森下駅からほど近い住宅街にある『手打ち 蓮』は、2022年12月1日のオープン以来、常に行列の絶えない人気店だ。店主の林 宏樹さんは、鉄板焼き屋、蕎麦屋、ラーメン店を経て独立。「自分の力を試してみたい」、そんな思いで作り上げるのは、同業者も驚くほどの手間隙かけた、こだわりのラーメンだ。

鉄板焼き屋、蕎麦屋から転身、ラーメンで自分の力を試したい!

多くの人に愛されるラーメンを作り続ける林 宏樹さんだが、もともとはラーメンとは無縁のところにいた。ある時、妹夫婦と一緒に鉄板焼き屋を共同経営することになったのが、飲食業に携わるきっかけだ。数年後、店に蕎麦職人が入ったことで、2号店を蕎麦屋として立ち上げることに。林さんも店長として店を任され蕎麦打ちに励むうちに、次のステップへ進むことを考えた。会社を辞め、ラーメン店で働くこと数年、「自分の力を試してみたい」と独立を目指す。

仕事を辞めてから数か月、物件探しと試作を重ね、2022年12月1日に『手打ち 蓮』をオープンした。駅から少し離れて立地が良くないと思えるが、人の流れや碁盤の目の道を見て決めたそう。「JR両国駅・都営新宿線森下駅・都営大江戸線森下駅と全部徒歩10分圏内で、100m以内にコンビニがある、それが決めたポイントです」と林さん。

店に入ると、入口の正面には製麺室、左手にカウンター7席、奥に厨房が見える。今でこそ行列ができるほど人気のラーメンだが、最初は散々だったという。「フォロワー様、常連様、皆様の意見を取り入れて、試行錯誤して作られたのが今のラーメンです」と謙虚な言葉に、お客様やラーメンそのものへの真摯な気持ちを感じる。

手打ち手切り手揉み! 3種の小麦をブレンドした風味豊かな多加水麺

店名に掲げた“手打ち麺”も、試行錯誤を重ねている。「最初は手揉みじゃなく、麺切りもスライド式カッターを使ってたんです。手打ち感をより出すために、手切りにして手揉みを加えました。小麦粉も、最初はもち姫と和華のブレンドでしたが、1周年で秋葉原の『ほたて日和』の及川さんとコラボした時に、昆布水のつけ麺用に薦めてもらった氷瀑を使ったら麺がいい感じになって。今は、3種類の国産小麦をブレンドしています」。

初コラボの『ほたて日和』の及川店主の他に、『えーちゃん食堂』佐藤店主、『むかん』小松崎店主、『桜上水 船越』船越店主と懇意にしているそう。「皆さん、仲良くさせてもらって、刺激を受けます」。ラーメン界に新風を巻き起こす人気店から、ラーメン作りの影響を受け、林さんのこだわりはさらに深まる。そのこだわりは、店内の黒板に書かれてあるので、ラーメンを待つ間に見てほしい。

氷瀑を加えたことで、どんな麺になったのか伺うと、「もち姫と和華だけだとちょっと甘いんですけど、氷瀑って超強力粉で、入れると味に深みが出るんです。僕の個人的な印象では、氷瀑をブレンドしたほうが大人の味かな」とのこと。ますます気になる麺のこだわりを製麺から見せていただいた。

切ったままの麺から手揉みに変更したことで作業工程が増える。体の重さをかけてしっかり揉み込むと手間はかかるが、そのほうが美味しくなるからと手間を惜しまない林店主。最後のひと手間をかけた麺は、岩手県産のもち姫、北海道産の和華・氷瀑をブレンドして加水率45%以上。高加水のモチモチ食感が楽しめそうだ。

鶏・昆布・どんこ出汁に7種の半生がえし醤油が効いた豊潤スープ

この麺に合わせて仕上げたスープは、鶏と利尻・羅臼昆布、そしてラーメンでは珍しい干し椎茸の一種“冬菇(どんこ)”を使っている。「もともとは鶏清湯で行くつもりだったんですが、たまたま冬菇のラーメンで有名な『中華そば 竹千代』さんで食べて、美味しいなと思ったんです」。オープン前の試作段階で冬菇を入れ、さらに鰹節も入れることに。「鰹節は入れると味が締まるんですよ」と、元蕎麦屋としての経験を活かした出汁ができた。麺にも出汁にもこだわった一杯がこちら。

