脂豚骨醤油ラーメンとなっていて面白い!
【東京豚骨拉麺 ばんから 立川北口店】
池袋発の人気チェーン店の支店として、立川を代表する人気店のひとつだった「東京豚骨拉麺 ばんから」。立川駅前再開発による移転オープン後は以前ほどの勢いは無いものの、今もなお根強いファンが多いお店!
スープは、まったりとクリーミーで旨味たっぷりな濃厚感と甘めで濃い口な醤油ダレとが融合。表面に敷き詰められた細かな背脂がこってり感とコクを与えてくれる、濃厚タイプの背脂チャッチャ系!
【らーめん まる重】
池袋の「ばんから」で修業した方が独立開業されたお店で、同じ背脂チャッチャ系でありながらオリジナリティを強く出し、「ばんから」とは全くの別物のラーメンを提供しています。
ドッシリと濃厚な豚骨スープに背脂が大量に振りかけられ、強い旨味としょっぱく感じるくらい強いダレの味と甘味、そしてガツンとくるニンニクのパンチでジャンクの極みとも思えるような中毒性を持ったインパクトのある味を楽しめる!
【野方ホープ 吉祥寺店】
ラーメン街道として有名な環七通りを代表する一店で、「新横浜ラーメン博物館」の第一期として出店もしていた人気店の支店。
チャッチャと振り掛けられた細かな背脂がたっぷり浮かべられ、こってり感と旨味を強く感じさせてくれて濃厚ながらも重すぎない豚骨醤油スープとマッチ!
新味の「濃(こく)」では、背脂だけでなく黒マー油と辛味噌が加わったことで、背脂チャッチャ系の進化形の味を楽しめる!
【らーめん専門店 ぶぶか 吉祥寺北口店】
カップ麺としても販売され、武蔵野・多摩地区のみならず「油そば」のお店として広く認知されている「ぶぶか」。
実はラーメン専門店として創業し、現在も油そばだけでは無く背脂チャッチャ系のラーメンも食べられる!
少しクリーミーさがあってコクと旨味たっぷりな臭みの無い豚骨スープに醤油ダレを強めに効かせ、背脂のコクとこってり感が加味された一杯!
【ラーメン専門店 和 久米川店】
東村山市の久米川駅近くにある、地元の方を中心に愛されるお店。武蔵野・多摩地区において深夜に背脂チャッチャ系を食べられる貴重なお店として重宝されています。
スープはかなり乳化度が高いクリーミーさのある豚骨で旨味が強く、それを背脂のこってり感とまろみがまとめあげ、モッチモチな中細麺がベストマッチ。ライトながらもジャンクさのある味わいを楽しめる!
【東京とんこつら~めん 龍 小平店】
東伏見と小平にある人気店。
小平店は店長退職で一時期休業していましたが、今年の1月20日より新店長によって復活オープン!
軽く乳化した豚骨をベースに、甘味と旨味が主張した醤油味の背脂ミンチとラードが浮かべられたこってりとしたスープ。そこに硬めに茹でられた低加水の太縮れ麺が合わさったパンチのある一杯!
【麺工房 大番】
創業40年という老舗で、地元の方に愛されている人気店。
透明感を残しスッキリした旨味たっぷりな豚骨スープに、ニンニクの風味と背脂のコクが合わさった背脂チャッチャ系のお手本のようなバランスで、食べ飽きない味わいのリーズナブルな一杯!
【麺処 しんすけ】
昨年オープンしたばかりの新店で、淡麗系の「淡麗中華そば」「魚介中華そば」「八王子ラーメン」を提供していますが、追加トッピングによって背脂チャッチャ系を楽しむことが出来ます。
現在は深刻な鶏油不足により数量限定販売となっている「淡麗中華そば」ですが、ここに別売りトッピングの「背脂」と無料トッピングの「ニンニク」を合わせてもらうことによって、ハイクオリティな『現代版背脂チャッチャ系』とも言える一杯を楽しめます!
時代は『令和』。
“昔ながらの中華そば”として愛されるのが『昭和』のあっさり醤油ラーメンならば、“昔ながらのラーメン”とも言える『平成』の背脂チャッチャ系東京とんこつラーメンも愛され続けて欲しいラーメンだと思います。
“古臭いラーメン”としてではなく“古き良きラーメン”として改めて食べると、久しぶりに食べる方は懐かしく、初めて食べる方には意外と新鮮に感じるかもしれません。
背脂チャッチャ系と一口に言ってもお店によって全く違う味が提供されていて、サラッと食べられるものもあれば中には衝撃を受けるものもあるかもしれません。
背脂チャッチャ系は奥が深く面白いジャンルなので、「今更」ではなく「今だからこそ」食べてみて貰いたいオススメのラーメンです!
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくは各店舗にご確認ください。
ZATSU
2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。
本人ブログ(https://zatsu-ke.blog.jp/)
本人Twitter @zatsu_ke
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