ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。2022年9月14日~9月19日は、柏の大行列店『王道家』が昨年に続き2度目の出店。テーマは、~「千葉は最高だ!」~食材の宝庫「千葉」を味わうラーメン。千葉の食材を使って、家系×煮干ラーメンという王道家初の最高の調和を生み出した。家系の伝統を守りつつ新たなチャレンジをし続ける、店主・清水裕正さんに出店の全容を伺った。
家系ラーメンに心血注いで紆余曲折。たどり着いた唯一無二の味
清水裕正さんのラーメン人生は、高校生の時、ラーメンショップで食べたラーメンに衝撃を受けたことから始まった。ラーメンを食べ歩き、いつしかラーメン屋になろうと決意し、門戸を叩いたのが家系の総本山『吉村家』。しかし、すぐには雇ってもらえず、1年ほど断られ続け、やっとのことで弟子入りが認められたのが28歳の時だった。一日も早く独立したかった清水さんは、わずか半年ですべての仕事を覚えて修業期間を終えた。
そして2003年1月、入門から1年で柏に『王道家』を開業する。吉村家直系の看板を掲げて開店したものの、思ったほど客足が伸びず、自身のラーメン作りも行き詰まる。そんな逆境にもめげず、3年かけて一から修業をやり直し、現在の味を作り上げていった。
苦心の末に作り上げたラーメンは評判を呼んだ。行列の絶えない超人気店になり、いつしか家系四天王とまで呼ばれるようになった。人気とともに「弟子を育てたい」「自家製麺に挑戦したい」と、清水さんがどうしてもやりたいことが湧いてきた。しかし、直系のままでは限界があった。
2011年、清水さんは吉村家直系から離れる決意をする。そして今日まで、家系の伝統を守りながら自由な発想で『王道家』を発展させてきた。
千葉の食材を主役に作り上げた、革新的な家系×煮干ラーメン!
挑戦し続ける清水さんが、今回のテーマでまず考えたのは、生まれ育った千葉の食材。千葉は工業も商業も全国トップクラスだが、山の幸、海の幸も豊富で農林水産業が盛んな県だ。「もっともっと千葉の食材を使って、いいものを作れると思ったんだよね」。そこで、豚など動物系メインの家系ラーメンのスープに、普段は使わない煮干を合わせてみたという清水さん。その中に家系らしさ、『王道家』らしさも出しながら作り上げたのが、家系×煮干ラーメンだ。
千葉の片口イワシをメインに数種の煮干をブレンドしたスープに、大量のガラを炊き熟成させた王道家自慢の豚骨スープを合わせた味は、「千葉の食材を使ったからこそ、ここまで美味しいのか!っていうラーメンができたんだね」と清水さん。王道家名物の燻煙チャーシューには、千葉県の柏幻霜ポークを使用した。「普段使ってないものだから、どうなるかわからない状態で作ったら、すごい美味しい! 柏幻霜ポークがこんなに美味しいと思わなかったよ。改めて千葉の食材のよさを再認識したね」。
そして、いつものモチモチの自家製太麺を、煮干スープに合わせて低加水細麺に変えてきた。「うちの麺でも何回もテストしたんだけど、俺の判断としては合わない。今回のスープは濃厚だけど、少しだけさっぱり目に作ってるから、敢えてパツパツの麺でやってみようかなと」。今までの麺とはまったく変えて、今回の煮干ラーメンのために製麺所に依頼して新しく開発したのがこの麺だ。
美味しいものを自分なりに作りたい。その思いから生まれた“俺の味”
もう一つ提供された、濃厚油煮干ラーメンでは、さらに千葉の煮干をふんだんに取り入れている。「もっと煮干感を出したいから、千葉の煮干を使った煮干油を作ってかけて、煮干の粉もふってる。煮干粉は、俺が配合したやつだから美味しいよ! もともと商品としてあったものだけど、それを敢えて千葉の煮干しを使って、また新しい煮干粉を作ったの」
卓上には、店でもお馴染みの刻み生姜。店舗には無限ニンニクなど豊富な調味料が控えているが、そのなかで刻み生姜を敢えてのチョイス。「選択肢を増やさないで、これだけ食べてくれって形で選んだんだ」と、清水さん。煮干ラーメンに最適かつ食べる人に寄り添って、細かなところまで考えられていた。
「九州とんこつラーメンには紅ショウガというように、家系ラーメンは生姜がセットになってると思うんですよね。それに家系ラーメンだけでなく、いろんなラーメンに結構合うんですよ。関東で、この生姜が流行ってくれればなって、密かな期待も込めてます」
さりげなく置かれている、刻み生姜。しかし、開発に15年くらいかかっているという。「1から10まで自分で作ったから。これ、普段あまり言ってないけど、あの味付けにはものすごいこだわったよね」と、清水さん。
本当の意味での独立から、麺も刻み生姜も、自分なりに作ってみたいという思いから、ラーメンのすべてを自ら作り続けてきた。いま、清水さんの原点でもあるラーショの立ち上げでも、その思いは同じだ。ラーメンショップには、クマノテと呼ばれる独自の調味料がある。
「学生の頃、最初に食べた時からこの年になるまで、どういう味付けなのかなと、ずーっと考えてた。美味しいなって思った時から、自分なりに作ってみたいと思って。いまは、同じ味に近づくんじゃなく、俺の味でいいと思ってる」
清水さんのラーメン作りにかける熱量のすごさにも圧倒されるが、キッチンではお客様へ声をかける姿が印象的だった。「接客で一番大事なのは、いらっしゃいませ、ありがとうございました、大きい声で言ったとか云々じゃない、感情のやり取りだと思うから。最終的にはひと対ひと、そのツールだからね、ラーメンは」。店にも立つが、表に出てさまざまなことに挑戦する清水さん。店に清水さんが不在でも、ラーメンの中にその思いが詰まっている。
「勝利って、みんな勝つことだけを言うんだけど、勝ったことを利として初めて勝利なんだよ。それで何か役立てることができて、本当の勝利」
千葉のため、どういう味になるかわからない状態で始まった、今回の挑戦。「改めて千葉のすばらしさを知ることができた」と、出店を終えて笑顔の清水店主。また次の挑戦で、みんなをアッと驚かせてくれるだろう。
豚骨醤油ラーメン 王道家 柏店
千葉県柏市明原1-7-26
火~土11時~15時/15時30分~25時
日11時~15時/15時30分~24時
月曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/oudouyakashiwa)をご確認ください。
ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/
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