「醤油ら~麺」のカエシに使っている醤油は7種類で、3種類は火入れしたクセのある醤油、4種類は生醤油。半分火入れした醤油を合わせることで、「半生がえし」となる。

手打ち麺を引き上げるとスープ色に染まって、見た目から美味しそう。ズズッと啜ると麺の縮れにスープが絡み、口の中で麺も旨味も跳ね上がる!

同業者も絶賛!5種の塩カエシと熟成鶏油で琥珀色の「しおら~麺」

塩ラーメン好きなら、リピート必須のこちら。「一般のお客様には醤油のほうが人気ですが、同業者やラーメンをよく食べなれている方は塩が美味しいって言われますね」。コアなファンが多い「しおら~麺」もまた、カエシに岩塩など5種類の塩を使っている。「塩のカエシには、北海道産の帆立の貝柱が入っています。国産のほうが値段も張りますが、出汁の出方が違うんです」。

醤油・塩と共通の鶏油は、塩のほうがスープの色に反映してわかりやすい。「鶏油はコクを出すために熟成させています。冷凍保存したものを、提供までの時間を逆算してギリギリまで冷蔵庫で自然解凍します」。熟成鶏油浮かぶスープは、飲み始めから飲み終わりまで時間の経過で変化する味わいが楽しめる。

ぜひ追加してほしいのが、海老ワンタン。これが入ると、さらにスープの味が変わる。そのまま食べても美味しいが、たまたま餡がほぐれ落ち、カエシの貝柱と一緒に飲み干したところ得も言われぬ味わいに。「ワンタンにラー油が入ってるので、中華スープみたいな感じになりますね」と、林さんが美味しさの秘密を教えてくれた。

チャーシューにも、さらなるこだわりがある。「チャーシューのタレは醤油や料理酒、鰹節など8種類を使っています。通常は醤油だけで煮るので、同業者に言ったら驚かれました(笑)。ただ、これやるのとやらないのとで全然違うんですよ」。

また、チャーシューはスープを作るときに豚を入れて煮るところが多い。スープにも豚の味を出すからだ。しかし、林さんは「営業終わりに残ったスープで仕込むんです。逆にスープでチャーシューに味をつけるわけですね。火を止めて余熱で味を入れるんですけど、計6~8時間かかります。最後に炙るので、チャーシューは3工程、普通の煮豚より手間がかかっています」。手間隙かけるこだわりは、ラーメンの隅々まで行き渡る。そして、今に満足することなく、「微調整、微調整で、ブラッシュアップできれば」と、常に上を目指し続ける。

店に一歩入ると、林店主のお母様とスタッフの小野寺くんの行き届いた接客に穏やかな気持ちになる。「一番大事なのは、ホスピタリティです。鉄板焼き屋時代のシェフに「飲食店は料理を売るのが仕事じゃない。手間を売る仕事だ」って聞いて、それがずっと頭に残ってます。本当に、手間しか売ってないので、手間を評価していただけたら嬉しいです」。今後の目標は、「小野寺くんを独立させることですね。ここで間借りしながら勉強して独立してほしい。そうしてラーメン業界に足跡を残したい」。こだわりの食材で原価ギリギリ、定休日も仕込みにあてるほどの愚直さ。そこから作り上げるラーメンは、美味しいだけではおさまらない奥深い味わい。ぜひとも林店主の想いごと受け継いで、次の世代に残してほしいラーメンだ。

手打ち蓮

東京都墨田区千歳3-16-2

火・水・日・祝日11:30~15:00

木・土11:30~15:00、18:00~20:00

月・金曜休

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式X(https://x.com/AKI60400302)をご確認ください。

大熊美智代 Michiyo Okuma

ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。
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